燕メモ①

7月下旬に1泊2日で燕岳ツアー行ってきたので、忘れないうちにメモ。

新宿から特急あずさに乗って、3時間ちょっとで穂高駅に到着。

穂高からマイクロバスで、2日目下山後に使う手荷物を有明荘に預け、12時前に中房温泉登山口に到着。

登山口には曇りときどき雨の天気のなか、登山者が多い。

お手洗いを済ませ、準備体操のストレッチをして、12時に登山開始です。

行き会う下山者には口々に「これから登るの?」と聞かれます。

そうだよね、コースタイム4時間10分で、団体だから遅れがちになるだろうし、休憩入れるからさらに時間がかかるはず。でも当日朝7時ごろ新宿集合1泊2日のツアーだとこうなってしまうのです。

登山道はいきなり急登で、ひたすら登って、登って、登って。

事前に聞いた燕岳登山経験者の話では「途中、第一ベンチ、第二ベンチなどの休憩ポイントがあるから、思ったほど大変じゃないよ。」とのことでしたが、キツイよ。

蒸し暑いし、途中で雨が強くなってきたのでカッパを着こんだせいで、さらに蒸します。

ザックに入れてるリザーバーは背中の熱で生ぬるく温まってしまい、美味しく感じない・・・。

合戦小屋のスイカを目指し、ひたすら登って、合戦小屋に到着しました。

待望のスイカは1/8サイズ(1/6サイズかもしれない・・・)で800円。

スタッフさんに頼んでスイカをカットしてもらい仲間同士でシェアしている人達を尻目に、一人で1/8サイズのスイカにかぶりつく。

冷たくて甘い!塩も置いてあります。

お手拭きも貰えるので口周りや手が汚れても大丈夫!

15分の休憩の間にスイカを食べて、お手洗いも済ませなくてはならないので大急ぎで食べ終えます。

ついでにメモしておくと、合戦小屋のトイレは・・・、目に沁みます。

トイレを出たら、蓋つきのポリ容器に水が貯めてあり、蓋の上に置いてあるひしゃくで水をすくって手を洗います。

スイカを食べてエネルギーチャージしたら、また登山開始。

途中、下から登ってきた燕山荘のオーナーに抜かれたりしながら、17時過ぎに燕山荘に到着。

着いてほんの数分間、日が差しましたが、あっという間にガスってしまい、眺望は望めませんでした。残念・・・。

燕岳の登山道は急登ではあるけれど、危ないところはなく、北アルプス入門編の山というのを実感した登山でした。

 

 

 

「タイ~仏の国の輝き~」展

「タイ~仏の国の輝き~」展(@トーハク)に行ってきました。

行ったのは、7/21の金曜日です。通常17時で閉館してしまう博物館が、金曜日は21時まで開館しているのが社会人には嬉しいところ。社会人が行きやすい土日祝日の特別展は、とにかく混んでますからね。

サクッと気に入った作品3点を挙げてみますと、①ナーガ上の仏陀坐像②仏陀遊行像③ラーマ2世王作の大扉、です。特別展のサイトでも見どころとして紹介されている作品群ですが、素人がみても分かる素晴らしさがありました。

タイ展に入ってすぐに見られる作品が「ナーガ上の仏陀坐像」です。

ナーガも仏陀も美しい造形で見入ってしまいます。

像には所々、緑色の石が嵌め込まれていたり、赤い石が嵌め込まれていたらしき痕跡がありました。

なくなっている部分の石は、剥落したのか、誰かに取り外されてしまったのか、解説に何の記載もありませんでしたが、派手な装飾がなくてもその造形だけで美しさを堪能できる作品です。

トーハクの東洋館には材質も大きさも違うけれど、ナーガ上の仏陀像が展示されているので、帰りに忘れずに見てみるのも良しです。

ナーガ上の仏陀坐像が展示されているパートは、全体が水色多め、黄色を少し配色した展示室になっていて涼しげ。

外の暑さでバテながら展示室に入り、展示室内の涼し気な色合いを目にして、引きずっていた暑さが引き、すーっと静かな気持ちで鑑賞に移れる効果があると思いました。

次に、仏陀遊行像。

日本では立っているにしろ、座っているにしろどーんと構えている仏像が多いので、歩いている姿を写し取った仏像というのは新鮮な気がします。

文化や仏教の流派の違いが見えて面白い。日本みたいな大乗仏教の国では仏さまは頼りがいのある安定した感じ、タイのような上座部仏教の国では民衆の中に入り込んでいく仏さまという感じなのかな。

柔ってらかで力のよい入っていない体のラインや、歩くのに伴って揺れる衣の柔らかな感じが良いです。

最後に、ラーマ2世王作の大扉。

展示室内でこれだけは写真撮影可なので、すかさず撮影!

見上げる程大きく、様々なものが彫りこまれています。ムカデやカエル、しか、さる、ザクロ、種類が分からない花などたくさん。しかも金で塗装されていて豪華です。

火災にあい修復した貴重な品で、輸送も大変だったそうですが、一見の価値のある大扉だと思います。

これら以外も、金製品は豪華かつ細かな細工で目を奪うし、ニエロ装飾を施した水差しも素敵でした。

そして今回の展示で思わぬ驚きが、展示室内の豆知識的な解説で、日本に本物の仏舎利があると知ったこと。タイから友好の証として贈られたもので、日泰寺にある、と。どこのものとも分からない、馬の骨を仏舎利と偽称しているものばかりだと今まで思っていましたが、本物が実在していたとは驚きです。

 

 

 

 

イングリッシュ・ナショナル・バレエ「海賊」

7/14のイングリッシュ・ナショナル・バレエの「海賊」公演(@東京文化会館)を観てきました。

バレエ団の芸術監督とダンサーを兼務しているタマラ・ロホが、どんな踊りを魅せてくれるのか、そして衣装が素晴らしいと聞いたので確認してみたくて。

「海賊」のあらすじ。海賊の首領(コンラッド)が、奴隷商人(ランケデム)からパシャへ売られてしまった恋人(メドーラ)を頑張って取り戻す。二人の蜜月もつかの間、手下の裏切りでメドーラがパシャの元に戻され、またまた頑張って取り戻し、晴れ晴れとした気持ちで航海に向かう。大海原に向かったものの、難破して、辛くもコンラッドとメドーラの二人が無人島らしきものに漂着して終わりという、終わり方としてはどうなんだというバレエです。ストーリーを楽しむというより、踊りを楽しむバレエですね。

三連休前日の平日夜公演だからか、1階席はほぼ満員でしたが上の階は空席が多かったですね。

が、そんな客席の寂しさをものともせず、ダンサーが熱演してくれて良い公演でした。

まず衣装。安っぽさが微塵もない衣装でした。スタイルが良くてしっかりしたテクニックを持つダンサー揃いで、ボブ・リングウッドが手掛けた衣装がはえること!女性陣の衣装がキラキラとして綺麗でしたが、パシャの衣装が特に豪華でした。男性ダンサーの衣装も色合いがきれい。

主要ダンサーの踊りも素晴らしかったです。

奴隷商人ランケデムはブルックリン・マック。何年も前にNBAバレエ団のガラ公演で観た時はテクニックはすごいけれど、力任せに踊っている部分があるかなと思ったものでした。が、昨日はテクニックと端正さが融合した、変に力の入っていない余裕のある踊りでした。イングリッシュ・ナショナル・バレエに所属しているのではなく、今回は客演なんですね。

コンラッドはリード・プリンシパルのイサック・エルナンデス。スタイルが良く、安定したテクニックのあるダンサーでした。ロホとの息もピッタリ。

メドーラのロホ。回転系のテクニックが相変わらず素晴らしかったです。芸術監督との兼任、しかも年齢も年齢なのでどの程度踊れるのかと怖いもの見たさでしたが、しっかり不安を払拭してくれました。余裕を持って軽々と回転し続け、しかもテクニックを誇示しすぎない。ロホはクレバーなダンサーで、ガラでは観客を楽しませるようにテクニックの限りを存分に見せてくれるのですが、全幕公演では全体の流れやバランスを考慮して「どうよ!」と言わんばかりのテクニックの見せ方はしません。そして表現力もあるダンサーです。甲の高い足先が誘うように表現力に富んでいて、魅了されました。

が、回転系では余裕を見せていたロホですが、ジャンプが重かったような気がします。ロホがジャンプが得意という認識は元々ありませんでしたが、やっぱり14日の公演では重かったかな。ジャンプのような瞬発力を要するものは、加齢による衰えが早めにくると言いますが、そのせいなのか?梅雨なのにやたらと暑い東京の気候と芸術監督との兼任で、疲れがたまっていたのか?

そしてコンラッドの忠実な部下、アリを演じたのはファースト・ソリストのセザール・コラレス。昨日の公演はすべて彼に持っていかれました。

ピルエットの回転が驚くほど速く、いつまでも回っています。ピルエットをコントロールして減速していき、止まるまでまったく軸がぶれませんでした。ジャンプは大きく高く、このジャンプで終わりだよね、というところで、さらに余裕をもってジャンプを追加してきます。

コラレスの踊りに客席は大盛り上がり。彼の踊りで会場の温度が上がりました。コラレスが盛り上げた舞台を受けて、ロホもダブル・トリプル回転のフェッテを披露し、会場の温度をさらに上げます。コラレス、ロホ、エルナンデスのパ・ド・トロワは観客に大満足感を与えて終わりました。

ググってみるとコラレスは2013年のローザンヌコンクールで入賞した、まだ若いダンサーなんですね。パリ公演でも大喝采を浴びたダンサーだとか。来年8月に行われる世界バレエフェスティバルにロホと一緒に呼ばれるんじゃないかと期待してます。

そしてカーテンコールでもコラレスが一番大きな拍手を貰っていました。満席とは言えない会場でこんなに大きな拍手がなるのか、と驚くほどの拍手の大きさでした。

何回ものカーテンコールがあり、ふと気づくとダンサーの列の中に、ロホの姿が見えません。あれ、と思っていると、舞台の袖から黒いロングドレスを身に着けたロホが、通訳さんを連れて登場。マイクを持ち、何か観客に伝えたいことがあるようです。

バレエ団にとって大切な演目である「海賊」で、今日、あるダンサーを顕彰したい、と。

これはまさか・・・と思っていたら、「セザール・コラレスプリンシパルに任命します。」と発表がありました。次の瞬間、会場から割れんばかりの拍手が!バレエ団の同僚ダンサーからの温かな祝福と、観客の熱狂的な拍手に包まれ、コラレスは呆然としていたようでした。隣にいたブルックリン・マックが祝福のハグをし、喜びに言葉もないコラレス。感動的な場面に立ちあえて、一観客の私も嬉しかったです。公演前は何の前触れもなかったので、ロホはどの時点でコラレスプリンシパルに任命しようと決意したんでしょうね。

その他のダンサーも簡単に。ギュルナーラ役のローレッタ・サマースケールズは美しい容姿で、甲が特に美しく、回転系が得意のようでした。パシャ役のマイケル・コールマンは、女好きだけど憎めないキャラクターで、彼の演技に会場から笑いが起きました。オダリスクの一人、金原里奈さんは可愛らしい個性のダンサーでした。15日はギュルナーラにキャスティングされていて、期待の若手ダンサーなのですね。

かなり前にイングリッシュ・ナショナル・バレエの来日公演(確か「白鳥の湖」)を観たことがありますが、可もなく不可もなくという感じで当時の公演はあまり印象に残っていません。今回の来日公演でゲストも含め、良いダンサーに恵まれた勢いのあるカンパニーだと印象が変わりました。ロホの芸術監督としての手腕が高いのでしょうね。

 

ぬか漬けで快腸

ぬか漬けの効果がすごい!

とんでもなく、快腸です。

もともとお通じで悩んだことはないけれど、歳を重ねるとその質が悪くなってきていました。

それが、ぬか漬けを食べたら、若い頃のような質が戻ってきました。

 

元々ぬか漬けを作ろうと思ったのは、周りの友人が何人もぬか床でぬか漬けを作っているのを知り、

話の仲間入りをしたくてジッパーバッグで簡単に漬けられるぬか床を買ってみたのです。

スーパーのセールで1本10円できゅうりをたくさん入手したので、ぬか漬けをさっそく作ってみました。

半日もたたずにぬか漬け完成。

食べると、しみじみと美味しい。日本の味です。

そうしたら何の期待もしていなかったのに、日を追うごとにお通じの質が良くなってきました。

 

腸の状態を良くするには乳酸菌が良い、その代表としてヨーグルトが良いと言われてますね。

ぬか漬けにも乳酸菌は含まれています。

日本人には、日本人が昔から食していたものからとる乳酸菌、例えばぬか漬けが良いと聞いたことがあります。

今回人体実験ではないけれど、自分で体験してみて本当なんだと実感しました。

ヨーグルトを積極的に取っていた時期もありましたが、加齢による腸機能の衰えを改善するほどの効果はありませんでした。

年ごとに悪くなっていくペースが若干緩和されていたかな、という程度です。

それにしても、腸内環境改善というとすぐヨーグルトが持ちだされるのは、

放映されるテレビ番組、出演する研究者のバックに乳業メーカーがついているせいですかね。

市販のぬか漬けは添加物が多いものもあり、さらに塩分が気になるということで推奨しがたいという事情もあるのかもしれませんが。

 

 

 

 

 

 

虫よけスプレーは効果あり

根子岳四阿山を縦走する日帰りツアーに参加しました。

菅平牧場の登山口から根子岳四阿山、あずまや高原ホテルのそばに降りてくるコースです。

根子岳は蒸し暑い中、登って、登って。四阿山はゴロゴロした石だらけのところを下って、下って。ああ、疲れた。

 梅雨の季節の中、雨に降られなかったのは良かったのですが、展望がほぼなかったのは残念。景色を楽しめるのは、登山の楽しみの一つですからね。

そんななか、レンゲツツジ、ハクサンチドリがたくさん咲いていて、本当にきれいで心が和みました。

花に詳しくないのでよく覚えていませんが、ミヤマキンバイ、イワカガミ、ツマトリソウ、その他たくさん。スズランも一株だけあり、ハクサンチドリは濃い紫から薄い紫まで色のバリエーションが楽しめました。

ツアーで一緒だった人たりは「ここは花の宝庫ね。」「この花が見られるのは珍しいのよ!」と大喜びしていましたが、すみません、もう教えてもらった花の名前忘れました・・・。 

花で楽しめた根子岳四阿山登山ですが、悩まされたのは休憩中の虫の大量襲来です。

行動中や樹林帯での小休憩中は、虫がブンブン寄ってくるということはなかったのですが、平坦な開けたところでの昼食中や小休憩中に大量の虫に悩まされました。

最初は一匹もいなかったのに、あっという間に何十匹もの虫が飛んできて、払っても払っても寄ってきます。一体どこから飛んでくるんだか・・・。

ガイドさんが「高山での塩分は希少だから、汗かいた人間がやってくると虫が寄ってくるんだよ。」と言いながら、サッと頭から虫よけネットをかぶりました。

周りを見ると、準備の良いツアー参加者は虫よけネットをここぞとばかりに装着しています。そして虫よけネットに覆われていない部分は、シュッシュッと虫よけスプレーをかけています。

わたしも早速、シトロネラ配合の虫よけスプレーをシュッシュ、シュッシュとスプレーしてみました。

そうしたらサーッと虫が引いていくではありませんか。

虫よけスプレーってそんなに期待していませんでしたが、本当に効果あるんですね。

でもスプレーの効果は長く続かないらしく、次の休憩時にも、どこからともなく虫が襲い掛かってきました。そしてまた虫よけスプレーをかけ、虫が去っていくの繰り返し。

 

「虫の害から身を守れた!」と思っていましたが、下山して気づく自分の迂闊さよ。

下山中に、(何となく耳が熱くて痛痒いな、軽い頭痛もするな、気のせいか?)と思っていましたが、鏡を見ると耳たぶを除く部分の耳介が赤く腫れていて、額の中央もボコッと赤く腫れているではありませんか。

帽子をかぶったまま虫よけスプレーをしたので、帽子のひさしが邪魔をして、額や耳の上部にスプレーが行き渡っていなかったようです。その部分をしっかり虫は見逃していなかった!

耳なし芳一じゃないけど、耳って忘れやすい部分なのだな。昔話って含蓄に富んでいます。

今度登山するときは耳まで忘れずに、そして虫よけネットも購入して持っていこうと思います。

なお、虫よけネットはネットの色が白っぽいものだと視界がチラチラしてしまうので、黒系のものが良いそう。

虫よけスプレーは市販のものでなく、北見のハッカ油とエタノール・精製水などの自作虫よけスプレーを使っている人もいました。ハッカの香りが清涼感があって、虫よけだけでなく、疲れが軽減するような感じがしたので、なかなか良さそうです。

 

 

 

 

ボリショイ

6月は新国立劇場のジゼル公演だけでなく、ボリショイバレエのザハロワ主演ジゼルも観ています。

ボリショイバレエはジゼル(6/4ソワレ)のほか、ザハロワ白鳥の湖(6/8ソワレ)とクリサノワ&ラントラートフのパリの炎(6/14)も。

簡単に覚え書き。

ジゼル役のザハロワ、一幕では村娘というには無理があるなーと思ったものの、二幕ではさすが。ロジキンにリフトされている場面が、浮遊感があって風になびいているよう。

一番気になったのは演技でも踊りでもなく、狂乱の場のシニヨンに結った髪のほどけ方です。

新国立劇場は過去の公演でもそうですが、ジゼルが狂乱の場で倒れこんだ際、母親が介抱しているふりをしてジゼルの髪を必死にほどき、村娘役ダンサーたちが壁になって客席からその様子を見えないようにしています。

一方、ボリショイ公演は、ジゼル自身が倒れこむ過程でにさりげなくシニヨンに手をあてて、ある程度ほどける状態にしておいているように見えました。母親役は必死にシニヨンをほどいている素振りはなく、それを隠す村娘たちの壁もありません。そして力なく立ち上がったジゼルの髪は自然にゆったりとほどけていく。

ロシア人と日本人の髪質の差なのか、結い方や整髪剤の違いなのか、単に演出の違いなのか、ボリショイバレエの方が断然自然でした。新国立劇場の方は、「早く髪をほどかなきゃ」という母親役の慌てた様子が、上階からの鑑賞ではけっこう見えていました。

それとこのジゼル公演では、公演前に安倍首相のスピーチがありました。来年は日本で「日本におけるロシア年」、ロシアで「ロシアにおける日本年」で、それに先立ち今年は日本で「ロシアの季節」を行うと。

幕の前に演台が置いてあったので、はて?と思っていたら首相とロシア副首相(金髪女性)のスピーチのためだったんですね。お二人の登場で会場がどよめきました。

 

白鳥の湖。ザハロワの白鳥は何度見ても良いですね。日本人ダンサーの白鳥もいいですが、ロシア人の長い腕は翼をはためかせているようで、全体のラインの美しさも相まって、幻想的な美を見せつけられました。

 

パリの炎。今までガラコンサートでパドドゥだけで全幕は観たことがなかったので、パドドゥのイメージから革命万歳のお祭り騒ぎなバレエなのかと思っていました。

ところが、ボリショイバレエのダンサーの質の高さやダンスの楽しさを存分に楽しめるだけでなく、人が革命に身を投じていく過程やそれぞれの人々の変節も描かれていました。

革命軍に加わった青年ジェロームが処刑された貴族の娘アデリーヌの首を抱いて悲嘆に暮れている反面、やってやったぜと湧きたつ群衆との対比が物悲しく、恐ろしい。

ラストが特に怖かった。

赤いライトの中、革命軍が思いつめたような恐ろしい表情で、前進してくる。

もっと血を!

革命を阻むものは容赦せず倒していく!

革命の熱狂が、このあと社会を混乱に混乱を重ねる状態に導くさまを暗示しているようでした。

主演のラントラートフの舞台を成功させるぞ!という気合の入り方と舞台を引っ張っていく姿勢が、観ていて印象的でした。ダンサーの成長を過去の来日公演と比べられるのも、来日公演の楽しみの一つですね。

 

 

 

 

 

またジゼル

6/30も新国立劇場でジゼルを鑑賞しました。

今回のジゼルは小野絢子さん、相手役のアルベルトは福岡雄大君。

このお二人、前回(2013年)の新国立劇場ジゼル公演時はバーミンガム・ロイヤルバレエ団のアラジンに客演していた関係でキャスティングされておらず、今回が新国立劇場でジゼル初お披露目です。

主演の小野さんはいつも質の高い舞台を見せてくれて、個人的にはここ数年、今見るべきダンサーに位置付けられています。テクニックが強いというより、なにかニュアンスがある踊りと音楽が聞こえてくるようなステップが魅力だと思っています。なので開演前から期待が高まります。

結論から言うと、やはり素晴らしかったです。

小野さんと福岡君はいくつもの舞台でペアを組んでいるため、サポートもリフトもスムーズ。息の合った二人の世界を堪能しました。

小野ジゼルは登場した瞬間から可愛らしく、瑞々しい。小鹿が跳ねているようでした。姫役の時の強い主役オーラとは違う、素朴な可愛さが漂っていました。

一方の福岡アルベルトは大人っぽい。ジゼルが森番ハンスに言い寄られた時、ジゼルが嫌がる素振りを見せるまでは静かに事態を見守り、一旦ジゼルが嫌がる素振りを見せたらサッと二人の間に入り、ジゼルを守る姿勢を見せる。佇まいも所作も、村人とは違う雰囲気を持っています。一時のダンサー生命に影響しかねない体型から持ち直して、動きやすそうなのも良かった。体重増は怪我の増加にも繋がるので心配してました。

米沢・井澤組の公演と同様、今回も気になるのは、アルベルトが身分がばれそうになる、そしてばれた時にどう振舞うかという点です。

菅野ハンスに身分をばらされた福岡アルベルトは落ち着いた感じで笑顔を見せつつ、小野ジゼルにハンスの言を信じないよう話します。遊び人っぽくは見えません。(ついでにいうと、菅野さんは演技力のあるダンサーだなあ。粗野な中にもジゼルへの抑えがたい恋心と報われない苦しさが滲んでいます。)

同じ場面で井澤アルベルトも笑顔で米沢ジゼルに話しかけ、話しかけ方が遊び人の言い訳っぽく見えたのですが、両者の違いは?派手顔のイケメンである井澤アルベルトは、その容姿ゆえに遊び人っぽく見えてしまうのかもしれないな。

遊び人っぽくは見えない福岡アルベルトですが、剣をはずし貴族らしからぬ軽装でいる姿をクールランド公爵に見とがめられた時のとぼけ方が白々しくアホっぽくて、本当は悪い男なのでは?という疑惑を抱かせます。

さて、狂乱の場。小野ジゼルは正気だけど、悲しみと信じたなくて混乱しているように見えました。悲しい、信じたくないという気持ちが伝わってきます。

深い悲しみがジゼルの心臓を傷めつけ、酸素供給が少なくなって意識障害になり、最終的に事切れてしまった、と思わせる演技でした。

従者に制止されてもジゼルに駆け寄ろうと必死の形相の福岡アルベルトは、本当にジゼルを愛していたように見えました。取り澄ました貴公子の顔が完全に消えちゃって。

一幕の楽しい村祭りから狂乱の場への暗転、二幕ではバレエ・ブランを楽しめるのが「ジゼル」という作品。

二幕で最初に登場するのはミルタ役の細田さん。スタイルの良い新国立劇場バレエ団のダンサーの中でひときわスレンダーで透明感の漂うダンサーですが、冷たく硬質な怖さとウィリのリーダーとしての存在感がありました。ウィリ集団のアラベスクでの交差場面が終わると、真ん中を割ってグランジュテで飛び出してくる場面ではハッとさせられました。

さて、小野ジゼルはどうだったか。正直、小野さんは特にテクニックが強いという印象はない(小野さんすみません・・・)ので、ウィリとしての登場場面はどうだろう、と密かに心配していました。が、杞憂だったようで、空気抵抗を感じさせない速い回転、風に乗っているようなジャンプで、心配を払拭してくれました。その後も小野ジゼルは福岡アルベルトとのパドドゥやソロの踊りが軽い。

そして小野ジゼルは、福岡アルベルトを優しく守り抜く。一幕では守られる存在だったジゼルが、二幕ではアルベルトを優しく包み込み、守る存在になっている。

アルベルトのことは全身全霊をもって守り抜きますが、アルベルト以外の男性にウィリの一員として対したときは、どうなるんだろうか。他のウィリ達と同様、眉ひとつ動かさず非情に振舞うんだろうかと思ったりもしました。

ミルタに命じられて踊り続ける福岡アルベルト。いつまで続くんだと固唾をのんで見守るほど、細かく速いアントルシャが続きました。あれだけアントルシャを続けて、その後ブリゼも続けるのだから相当疲れると思うのですが、苦しそうな表情や踊りはあくまで演技。苦しい演技にかこつけて素の疲れを踊りの中で見せてしまうと、そのあとの踊りももっさりと重くなってしまう、はず。

散々踊らされてもうこれまで、というところで夜明けの鐘がなり、ミルタ率いるウィリ集団は去っていき、舞台には小野ジゼルと福岡アルベルトが残されます。力尽きて倒れこむアルベルトの片腕を胸に抱く小野ジゼルの安堵感や達成感、迫りくる別れの哀しみなど様々な感情を湛えた表情が美しい。

墓に消えていくジゼルの片手を手に取り、慈しみをもって頬に添え続ける福岡アルベルト。ジゼルが消えてもそのままの状態が長く続きます。ジゼルが去って行っても気づかないアルベルトの状態に、ウィリのジゼルは実体のない存在で、実際に触れあっていたわけではないのだと改めて気づかされます。

それにしても福岡アルベルトが片膝ついてジゼルの手を取っているかのようなポーズが長い。もしかして、一晩踊らされ続けた疲れや生き残った安堵から、そのまま寝落ちしたという表現か?そうだとすると、目覚めて今までのことが夢かうつつか判然としないところを、ジゼルが残した一輪のユリの花に気づき、やはり現実のことだったのだと改めてジゼルへの愛しさを溢れさせて一人たたずむラストなのだろうか。

いやいや、それは考えすぎで、あのポーズの長さはジゼルと離れがたい気持ち表現したもの?ジゼルの存在が既に消えていることに気づき、残されたのユリの花でジゼルの深い愛を思い出し、ジゼルへの 愛しさが溢れて一人たたずむラストだったのだろうか。