マリインスキーのすべて(@東京文化会館)

12/2と12/3にマリインスキー・バレエの「マリインスキーのすべて」を観ました。

第一部の「ショピニアーナ」(レ・シルフィード)。正直、ショピニアーナは10年に一度位の間隔でしか観ない作品なので、どこが見どころか良くわかりません。月明かりの下、現実感のないフワッとしたシルフィードたちと詩人が幻想的に踊り、静かな曲調から最後はワルツで華やか、かつ、優美に終わる作品。

12/2のアリーナ・ソーモワのシルフィードっぷりを見て、感慨深かったです。マリインスキーの期待の新人として新国立劇場のくりみ割り人形にゲスト出演したときの印象が強かったので(パートナーのサポートのしやすさも考えず自分の踊りたいように踊り、上げたいように脚をあげ、内心「暴れ馬ソーモワ」と名付けていた位なので)、ソーモワも成長したな、と。でもソーモワより、12/3のエカテリーナ・オスモールキナの方が好みです。

それより作品中に使用されているショパン前奏曲第7番イ長調を聞くと、太田胃散のCMをどうしても思い出してしまいます。太田胃散のCMは罪深い・・・。イ長調を使っているのはイ長(調)と胃腸をかけたダジャレ?

第二部の「眠れる森の美女」よりローズ・アダージョ。12/2はオスモールキナで、12/3は期待の新人(らしい)マリア・ホーレワ。ホーレワは小鹿のようなダンサーで、可愛い。

オスモールキナとホーレワではアティテュードで4人の求婚者の手を取りながらバランスし続けるときに違いがありました。オスモールキナは両手をアン・オーにしてキープはせず、一人の求婚者の手を離したら、次の求婚者の手のひらの上に自分の手をそっと優雅に置くスタイル。ホーレワは次の求婚者の手を取る前に頑張って両腕をアン・オーにして一瞬キープするスタイル。

好みはあるのでしょうが、わたしはアン・オーで無理にキープせず、優雅に手を置くオスモールキナの方が好みです。といっても、ニーナやロホのような強靭なテクニックを持つダンサーがアン・オーでアティテュードの長いキープをするのを観るもの好きです。見せ場に出来る位のキープをできるダンサーなら観ていておおっ!となるので良いのですが、観ているこっちがハラハラするような場合は無理しなくてもいいのではないかと思います。一応、お姫様の設定なのだから。

オーロラ姫の求婚者4人はそれぞれ色、デザインの違った衣装で、それぞれ違う国の出身者という設定のようです。どの衣装の人がどこの国の出身なのかは分かりませんが、設定が細かい。

次は男性3人が踊る「ソロ」という作品。速い曲調に合わせて次々と男性ダンサーが踊りを披露する。楽しくて、観ていて飽きない、眠くならない。2日間とも同じダンサーが踊っていたようで、この作品が身体に馴染んでいるようでした。

「海賊・第2幕のパ・ド・ドゥ」。バレエ好きの友人から「永久メイちゃん、注目!」と言われていたので楽しみにしていました。体型はとっても細くて、加治屋百合子さんをちょっと思い出します。

踊りの方は、うーん・・・、12/2は緊張していたのかな。フェッテも途中で崩れてしまったし。踊りが終わってポーズを取る最後の音に合わせるように、ピッと手首から先を動かすのも、もう少し自然な方が良いのにと思ったし(マリインスキースタイルなのでしょうか?)。

12/3は前日より調子が良く、テクニックも安定していました。そして最後の音に合わせて手首から先を動かす仕草も、それ程気になりませんでした(自分が見慣れたのかもしれません)。外国のバレエ団内に日本出身のダンサーがいると、来日公演では本国の公演より重要な役を配薬されることがありますが、パ・ド・ドゥを任されるとはかなり期待されているのでしょうね、メイちゃんは。

12/2の相手役はエルマコフで、男性的で力強さを感じさせる踊り。12/3はキム・キミンはジャンプが高く、マネージュが高速、テクニシャンぶりを見せていました。

 「バレエ101」。アイディアとユーモアのある作品で、面白い。バレエのポジションとパに1~101番までの番号をつけて、最初は番号ごとのポジションとパを見せる。徐々に番号がランダムに告げられて、それに合わせてポジションとパを組み合わせて踊りになっていく。告げられた番号に合わせて正確にパを繋げるダンサーは、精密な機械のようです。 最後の101番目のポジション(パ)は、観てのお楽しみで、最後にアッと驚く仕掛けつき。ちなみに1番から6番まではふつうのバレエのポジションと同じです。2日はシクリャローフで、3日はザンダー・パリッシュでしたが、お二人とも見事。

2日の「フラッシュ・バックよりパ・ド・ドゥ」。初見の作品でよく分かりませんでしたが、綺麗でフワフワの作品ではありません。エカテリーナ・コンダウーロワが感情の起伏の激しい女性を演じていました。コンダウーロワに似合う。ローマン・ベリャコフと息の合ったパ・ド・ドゥを見せてくれました。

2日の「タリスマンよりパ・ド・ドゥ」。タリスマンのパ・ド・ドゥも過去2回ぐらいしか観た記憶がないので、見どころがよく分かりません。ロシアのダンサーが好んで踊るパ・ド・ドゥ、というかロシアのダンサー以外が踊っているのを観たことがない。キム・キミンがここでもテクニシャンぶりを見せつけて、大きな拍手をもらっていました。キム・キミンは観たことがないような回転ジャンプ(うろ覚えですが、両脚を膝から折り曲げ、進行方向に向かって回転ジャンプをしていたような?)をしていました。あれは何だろう?

3日は2日の「フラッシュ・バック」「タリスマン」に代えて、「別れ」と「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」が上演されました。

「別れ」も初見で、マリインスキーダンサーのユーリー・スメカロフの作品。ダンサーとしてのスメカロフは、前回の来日公演で白鳥の湖でロットバルトを演じているのを観た気がします(うろ覚え)。作品は大人の男女のパ・ド・ドゥという感じでした。

ナデージダ・パトーエワとウラジーミル・シクリャローフの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。悪くはなかったのですが、夏のバレエアステラス2018で観た米沢さんのチャイパドが良かったので、それと比べてしまうと・・・。シクリャローフはソロで踊っている部分でちょっとミスした部分があり、会場からはブラボーと大きな拍手が飛んできましたが、自分で納得いかなかったのか早々に袖にはけてしまいました。その後の踊りで挽回して、大きな拍手を存分に浴びていました。

第三部は「パキータのグラン・パ」。

2日はテリョーリキナと石油王の息子(らしい)ティムール・アスケロフ。テリョーシキナを観たくてこの日のチケットを取りました。テリョーシキナは出てくると主役オーラで場が締まります。観るべき人が出てきたという感じです。パの名称は知りませんが、片脚ポワントで立ちながらトン、トン、トンと前に進んでいく技の優雅で余裕のあること!テクニックに定評のあるダンサーは安心して観ていられます。

3日はエカテリーナ・コンダウーロワとアンドレイ・エルマコフ。コンダウーロワは大人っぽい美人なので、前日のテリョーシキナとはまた一味雰囲気が違います。テリョーシキナが赤い花のようだとしたら、コンダウーロワは白い花という感じですかね。

群舞が脚の上げる角度や身体の向きが合っていない部分がたまにあり、白鳥の湖は大丈夫だろうかとちょっと心配になったパキータのグラン・パでした。

 

 

(いまさらの)アリス雑記

新国のアリスは計3回観て、そのうち2回は小野さん主演日でした。比較的記憶に残っている小野さん回について、感激の記憶が忘却の彼方になる前(すでにかなり忘却しつつある・・・)にアリス雑記。

小野さん演じるアリスは元気で明るい女の子。庭師のジャックにほのかな恋心を抱いているようで、二人の仲は見ていて微笑ましく、良い感じです。福岡君演じるジャックは、アリスとは所属する階級が違うことを感じさせる庶民感。身に着けているものだけでなく、所作や佇まいからも上流階級の人間ではないことが分かります。といってもアリスが恋心を抱くぐらいだから、下卑た感じはなく、すっきりとした若者です。

大らかで浪漫を感じさせる旋律に合わせて踊る2人のパ・ド・ドゥは、看板ペアの面目躍如でとてもスムーズです。観ていて安心感があります。そして元気で明るいアリスは、ジャックとのパ・ド・ドゥでは、乙女になる。恋する女の子の幸福感を感じさせます。

アリスは上演中、ほぼ出ずっぱり。テクニックや演技力だけでなく、相当体力が必要とされそうです。米沢さんと小野さんの2キャストで連日よく上演したなと思いますが、さすが新国立劇場バレエ団の2大看板女性ダンサー。最終日に観た小野さんも疲れは見せず。日本のバレエ団で短期間に4回ずつ主演を務めるなんてことは(わたしの知る限り)あまりないので、疲れは蓄積していても充実感も感じた舞台経験だったのでは、と勝手に推測しています。

アリスが訪れた家の前で女王からの招待状のやり取りをする魚の召使とカエルの召使の場面。魚は井澤(兄)君でカエルは福田(兄)君。くしくも(?)同じバレエ団で兄弟で踊っているダンサーのお兄さんコンビ。両者ともテクニックに不足はないダンサーなので、高度なテクニックをさらっと簡単そうに見せて、楽しさとコミカルさを客席に届けます。

魚とカエルの楽しい場面から一転、家の中は公爵夫人、公爵夫人があやす赤ん坊、そして怖ーい料理女がいます。料理女はソーセージを作っています。一見何でもなさそうな家の中が、狂気をおびた料理女によって、場面は次第に凄惨な雰囲気に変わっていきます。この家の登場シーンで「Home Sweet Home」と書かれていたわけですが、こんな凄惨な場面が「Home Sweet Home」なのか。イギリス人らしいブラックユーモア?

米沢さん主演日に観た、本島さんの料理女が本当に怖かったです。さすが演技力抜群のダンサー。今回のアリスでの本島さんは、ハートの女王も料理女もまったくハズレがない。

マッドハッターはどうしてもロイヤルのスティーブン・マックレーと比べてしまうので、割愛。マッドハッターって、ローザンヌバレエコンクールのフリーダンスでタップダンスを踊り、観客・審査員ともに度肝を抜かして最高賞をかっさらっていったマックレーのための役だと思う、つくづく・・・。

群舞で目につくダンサーがいると思うと、木村優里さん。頭に数字の飾り(なんの数字かは失念しました)をつけたトランプの群舞でも、色とりどりの明るい花の群舞でも「あれは木村さん!」と一瞬で目に入ってきました。華があるって、舞台人として本当に最大の武器です。

ルイス・キャロルで、白ウサギで、終幕で現代青年(役名は不明)役の木下君。踊りは間違いなく美しくうまいけれど、白ウサギ役はどうなのだろうと開幕前は思っていました。ルイス・キャロル/白ウサギはスレンダーで長身、演技力があってユーモアも表現できるダンサー、ロイヤルのエドワード・ワトソンのイメージが強いので。

観劇した結果、ルイス・キャロル/白ウサギは、木下君の当たり役かもと思いなおしました。ルイス・キャロルのときはアリスと同じ階級に住む新しもの好きそうな青年、白ウサギのときは落ち着きなくワタワタとして可笑しみがあり、終幕の現代青年はすっきりと爽やか(っぽい)。

木下君はシンデレラで道化役を演じているので、ユーモアが必要とされる役を演じたことが無いわけではありません。が、道化役を安心して任せられるダンサー不足で木下君にお鉢が回ってきたのか、道化タイプではないのではと思いながらシンデレラの道化役を観ていました。で、今回の白ウサギは、そんな思いを払しょくしました。ユーモアとダンス技術の確かさ、ルイス・キャロルと白ウサギと現代青年の役柄の演じ分け。存在感があって、かといって存在を主張しすぎない。名ストーリーテラーだったのでは?

もっと書き残しておきたかったこともあるような気がしますが、今回はこれで終わりです。やはり記憶が鮮明なうちに書き残しておかなくては、と反省・・・。

ヌカザス尾根から三頭山西峰へ

11月3連休の初日に三頭山に行ってきました。

三頭山には今年の3月に檜原都民の森の森林館からの周回コースで行ったので、今度は違うルートにしよう。ということで、大変だよと聞いていたヌカザス尾根から登ってみることにしました。

急登とは言いますが、ヌカザス尾根から登った結論、稲村岩尾根や大ブナ尾根の方が大変・・・かな?稲村岩尾根と大ブナ尾根は4月に登って暑かったというのもありますが、アップダウンがあるというよりひたすら登っていたイメージ。ヌカザス尾根は急坂を登ると、またすぐに同じくらいの急坂を下る、アップダウンがあるコースというイメージです。

ヌカザス尾根の三頭山登山口までは、奥多摩駅から西東京バスで小河内神社バス停まで行きます。3連休の初日、天気は良いという予報でホリデー快速おくたま3号はなかなかの入り。皆さん早くから並んでいるので発車時間まぢかに乗車したのでは、座れません。電車の到着10分前から並んでいたので、無事座れ、9:17に奥多摩駅に到着。

奥多摩駅の改札を出ると、道路をはさんだ向かいの停留所には結構な人が並んでいます。これは増発便が出るかなと思ったら、やはり出ました。増発便が出るといっても車内は混雑しています。3連休の初日で泊りで山登りをする人が多いのか、テントでも入れているらしき大きなザックを持つ人が多い。スペースがあるように見えて、足元に大きなザックを置いているので、思ったより乗客が入りません。大きなザックをよけて変な姿勢になって立ち、カーブの多い道を揺られながら乗車するのは、正直疲れます。早く目的地に着いてくれないかと願い続け、奥多摩駅から30分ほどでバスは小河内神社バス停に到着しました。

小河内神社バス停の目の前には、奥多摩湖が広がっています。そして目前の奥多摩湖には、浮橋が対岸まで渡っています。浮橋を渡りたくて、この近辺を散策する観光客もいます。ちなみに浮橋は時期によって渡れないこともあり、この日は奥多摩駅停留所に留浦の浮橋は渡れないと掲示がありました。うっかり小河内の浮橋を渡れるか否か調べてこなかったので、渡れる日に当たって良かったです。

浮橋を渡って散策コース(?)を抜けると車道に出ます。車道のわきを道なりにしばらく歩くと登山口が左手に見えてきます。小河内バス停から登山口までおよそ20分ぐらいでしょうか。持って行った登山地図にはイヨ山までのコースタイムは書いてありますが、小河内神社バス停から登山口までの所要時間は書いてありませんでした。そのため車道のわきを歩いていると、だんだんと道を間違えているのではないだろうかと不安になってきます。地図を出して何度も確かめてやはりこっちで正しいはずと歩いていると、前方に登山者が見えてきました。そして登山口が見えて、一安心です。

ヌカザス尾根は登り始めから急登です。針葉樹の生えた林の中を登り続けます。良い景色が望めないので景色を楽しむことも出来ず、頭の中で数字を数えて登っていました。あの木のところまで100歩で行けるかな、100歩で行けなかった・・・などと考えて。もくもくと急登を登っていると、修行のような気になってきます。

すると前方から目立つオレンジ色のベストを身に着け、犬を連れている人がやって来ました。手には猟銃を持っていて、連れている犬は筋肉質でしまった身体の猟犬です。

猟師さんだ!山に登っていて猟師さんに遭遇したのは、この日が初めてです。こりゃ、お花摘みのために人目のつかないところに行ってガサゴソしていたら、野生動物と間違われて撃たれてしまうかもしれません。おちおちお花摘みもしていられなさそうです。猟師さんとすれ違うかなと思いましたが、猟師さんは登山者が歩く登山道を外れて、林の中の道なき道を下りていきました。猟師さんにとっては勝手知ったる山で、登山道を外れても迷わないようです。

何度かアップダウンを繰り返して、イヨ山過ぎてヌカザス山へ。アップダウンを繰り返していると登っている途中で「今見えている先に道が見えないということは、あそこまで登ったら今度は下りになるんだな。」と予想がついてきます。予想がつくのはいいのですが、「何のためにこの急坂を登っているのか?」と虚しさもちょっぴり。ヌカザス山に着く手前で疲れてしまい、下山してくる登山者が道を譲ってくれても、先に登る気になりません。そんな姿をみた下山者の「あと5分も行けば山頂ですよ。」の一言がうれしい。その言葉でまた頑張る気になります。

5分よりももう少し時間がかかって、ヌカザス山に到着しました。正午も過ぎていい時間なので、ここで昼食をとることに。

ヌカザス山は至るところ枯れ葉で覆われています。先日ジェットボイルを購入したので持って来るか迷いましたが、こんな枯れ葉だらけのところで万一枯れ葉に引火してしまったら大変。操作に慣れていないジェットボイルを持ってこなくて正解です。奥多摩駅で登山者に向けて山火事の注意喚起をしている人たちがいましたが、注意喚起したくなる気持ちが分かります。

というわけで、山専ボトルに熱湯を入れてきました。この日のお昼は山専ボトルから注いだお湯で作るカップヌードルです。3分待ってアツアツのカップヌードルの出来上がり!

出来上がったカップヌードルをハフハフと食べますが、若干、麺が固いような・・・。前の週に山梨の扇山~百蔵山の登山をしたときは、フォーのカップ麺を山専ボトルのお湯で戻しましたが、この時も麺が若干固かった。待ち時間が短かったのかとその時は思ったので、今回はしっかり待ち時間を計っておきましたが、やはり微妙に固い。麺の固さはもどすお湯の温度が低いゆえのようです。保温力が通常の保温ボトルよりも高いと言われている山専ボトルですが、6時間以上もたつとさすがに100℃を保っているのは難しい。カップ麺を美味しく食べるには、熱湯じゃないとダメということがよく分かりました。

カップヌードルを食べていると、さっきとは違う猟師さん2人組が登山道を歩いてきました。2人組の猟師さんもオレンジ色のベストを着て、しまったボディの猟犬を連れています。目立つオレンジ色(消防士のオレンジ色の制服より赤みが強くて、ちょっと蛍光色っぽい)のベストは猟師さんのトレードマーク?今まで山で遭遇したことのない猟師さんに、この日だけで3人も遭遇してしまいました。

ヌカザス山から三頭山の間には、オツネノ泣坂という急坂があると聞いていました。ヌカザス山からすぐに結構な急坂を登って下るところがありましたが、泣坂というほどのところではない。こんなあっけない坂がオツネノ泣坂のわけがないと思っていたら、見えてきました、前方に長く続く急坂が。

オツネノ泣坂は、この日一番の長い急坂でした。といっても大ブナ尾根の方が大変だった気がします。個人的には急坂は登りよりも下りの方が怖いので、三頭山側から下りてくるより気分は楽です。

そんなつらい急登を終えると 待っていたものは、明るく広い尾根道でした。広々とした道は両側に広葉樹が生え、落葉した木々の枝の間から青空が見えます。優しい陽の光が降り注いでポカポカと暖かい。吐く息は白くて気温はさほど高くないのですが、吹く風は穏やかで、気持ちのいい陽だまりハイクの気分になります。

静かで、かといって明るい道で寂しくはありません。静かな尾根道を歩いていると、コンコンコンとキツツキが木をつつく音が聞こえてきます。あの急坂の先に、明るく広く開けた平坦な尾根道が待っているとは、想像していませんでした。この広々とした道は三頭山の魅力の一つかもしれません。

広々とした尾根道を過ぎると、三頭山西峰まであとひと登り。広々とした尾根道ではあまり標高をかせがなかったので、最後のひと登りで標高をかせぎます。

そして三頭山西峰に到着です。予定通り、14時ちょっと前に到着しました。山頂からは天気の良い日は富士山が見えますが、この日の富士山は雲に隠れている部分があるものの、冠雪した山頂はしっかり見えました。

山頂でフリーズドライのお味噌汁を飲んで人心地ついたら(寒い時期は温かいものを飲食すると元気が出てくるな)、沢沿いのブナの路を森林館に向かって下山しました。こんな感じでヌカザス尾根からの三頭山登山は終了です。

 

 

不思議の国のアリス(@新国立劇場)

不思議の国のアリス(@新国立劇場)を観ました。観たのは11/3の小野さん主演日です。感想は、楽しかった!そして、本島さんファンも、ファンじゃない人も、ハートの女王のタルトアダージオは必見!です。

タルトアダージオは、3幕で披露されるダンスです。ハートの女王が4人のトランプたちを相手に踊る、眠れる森の美女のローズアダージオのパロディ。演技力抜群の美人ダンサー、本島さんならきっとやってくれると思っていましたが、期待にたがわぬ舞台を見せてくれました。

3幕で、大きなセットのような赤いドレスに包まれて登場するハートの女王。みた瞬間、その大きさに驚きます。そしてセット的な真っ赤なドレスがパカッと真ん中から割れて、出てくるのは赤いチュチュに赤いタイツ、赤いトウシューズを身にまとったハートの女王です。セット的な女王が脱ぎ捨てた(?)ドレスの中には、ハートの王が縮こまって隠れていました。この家庭は、かかあ天下らしい。ちなみに1・2幕で女王が登場したときのセット的な赤いドレスは、3幕のものより大きさが小さかったです。(当然、ハートの王はドレスの中に入っていません。)

あたりを睥睨して、ハートの女王が踊りを始めようとします。ところが相手役のトランプ4人は、ガタガタと震えて女王の相手をすることに腰が引けてます。粗相をして首をちょん切られてしまっては・・・とビビる気持ちも分かります。互いに「お前が先に行けよ」「いや、お前が」という感じです。「しょうがない、俺が先にいくよ」と意を決して1番手になり手を差し出したものの、うなだれ方がすごい。そんなうなだれなくても・・・。元ネタのローズアダージオでは、気品を持ちつつもお互いけん制しあって、オーロラ姫の相手を我先にしたがる4人の求婚者とは大違い。

11/3の4人のトランプは豪華メンバーで、奥村君、井澤君という主役級ダンサーと、もう一人は小柴君かな?、あともう一人は誰だろう(最初、渡邊君と思いましたが、やはり違うと思う)無駄に豪華というか、格の高い本島ハートの女王の相手役ならこのメンバーで当然かという気もします。新国が推すダンスールノーブルたちがビビり役を演じるのは(おそらく)めったにないことなので。ここも必見ポイントです。

本島ハートの女王は、怖い女王の雰囲気を漂わせて、トランプを相手に踊り続ける。女王が怖いトランプはまともにサポートが出来ず、女王はバランスを崩したり、尻もちをついたり。リフトされたかと思うと、カエルみたいに足を曲げ、お尻を見せたり。無様な恰好ばかりで、ちっとも美しいポーズを見せません。ですがそんな変なダンスを踊り続けても、醜悪にも下品にもなりません。女性ダンサーが踊っているからか、美人ダンサーが踊っているからなのか、やり過ぎにならないような振付になっているからなのか。

ローズアダージオと違い、タルトアダージオでは女王はミニタルトを男性陣からもらいます。一口食べて「あら、おいしい」、また食べて「あらやだ、歯の間につまっちゃったわ」と台詞が聞こえてきそうな変顔が続きます。といっても変顔・変ポーズだけでなく、アティチュードバランスもしっかりきまって、ただのドタバタ場面ではないのです。

そして、本島ハートの女王が「首をちょん切っておしまい!」の変顔(?)を見せ、拍手喝采でタルトアダージオは終わります。変顔をいとわない美人演技派ダンサー、本島さんのタルトアダージオ、楽しかったです。

ドンドンドンドンという打楽器のリズムがなり、金管の緊迫感をあおるメロディが印象的な、トランプたちが踊る群舞。カッコよかったです。そんなに難しい踊りを踊っているわけではないんですが、女性陣のスタイルの良さが目を引いて、何だか目が離せません。

トランプの女性陣のチュチュがハートやスペードなど4種類のマークの形になっており、回転をするとそのチュチュが不思議な軌道を描きます。変な遠心力が働きそうですが、踊りにくくないのでしょうか。ヒラヒラしすぎないチュチュの作りで、かえって踊りやすいということもあるかもしれない。

パソコンの調子が悪いので、とりあえずここでお終い。ほぼ本島さんのハートの女王の感想しか書いてないな・・・。 

オネーギン(@東京文化会館)

ドラマチック・バレエの傑作「オネーギン(シュツットガルト・バレエ)」を観ました。マチュー・ガニオがオネーギン役として客演するので楽しみにしていました。感想を一言でいうと、見ごたえのあるドラマを観た!です。

エリサ・バデネスのタチヤーナはおしゃれより小説を読むことを好む、夢見がちな少女。そんなタチヤーナの前に現れた憂鬱な雰囲気を漂わせたマチュー演じるオネーギン。憂鬱な表情を見せていても、黒いタイトな衣装を身に着けた長身のマチューのカッコいいこと!タチヤーナは、都会的でスッとしたオネーギンにポーっとなってしまいます。

二人が最初に踊るパ・ド・ドゥ。嬉しくて笑顔をみせているタチヤーナとはうらはら、オネーギンは心ここにあらず、眉根にしわを寄せ、自分の憂鬱な感情の中に入り込んでいるという感じです。チラッともタチヤーナを見ないし、視線も合わせない。タチヤーナよ、ここで目を覚ませ、相手はあなたのことをまったく見てないよ、素朴な田舎の人々とは異質なオネーギンに、幻想を見ているだけなんだよと突っ込みたくなります。

オネーギンへの恋心が募り、手紙をしたためるタチヤーナ。いつしか寝入り、タチヤーナは夢の中。見どころの「鏡のパ・ド・ドゥ」が始まります。

鏡に映った自分の姿に、オネーギンが優しく近づき、それに驚くタチヤーナ。びっくり眼のタチヤーナは、まだどこか幼さが残る少女です。

夢の中のオネーギンは、昼間会った現実のオネーギンとは違い、笑顔を見せてタチヤーナと楽しそうにパ・ド・ドゥを踊ります。夏のバレエフェスでマチューが老けたように見えましたが、今回は老け込んで見えません。オネーギンで輝く笑顔を見せるマチューは、やはりカッコいい。バレエフェス時は夏バテしていてお疲れモードだったのかも。

夢の中でオネーギンとうっとりするような時を過ごし、タチヤーナはますます恋心を募らせてしまう。鏡のパ・ド・ドゥに使われている音楽は終幕の手紙のパ・ド・ドゥと同じですが、木管と弦楽器で穏やかに演奏される旋律はロマンチックで、終幕の激情とはかなり印象が違います。タチヤーナの恋心が高まり、この恋に希望があるかもという明るい結末を予想させます。

が、次のパーティの場で、タチヤーナの明るい希望は打ち砕かれることに。

パーティ会場でオネーギンは平静そうに装っていますが、イライラ感が漂っています。人がはけたところで、オネーギンはタチヤーナに手紙のことを問いただす。オネーギンのとげとげしい態度に困惑し、恋心を訴えるタチヤーナ。そんなタチヤーナに、(お嬢ちゃんの恋愛ごっこには付き合ってられないよ)という呆れた感じで空を見上げるオネーギン。そしてビリビリに破いた恋文を、タチヤーナの手のひらの上に降らせます。この時のタチヤーナの顔!思ってもみない酷い態度をとられた悲しみ が溢れていて、自分の感情を瞬時に隠すこともできない素朴な田舎の少女という感じが良く現れていました。

その後、タチヤーナの心をズタズタにしても気が晴れないオネーギンは、パーティでオリガにちょっかいを出しまくります。それを見てキレたオリガの恋人レンスキーと決闘することに。決闘で友人レンスキーを射殺してしまったオネーギンは激しく動揺し、2幕が終了。ここの決闘の場、色彩を押さえて影絵のような演出になっているところが、他の場面の華やかさと対照的で、意外と好き。

3幕は2幕から数年後という設定です。グレーミン公爵のパーティにやってきたオネーギン。髪に白いものがたくさん混じり、2幕から数年後のオネーギンには見えません。10年後といっていいくらいなのでは?友人を射殺してしまったショックが、一気にオネーギンを老けさせたという設定でしょうか。

都会的なパーティで華やかな人々が踊るダンスは、2幕の片田舎の家で行われたパーティのダンスより洗練されています。屋敷内も豪華な感じです。すっかり老け込んだオネーギンは、グレーミン邸のパーティでは悪い意味で場違いな感じ。1,2幕の田舎の人々がいる場で、洗練された都会的な姿が際立って目立っていたのとは対照的です。

華やかで楽し気な人々の中で所在無げなオネーギン。そんな中、知的で洗練された雰囲気を漂わせる美しい女性が登場します。かつてオネーギンに恋心を募らせ、酷くふられたタチヤーナです。かつての素朴で夢見がちな文学少女の面影はすっかり影をひそめ、周りの人を魅了せずにはいられない落ち着いた気品と美しさ。オネーギンはタチヤーナの虜となります。

私室で一人悩むタチヤーナ。手元には手紙、オネーギンからの恋文があります。一体、オネーギンは人妻である自分にどういうつもりでこんな手紙を、というタチヤーナの思いが伝わってきます。そこにはかつて思いのたけを手紙に書いた素朴な少女の面影はまったくなく、落ち着いた大人の女性がいます。

そして今度は思いのたけを伝えずにはいられないオネーギンが、思い余ったようにタチヤーナの私室に入ってきます。タチヤーナとオネーギン、突き動かされる思いに支配される人物が3幕では1幕と逆転する。

オネーギンの手紙に困ったことと思っていたはずのタチヤーナ。ですが、這いつくばってタチヤーナの愛を乞うオネーギンを見ると、冷静ではいられなくなります。一方のオネーギンも、あの人生に飽いたような人物が、無様な姿で愛を訴える人物に変貌しています。友人の射殺を経て一度死んだ心が、成熟したタチヤーナと邂逅し、新たに生まれ変わったのでしょうか。(いやいや、オネーギンも年をとって前頭葉の働きが悪くなり、抑制が効かなくなったという可能性もありえます、ちっともドラマチックじゃないけど。)

徐々にオネーギンの熱い訴えにタチヤーナの心は傾いていきます。鏡のパ・ド・ドゥと同じ旋律が、今度はフルオーケストラで激しく舞台を盛り上げます。寄せてくるような激しい旋律は、タチヤーナの心の中の嵐を表しているよう。タチヤーナの心はかなり揺れ動き、もみくちゃになっているような二人は、相当程度オネーギンのペースになっています。タチヤーナはこのまま流されていくのでしょうか。感情の奔流に流され、理性は感情の奴隷になるのでしょうか。

オケの高らかな金管の音がなります。タチヤーナが正気に戻ったのか、オネーギンの激情に流されるように見えながら、最後に理性でオネーギンを拒みます。理性を保ち、オネーギンからの恋文をビリビリに破るタチヤーナ。タチヤーナの拒絶にショックを受け、退散するオネーギン。

タチヤーナはオネーギンの恋心を粉々にし、自分のオネーギンへの恋心も完全に封印して、現在の自分のあるべき場所で生きていこうとします。顔を覆って、心を引き裂かれるようなつらい涙を流すタチヤーナ。それは、慎み深く思慮深い大人の女性が嗚咽する姿でした。

ドラマチックな舞台で、結末は知っているけれど、3幕はハラハラドキドキ。最後は涙が出てきました。周りの席の人でも目頭をぬぐいながら観ている人がいましたね。みんな何を思って涙を流したのか分かりませんが、単純にオネーギン可哀そう、タチヤーナ可哀そう、舞台に感動したという涙ではないはず。「オネーギン」は若い人が観ても楽しめる作品ですが、人生を重ねた人にはより一層楽しめる作品だと思います。この作品から何を受け取るかは人それぞれ。再度言いますが、充実して見ごたえのある舞台でした。

 

 

 

 

 

 

 

燕岳②

燕山荘でケーキフェア。喫茶サンルームでケーキセット950円(飲み物1杯、ケーキ1個)を注文すると、おかわりのケーキが200円/個でいただける。注文をするときに、喫茶室内以外で食べるのはダメとか、喫茶室を一度出たらそこで終了とかの注意事項を説明されます。

飲み物は紅茶にして、最初のケーキはりんごのキャラメルケーキを選んでみました。思ったより甘くて、一つ食べ終わったらちょっともう、追加のケーキはいいかなという気分になりました。ですが周りの人が食べているモンブランやニューヨークチーズケーキを見ると、やはりもう一つぐらい食べてみたいという気になります。

食べ終わったケーキの皿を受付に持っていって、追加の200円を支払います。追加はニューヨークチーズケーキ。早速食べてみると、こっちも町中で売ってるものより甘めな気がします。体内の塩分濃度が低くなっているから、余計甘く感じているのか、元々甘めのケーキなのか?しょっぱいものが欲しい・・・。

結局ケーキは2個でギブアップしました、3個目に抹茶のロールケーキを食べておいた方が良かったかもという多少の後悔を残して。

食後は、腹ごなしと野生動物探しを兼ねて、燕山荘の周りをウロウロ。燕岳に行く途中、雷鳥に遭遇しないかと期待していましたが、期待は空振り。燕山荘のそばを歩いていても、雷鳥には巡りあえませんでした。そのかわり、ホシガラスが1羽いました。すぐそばに人がいるのに、餌を探しているのか熱心に地面を嘴で掘っているホシガラス。都会にいるハシブトガラスと違って、可愛くみえます。

部屋に戻り一人で過ごしていると、向かいのスペースの人たちの話が聞こえてきました。「ブロッケン見たの初めて!感激!」なに?ブロッケン現象が見えるって?それは行かなくては!と思い、テラスに出てみると、雲が広がった先にブロッケン現象が現れていました。

燕山荘テラスから見えたブロッケン現象は、剱御前小屋で見たものよりも、大きな環に見えます。その虹色に輝く輪の真ん中に、後光が射したような自分の影が映っています。ブロッケン現象って、何度見ても神秘的です。

そばにいた単独行の女性の話によると、その女性はこの日、燕岳頂上、北燕岳頂上、戻ってきて燕山荘テラスの合計3か所でブロッケン現象を見たのだとか。午後になると山の天気は崩れるので、早めに山小屋に入ることにしておいたのですが、もう少し遅い時間に行っていれば、山頂でブロッケン現象が見られたかもしれません。まぁ、いいか。

ブロッケン現象を楽しんでいると、あっという間に夕飯の時間、4:30近くになりました。急いで食堂に行こうとすると、1階の階段から2階の廊下にかけて行列が出来ています。これは、食堂開店を待つ人々の行列?と思ったら、当たり。みんなやることないので食事の時間が待ち遠しいらしい。

この日の夕飯メニューは、白米、赤みその味噌汁、とろとろチーズ入りハンバーグ、煮魚、ポテサラ、プチトマト・スライスきゅうり添え千切りキャベツ、海藻サラダ、玉ねぎ入りキャロット・ラペ(?)、デザートの杏仁豆腐。ちょうどチーズ INハンバーグ(@ガスト)を食べたいと思っていたら、燕山荘の夕食にチーズ入りハンバーグが出ました!夕食時はおなじみ、オーナーのお話しとアルプホルンの演奏(ついでに燕山荘オリジナル饅頭の宣伝)を聞いて終了です。

夕飯後は雲海と夕日の鑑賞の時間です。夕暮れ時には槍ヶ岳側の雲はすっきりと無くなり、夕焼けを背景にシルエットになった槍ヶ岳がくっきりと見えました。槍ヶ岳って、シルエットになってもかっこいい。

夕日がすっかり沈んで、辺りが闇に包まれたら、今度は星空の出番です。夕飯時に同じテーブルの人に聞いていたのです、今日は流星が見られるはずだと。というわけで、星空を一通り眺めたらすぐさま部屋に戻ることはせず、寒い中、しばらく夜空を眺めていました。

すると、ヒュッと短く、星が流れていきました。あっという間に流れて消えて、あの短さでは3回も願い事を唱える暇はない。その後20分位、流れ星を待っていましたが、見られず。

翌朝、ご来光を見るために4時過ぎにテラスに行ったら、流れ星が1回見られました。そして前夜のようにしばらく次の流星を待っていましたが、その後も見られず。流星のピークはその日の午前9時と聞きましたが、他の時間帯ではジャンジャン流れ星が見られるわけではないようです。といっても流れ星を見るのは初めて、しかも2日連続で見られたのだから良いのかも。

夏場ではないので、さすがに4時過ぎでは辺りは夜の気配が濃厚です。星空は前夜よりよく見えましたが、8月中旬に五色が原で見た時より、星が遠くに見えます。降るような星空という感じではありませんでした。季節の移り変わりのためなのか、場所が違うからなのか?

いったん部屋に戻り、5時過ぎに再びテラスに出ると、すでに結構な数の人がご来光見学のために集まっています。目の前には雲海が広がり、濃い藍色からグラデーションになって徐々に曙色に変わっていく空に浮かぶ下弦の月がきれいです。絵になる景色。

そしてこの日はきれいな日の出を見られました。眼前に広がるもくもくとした白い雲海、反対側の槍ヶ岳は朝日を浴びてうっすらと赤くなっていました。

下山時も天気が良く、槍ヶ岳は青空を背景にしてきれいに見え続けました。この日、表銀座を縦走した人たちは、きっと気持ちが良かったことでしょう。

下山で高度を下げていくと、槍ヶ岳も雲海も見えなくなり、特別な空間から日常の世界に戻ってくる感覚が強くなってきます。天気がいい日だったので続々と登ってくる登山者とすれ違います。日常に戻っていく自分と比べ、これから素晴らしい景色に遭遇する人たちが羨ましくなります。

下山後は燕山荘グループの有明荘へ。有明荘の温泉で汗を流して、昼食をとり、帰りのバスを待ちます。有明荘食堂ではスイスワインが置いてあり、ワイン好きの人にはお勧めなのだとか。敷地入り口に植えられた有明もみじは、部分的に赤く色づいていてきれいでした。

ところで有明荘の立ち寄り温泉は半額で入浴することが出来ました。

遡ること前日の燕山荘、有明荘の入浴割引券をもらおうと、フロント辺りでうろついていましたが、どこにも割引券が置いてありませんでした。スタッフの人に有明荘の入浴割引券をもらおうと声をかけると、すかさず「クラブ燕山荘に入会すると、入浴料が半額になって割引券を使うよりお得ですよ。」

ポイント10個ためると1泊無料になるとか、有効期限は10年だとか、会費はかからないとか聞いてしまうと、つい心が動いてしまい、その場でクラブ燕山荘に入会してしまいました。去年宿泊した時も思いましたが、燕山荘のスタッフって営業熱心、かつ、客の心を機微を良く分かっています。

帰りのバスは八ヶ岳の美濃戸口を経由して、新宿へ。祝日だったので高速は混み、一般道に下りたり、また高速に入ったりで、19:30過ぎに新宿に到着しました。バスの途中休憩を除いて、6時間以上バスに乗っていたので疲れました。来年、表銀座縦走する(予定)時は電車で移動しようと決意して、今回の燕岳登山は終了です。

燕岳①

10月の3連休は燕岳に行ってきました。燕山荘のケーキフェアでケーキを食べ、ブロッケン現象と流れ星を見ることが出来ました。

今回の登山で利用したのは、毎日あるぺん号で土曜深夜に竹橋を出発し、翌日早朝に中房温泉の燕岳登山口に到着、燕山荘で1泊して、バスで新宿まで帰ってくるというプランです。深夜出発のバスは7月に行った尾瀬バスツアーで懲りたはずですが、毎日あるぺん号はどんなものかと性懲りもなく乗車です。

出発の23時の15分前から受付開始ということで、22:30頃には竹橋に到着。毎日新聞社ビルB1は閑散としていましたが、受付の1Fに行ってみると、いるわいるわ、登山の格好をした人々が。

3連休は台風25号の影響がどの程度になるのだろうかと、何日も前からやきもきしていて天気予報をチェックし続けていました。が、登山することになる日曜日はそれほど悪影響がなさそう。内心台風が不安になりつつ竹橋に到着したわけですが、同じく台風は大丈夫そうと判断した人たちがわんさかここにいるようです。

出発時間になり、バスに乗車。今回のバスは中型バスです。尾瀬の時は小型バスで前後左右の間隔が狭く、道路の凹凸をいちいち拾ってガタガタと眠れたものじゃありませんでした。中型バスならもう少し快適かもと期待していると、前後左右は小型バスより広く、ガタガタと振動がひどいということもありませんでした。そうはいってもやはり普通の観光バスなので、眠りが浅くなります。

バスは翌日4:30頃に常念岳の登山口にあたる一ノ沢林道に到着しました。夏ならこの時間帯ならうっすら明るいものですが、秋のこの時期、辺りは真っ暗です。駐車場にはわりと自動車が停車しているように見受けられます。狭い道路を通行して一ノ沢林道終点で下車する乗客を降ろし、ここを抜けて次の目的地、有明荘前に出発です。

ですが狭い道路の幅いっぱいの中型バスは、駐車場に自動車がけっこう駐車していることもあり、方向転換が出来ません。そしてバックして狭い道を抜けようとするにも、辺りが暗くてスムーズにバックできません。そんなわけでバスが一ノ沢林道終点から抜け出るのに一苦労したため、燕岳登山口に到着したのは予定よりやや遅れた5:45頃となりました。

燕岳登山口に到着すると、思ったよりも人がいます。同じバスで来た人だけでなく、グループや単独の個人登山客が既に20名以上はいたでしょうか。朝食をとって、登山案内所(?)に登山届を提出し、6時過ぎに登山開始です。ところで登山案内所(?)のような小さな建物(6時前には係員の方が出勤していました)はいつの間に出来たのでしょう。去年来たときは気づきませんでしたが、去年もあったっけ?

燕岳への道は登山開始直後から急登が始まります。燕岳までの道で難しいところが無いのは、去年参加した燕岳登山ツアーでチェック済み。ですが、深夜発のバスでよく眠れなかったため、身体が重いです。紅葉している木もあり、楽しそうに写真を撮っている登山グループもいましたが、紅葉を楽しむ余裕もなくバテバテ。やたらと疲れながら、すでに西瓜の販売は終わった合戦小屋まで登っていきました。来年は、表銀座を縦走したいと思っていますが、毎日あるぺん号で中房温泉登山口まで来るのはやめとこう・・・(安さに負けて毎日あるぺん号にしてしまうかもしれないけれど)。

ところで台風の影響ですが、道中雨は降られず。そして稜線に出るまでは木々がブロックしてくれて風の影響もなし。稜線に出たら風が吹いていましたが、登山に支障をきたすような風速でもなし。空は多くの雲が出てて合間から青空が見えている、寒くも暑くもない天気です。そんなわけで、寝不足でバテてはいるものの、10時には燕山荘に到着しました。

燕山荘に到着したら、チェックインしてザックを置かせてもらってから、アタックザックで身軽に燕岳まで行こう。というわけにはいきませんでした。宿泊の受付は出来るものの、11時過ぎにならないと部屋の案内は出来ないといいます。しかも今受付をしてしまうと、夕食は一番早い4:30の回になってしまうと。いま受付を済ませるべきか、迷う・・・。3連休の中日で天気も悪くなく、多数の宿泊者が見込まれ、受付が遅れて去年泊ったような大部屋に案内されるのも嫌だし・・・。

受付は保留しておいて燕山荘の外に出ると、ベンチ近くにいくつもザックが置かれています。どうやら最少の荷物で燕岳に行っている人たちがデポしているザックのようです。それでは自分もと、アタックザックに貴重品と飲み物を入れて宿泊受付は後回しにして、燕岳に向かうことに。

白い花崗岩のさらさらとした道を歩く。雲の間から漏れてくる陽の光が白い花崗岩に反射して、まぶしい。風雪に侵食された奇岩は、堅い岩石のずっしりとした重量感、人を寄せ付けない雰囲気のものに比べてどこかユーモラスです。

もう少し晴天だったら、青空、白い花崗岩、緑のハイマツのコントラストで見ごたえあっただろうなと思いながらハイキング気分で歩いていると、あっという間に燕岳に到着です。山頂には標識は立っておらず、表面が平らな石の上に「燕岳頂上2763m」と刻まれています。ちょうどその石の隣で皆さん記念写真を撮るらしく、座るのにちょうどいい感じに山頂部が平らになっています。

山頂からは晴れていれば360度の展望があるのですが、雲が多い日だったので遠くの山々は全く見えません。燕岳のごく近くの北燕岳は良く見えます。北燕岳頂上に立っている人が見えます。ちょっと足を延ばして北燕岳まで行こうかという気にもなりましたが、コマクサが咲いている季節でもないので止めておきました。夏だったら北燕岳に行くまでの間に白いコマクサが咲いているというので、白コマクサ見たさに足を延ばしたかも。

一人で歩いていると、同じく単独行の人と自然に話しをし始めます。他の人のプランを聞くのが楽しい。

山頂で出会った若い女性は、これから大天井岳まで行き、翌日に槍ヶ岳に登る予定とのこと。すごいなぁ。単独行の年配男性は、自家用車で埼玉の自宅から夜に出発し、5:30に到着して登りはじめ、この後燕岳登山口まで下山して埼玉の自宅に日帰りするといいます。燕岳って埼玉から日帰りで登りに来る山なんだ!と驚きました。

燕山荘に戻ると11時を過ぎているので、受付を済ますと部屋に入れます。受付のスタッフさんに顔を覚えられていて、「今からの受付だと、まだ4:30の夕飯なんです。」と申し訳なさそうに言われましたが、夕飯4:30でいいやと受付を済ませます。

通された部屋は山小屋によくある2段式のもの。1階部分のスペースを割り当てられ、3畳に布団が3枚敷いてあります。混雑が予想されるので一人半畳になることもありますと案内役のスタッフさんに言われましたが、最終的には4人で使用できました。きつきつで寝ることにならなくて良かった!

割り当てられた部屋はどうやら女性専用に仕切ったブロックだったようで、隣や上、向かいのスペースに男性が宿泊していることはありませんでした。窓からは正面に燕岳が見えます。向かいの部屋の窓からは天気が良かったら、もしかしたら槍ヶ岳等が見えるのかも。到着順に部屋を案内してくれるので、良い立地の部屋を案内してくれたのかもしれません。食堂からは少し遠いですが、窓から燕岳を見られるのは素敵です。

さて、燕山荘のHPには10/3までと載っていたケーキフェア。10時過ぎに受付に行ったときに、「本日ケーキフェア開催」のお知らせを見逃しませんでした。燕岳に登っている時も、燕山荘に戻ったらケーキを食べるんだと心に決めていました。というわけで、部屋にザックを置いたら、さっそく喫茶サンルームに向かいます。

つづく。