コンテンポラリーはやはりよく分からない

ザハロワの「アモーレ」(@オーチャードホール)に行ってきました。

事前にHPに載っている作品の解説を読まずに行ったので、白紙の状態で観ました。観ていて伝わってくることも、何を表しているのか分からないこともありました。

1作目は「フランチェスカ・ダ・リミニ」。

座って本を読んでいるザハロワのすぐそばにミハイル・ロブーヒンがおり、ザハロワの後方にそっとザハロワを見つめるデニス・ロジキンがいます。ロブーヒンが去った後、ザハロワとロジキンのパ・ド・ドゥが始まります。動きの速いリフトあり、ザハロワのラインの美しさをたっぷり堪能できる振付あり、感情を抑えられず交わす口づけあり。

恋人同士を描いている場面のはずですが、二人とも逢瀬をあからさまに楽しんでいる雰囲気ではない。禁断の愛っぽい感じがします。二人のパドドゥを観ていて、以前みたザハロワの「トリスタンとイゾルデ」をまた観たいとぼんやり考えていました。

と、恋人同士の逢瀬の最中、それを目にしたロブーヒンが怒りを爆発させます。ロブーヒンがザハロワの夫役で、ロジキンは不倫相手役なのだなと、ここでやっと分かりました。ロブーヒンの踊りが激怒をよく表現していて、全身からメラメラと怒りの炎が上がっているかのように見えました。怒りのあまり、ロブーヒンは二人を亡き者にしてしまいます。

帰宅してHPの解説を読むと、この作品はダンテの「神曲」地獄篇を元にしているとあります。ザハロワ演じるフランチェスカと夫の弟ロジキン演じるパオロは惹かれ合い、ロブーヒン演じるフランチェスカの夫ジョヴァンニがそれを知り、恋人同士を殺してしまう、と。なるほど、なるほど。細かい設定は分かりませんでしたが、大筋は間違って受け取っていなかったようです。

ちなみにWikiで「フランチェスカ・ダ・リミニ」を検索すると掲載されている絵が、「あ、この絵、知ってる。」何の場面を表しているのか今まで分かっていませんでしたが、ダンテの地獄篇を題材にした絵だったのか、と一つ知識が増えました。

2作目はパトリック・ド・バナ振付の「レイン・ビフォア・イット・フォールズ」。

こういう完全なコンテンポラリーは、本当によく分からない・・・。動きは面白いのですが、何を表現しているのか分かりません。そして、眠くなる。

紫色の衣装が美しいザハロワなのですが、腕を奇怪な動きにするところから内面のドロドロを表現しているようには見えます。舞台の端に座ったままのデニス・サーヴィンは気になるけれど、その存在も何なのか分からない。

と、思ってぼーっと観ていたら、いつの間にか寝てしまい、ハッと気づいて起きたらザハロワがテーブルの上にうなだれた格好で座っています。ん?と思ったら、演目終了。

「ブラボー!」と歓声をあげる観客もいて、拍手もすごい。寝落ちしていた間にすべてが終わっていました。

解説によると、「部屋、女、二人の男、愛、三角関係、調和、欲望、敗北、孤独、虚無」。そんなものを表していたのか。暗いトーンだったし、そんな内容なら寝落ちするのも無理はないです。

3作目は「ストロークス・スルー・ザ・テイル」。

とてもユーモアのある作品で、面白いザハロワが見られました。一人の動きが次の人に伝染し、また次に伝染し、を繰り返したり、ザハロワの衣装に似た衣装を男性ダンサー陣が着替えてきたり、男性ダンサーの動きが軟体生物のようだったり。面白い作品ですが、しっかりした技術を持つダンサーが踊っているので、変に下品だったり、ばかばかしかったりしません。観ていてクスッと笑える作品でした。

解説では振付家が「観た人が軽やかな気持ちで、嬉々として帰ってほしかった。」とコメントしています。振付家の意図通り、軽やかな気持ちになりました。

今回の公演は姫じゃないザハロワ3連発でした。1作目はザハロワらしい踊りを楽しめ、2作目、3作目はいつもとちょっと違うザハロワを味わえました。テクニックやラインの美しさではなく、ザハロワの表現力を味わいたい人なら存分に楽しめるラインナップだったのではないでしょうか。