紅葉トンネルの至仏山

尾瀬ケ原・至仏山ツアーの2日目は至仏山登山です。

朝食は5:45で設定されていたので、朝食前に湿原の方に行ってみました。あと少しで日の出という時間帯で、湿原は朝ぼらけの中。前日夜が曇りで、それ程気温が下がらず放射冷却されなかったため、朝靄は見られませんでした。

さあ、もう山小屋に帰ろうと思ったら、同じツアーの人たちがやって来ました。ご一緒してもう湿原にいたところ、日が昇ってきたようです。空は雲で覆われ、日の出は見えませんでしたが、雲の端々が朝日でかすかに赤く染まっています。そして湿原の草紅葉を見たら、さっきより赤い。朝日に照らされて赤みが増して見えます。昨日も湿原に着いたばかりと、夕暮れに向かう陽の光のなかでは違う色に見えた草紅葉でしたが、日の出前と朝日を浴びた草紅葉ではまた色合いが違います。同じ場所でも陽の光の加減によって違う表情を見られるのが楽しい。

急いで山の鼻小屋に戻ったら、隣の尾瀬ロッジの前にはたくさんの人が出発の準備をしていました。山の朝は早い。我々ツアー一行も朝食をとったら、6:30に集合、出発です。

2日目は昼から天気が下り坂とのこと。濡れてなくても滑りやすい蛇紋岩の岩場は、雨が降り出す前に切り抜けたいな、と思いながら至仏山への道を進みました。

1日目の鳩待峠から山の鼻まではそれ程紅葉を楽しめる感じではありませんでしたが、2日目の至仏山登山道は左右の木々が作る紅葉のトンネルが楽しめました。すべてが紅葉しているわけではなく、緑も木もあり、紅葉の色も明るい茶色、赤、黄と色とりどりできれいです。ピィーと聞こえるのは、鳥の声か、鹿の声か。

登山道から振り返ると、草紅葉の尾瀬ケ原と燧ケ岳が目に入ってきます。燧ケ岳の頂上や尾瀬ケ原がガスに覆われたり、しばらくするとガスがなくなったり、またあっという間にガスが湧いてきたりで目まぐるしい。曇り空の下でも尾瀬ケ原の池塘が鏡のように見えてきれい。湿原を見下ろすのにちょうどいいベストなところにベンチが設置してあるのが親切です。

 至仏山頂上へ向かう道は、木道と木の階段と大小の岩。大小の岩がいくつもゴロゴロしているところは規模や岩の質は違えど、筑波山っぽい。木道や木の階段は順番に更新しているとのことで、破損している部分も。表面がプスプスとうがったようになっているのは、アイゼンで傷つけられてしまったためらしい。

森林限界を超えたら、岩の上に一羽の鳥が見えました。ホシガラスとのことです。ハシブトガラスのようにカーカー大声で鳴くこともなく、静かな鳥でした。

登り切って至仏山頂上に到着。下界はガスで覆われています。頂上間近で見えた、登山道とは比べ物にならない位のゴツゴツした岩で構成された山肌を写真に収めようと思っていたのに、ガスで見えなくなっちゃったじゃないか。

サクッと¥「」お弁当のおにぎり1個を食べて、雨が降り出さないうちに早めの出発。小至仏山までの稜線歩きは、天気の良い日だと気持ちよさそうです。といっても、至仏山への登りではそれほど気にならなかった蛇紋岩が、小至仏山に向かう道ではその威力をいかんなく発揮していました。

表面がツルツルな大きな岩があり、一体どこに足を置けばいいのか。無理に足場を見つけようとせず、これはお尻で滑った方が合理的では?いくらなんでもツルツルすぎるだろう、という岩がいくつも出てきます。小さな岩も油断なりません。ぬれてなくても滑るのだから、雨の時はかなり怖いはず。

至仏山に登頂したら、いよいよ雲行きが怪しくなってきました。山頂も狭いし、雨が降りそうだしで、ここでもゆっくりできません。鳩待峠に向けて下って下って下りまくれ。

オヤマ沢の辺りは湿原が広がり、雨が降りそうな天気のためか、湿原の上に靄がかかっていて幻想的。靄がたちこめる尾瀬ケ原ってこんな感じだったのかも、と朝見られなかった朝靄もどきを思わず見られて、なんだか得した気分でした。

途中、赤く紅葉したチングルマの葉がそこ、ここにたくさん生えていました。チングルマって、花弁が落ちた後の白い綿毛にもこれがチングルマ?と驚きますが、葉の紅葉の鮮やかさにも驚かされます。

さらに下って、鮮やかな紅葉が目に入る開けた場所にさしかかりました。やはりベストスポットらしく、ベンチが設置してあります。天気が良ければ、きっとここら辺でいい景色が広がっていて、小休憩もできたんだろうな。

至仏山への登りと違い、小至仏山から鳩待峠に向かう登山道に設置されている木道や木の階段は、比較的新しいものが敷かれていました。木道や木の階段の端にはTEPCOのマークが刻印されていました。普段すっかり忘れてますが、尾瀬の多くの部分は東電が所有しているんですよね。国立公園の維持管理費が国から全額助成されているのか、一部の補助なのか知りませんが、わざわざTEPCOと刻印しているぐらいだから、全額国費負担というわけではないのでしょう。新しめの木道は、登りの崩壊しかかった木道・階段より歩きやすかったです。東電、ありがとう。

木道を下っているとポツリポツリだった雨が、ポツポツとした雨に変わってきたのでカッパを着こみます。カッパを着ると、とたんにうつむきがちになってしまう。フードがいけないのだろうか、首の動きを妨げているような気がします。

周りの景色を楽しむ余裕もなく、樹林帯に入っても雨は止むどころか強くなっていきます。ツアー一行はひたすら鳩待峠を目指して、黙々と歩き続けます。雨って本当にテンション下がる・・・。

やっと鳩待峠に着きました。鳩待峠の方が登山道より雨が強い気がします。樹林帯では木によって雨が遮られていたのかな。あとはバスに乗り込み、立ち寄り湯(望郷の湯)で汗を流してさっぱりするだけです。

ふう、1日目の尾瀬ケ原は天気が良くて最高でしたが、2日目の至仏山は景色の美しさを堪能することが出来ず少々残念でした。蛇紋岩地帯で雨に降られなかったので、良しとしますか。