くるみ割り人形10/28①(@新国立劇場)

新国立劇場で「くるみ割り人形(イーグリング版)」を観てきました。

今回の版のくるみ割り人形は、新国立劇場バレエ団の2017/2018シーズンのオープニング作品で初演。筋は従来のくるみ割り人形と大きく変わっていません。が、振付が難しかったり、新たなキャラクター付けがありました。あまり期待してませんでしたが、面白くて満足しました。

キイーグリング版には謎の配役があり、キャスト表に「スケートをする人々」、「詩人」、「青年」、「蝶々」。頭に「?」が浮かびます。くるみ割り人形にこんな役の人っていたっけ?疑問を感じながら観劇開始です。

幕が開くと、まずセットが美しくて感激です。クリスマスパーティーに参加する人達がクララの家を訪れる場面では、セットと背景がうまく融合し、舞台に奥行きが感じられます。クララの家は川沿いに建っているようで、隣接した凍った川でスケートをする人がちらほら。「スケートをする人々」とはこれのことか。

イーグリング版ではクララもフリッツもその友人たちも、みんな本当の子供が演じます。大人が子供を演じている無理やり感がなくて良いです。一方で、大人のダンサーが一切いない、子供だけのソロや群舞の場面は物足りなさも感じました。

ドロッセルマイヤーはなぜか顔を白塗りしてます。ロココ風の髪型をしている(かつらを被っている設定?)から、その時代をまねて白塗りなのだろうか。ドロッセルマイヤーが子供たちにプレゼントを贈るのではなく、サンタクロースの起源である聖ニコラス役が出てきていました。

イーグリング版では、ドロッセルマイヤーが出す人形が踊る演出はありませんでした。仮面付けてキルト身に着けて踊っている役の人がいたり、女性1人男性2人のトロワで踊ったりする役の人がいたりしました。謎の役、「詩人」と「青年」は、この場面で踊っていた人たちのことなのだろうか。

パーティーが終わり、クララの夢の中。12時になると、クララとねずみの王様の戦いが始まる場面です。

時計が自然に12時になるのではなく、ドロッセルマイヤーが長時計の中から出てきて、針を12時に合わせます。ギャグっぽくて、なんか普通のくるみ割り人形と違うぞ?

ここで現れたクララは主役の小野さん。夢の中だから大人の姿になったということなのでしょう。クララは兵隊に協力して、ねずみやねずみの王様と戦います。騎兵隊長役の原君の踊りが清々しい。仮面をつけたくるみ割り人形とクララの踊りも、仮面のせいで視界の制限があるなか、リフトがあったり、やはり振付が難しめ。

そして何よりねずみの王様の振付の難易度が高い!普通の版では、ねずみの王様はラスボス感を漂わせるだけで、踊り自体はそれ程難しいことはしません。ですがイーグリング版では、ねずみの王様が踊る、踊る。さらに、くるみ割り人形やクララを、振りや態度で小馬鹿にして、観ていて小憎らしい。踊りの高い技術だけでなく、演技力も必要とされる役になっていました。ねずみの王様を演じているダンサーは誰?と一幕が終わってキャスト表を見ると、プリンシパルの奥村君でした。奥村君なら当然あれだけ踊れて、あれだけ演じられるなと納得です。

クララ達とねずみ軍の戦い。兵隊弱し。大砲から砲弾を発射したものの50センチぐらいしか飛ばず、ネズミ軍にノーダメージ。

このねずみとの戦いの場面は、コント?

砲弾はねずみの王様にちゃっかり拾われて、ホクホクと持っていかれてしまいます。それをクララが「ダメダメ、返して」という感じで追いかけます。やっぱりコント?笑っていいんだよね?一人で笑っていましたが、周りがシーンとしているので、思い切り笑えない・・・。

そんなお笑い場面の次が、冬の樅の林の音楽の場面です。ロマンチックな音楽の中、クララと王子がパドドゥを踊る、大好きな場面です。イーグリング版では倒れたくるみ割り人形ドロッセルマイヤーの甥に変身し、クララと踊ります。さっきのコントを引きずってしまい、ロマンチックな気分に浸れない・・・。なにかまたコントが始まってしまうのでないかと変なドキドキ感がありました。

そんなよけいな心配はよそに、雪の結晶の場面になだれ込んでいきます。雪の結晶は新国立劇場バレエ団の神髄、コールドのスタイルの良さと統一された踊りの美しさが堪能できました。やはりここでも振付の難易度、高いな。

ドロッセルマイヤーが乗る気球に、クララと甥も乗り込み、お菓子の国に向かうところで1幕終了。イーグリング版は船ではなく、気球なんですね。3人が乗る気球が宙に上がって、こっそりとねずみの王様も気球にぶら下がっていました。