1/6ニューイヤー・バレエ(@新国立劇場)

今年最初のバレエ鑑賞は新国立劇場の1/6ニューイヤー・バレエです。昨年12月下旬までシンデレラを上演していましたが、両方とも出演しているダンサーや裏方の方は大変ですね。観ている方は楽しいけれど。

最初の演目は「パ・ド・カトル」。地方公演では上演したことあるけれど、新国立劇場本拠地での上演は初めて。というわけで楽しみにしていました。この演目はあまり観たことがなく、だいぶ前にロパートキナを含むロシアダンサーの上演を観たとき以来です。

タリオーニ、グラーン、チェリート、グリジそれぞれのダンサーの特徴を集約した振付になっているそうですが、面白い。派手な盛り上がりのある演目ではありませんが、タリオーニ役本島さんは風格で存在感を示し、グラーン役寺田さんはジャンプの連続。グジリ役木村さんの動きは風になびくよう柔らかさを見せたり、腕の助けを借りないゆっくりとした回転を続けて技術の確かさをふんわりと見せてくれたりしました。チェリート役細田さんは、踊りが終わりと見せかけて、次の瞬間観客サービスをする茶目っ気をみせます。チェリートは客席の掛け合いや反応を楽しんでいるようなダンサーという設定なのかも。むかし読んだ解説によると、4人のダンサーの違いとともに、それぞれから他のダンサーに向けられる対抗心、静かな火花が散るところも見どころとありましたが、今回の上演ではそのような対抗心は見られませんでした。それよりそれぞれの違いを理解した穏やかな間柄を感じました。4人ともバレエ研修所の先輩後輩なので、仲の良さが現れたのかもしれません。

2番目の演目は小野さん、福岡君による「グラン・パ・クラシック」です。2人が登場した瞬間の拍手がすごい。片足静止状態でのポワントが得意ではなさそうな小野さんはどう踊りを纏めるのか気になります。

まず最初のアダージオ。福岡君がトゥールザンレールしている間、小野さんは片足ポワントを無理にキープせず、余裕のある範囲で降りて美しくポーズ。強靭なテクニックを持つダンサーがキープし続けているのも見ごたえがありますが、無理にキープして頑張っています感が漂ってしまうと興ざめになります。余裕を持たせて優雅さを備え、美しさを優先させた小野さんの戦略が良かったです。

続いてそれぞれのソロですが、今日の福岡君は技のキレがすごかったです。キレのある回転、軽いジャンプ、細かく速いアントルシャ。もしかして絶好調なのでは?小野さんのソロは、なんだか眩しく、神々しさを感じました。背中がきれいで見とれます。

コーダで盛り上げて華々しく終了。福岡君の男性的な力強さと美しさを備えた踊り、小野さんのつま先まで美しく音楽性豊かな踊りに劇場は大盛り上がり。満足度の高い演目でした。個人的には年初に2人の元気な姿を見られて嬉しい。

3演目目は米沢さん、奥村君の「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。全幕ではほとんど組むことのない2人ですが、ガラ公演での共演はいつも楽しみにしています。おととしのニューイヤー・バレエの「タランテラ」は本当に楽しかったし、去年のヴァレンタイン・バレエの「ソワレ・ド・バレエ」も素敵でした。チャイパドもきっと合うはず。

走って登場してきたものの、お互いの存在が気になり歩を止め、徐々に近づいていく男女。薄暮のような薄暗さを感じる舞台で、ヴァイオリンの甘やかな音色が2人の気持ちの盛り上げりを代弁しているよう。アダージオがしっとりと終ります。

その後のパートの奥村君はとても元気な踊り。やはりこういうパートは、素敵な女性に出会えた喜び爆発みたいな意味があるのでしょうか。奥村君は細かく速く高いアントルシャが印象的でした。米沢さんは、迷いのないつま先で音符を一つづつ刻んでいるよう。優美だったり、キュートだったり、小粋だったり。米沢さんのインタビューを読むと真面目な人なんだなという印象を受けますが、この舞台で見るキュートさというのは演技なのか、本来の資質が現れたものなのか。

疾走感のある音楽に合わせて、細かく音をとらえた2人の踊りが続きます。米沢さんのダイブをしっかり奥村君がキャッチし、最後は頭上にリフトして退場。胸が高鳴る演目でした。

幕が代わって、最後の「シンフォニー・イン・C」です。

第1章は米沢さんと福岡君がプリンシパル。ここでも米沢さんは細かく音を刻んで、軽やかでキュート。後のパートで女性ダンサー陣を従えて踊るときは、キュートさは影をひそめ、中心でみんなを引っ張っていく強い輝きを放っていました。場面によって自分のどの部分を舞台に出すか変えているということですね、おそらく。福岡君は相変わらずキレキレ。楽章の最後で米沢さんと福岡君のタイミングが合わなかったのが少し残念でしたが、それまでの素晴らしかったものだけ記憶に刻んでおきます。

第2章は小野さんと菅野さんが中心です。小野さんはゆったりと抒情的な踊り。きれいで一瞬も見逃したくない。この踊りを支えているのは菅野さんの鉄壁のサポートです。菅野さんのサポートは無駄な力が入ってなく見えて自然で、女性ダンサーが美しく見えます。菅野さんの丁寧なサポートで小野さんはキープがし易そうでした。最近の新国立劇場の舞台で観ていなかったので存在を忘れかかっていましたが、菅野さんはきれいな踊りと演技力、安定感のあるサポートが持ち味のダンサー。もっと舞台に出てもいいと思うものの、公演数が少ないなか、若いダンサーに舞台経験を踏ませなきゃならないので、そうもいかないんでしょうね。

第3楽章のプリンシパルは池田さんと渡邊君です。渡邊君のジャンプが高い。ニューイヤー・バレエでの出演はこの演目だけなので、この演目にかけるような爆発力がありました。若さからくる威勢の良さを感じさせる2人。今まで気づかなかった部分に目が行きました。池田さんのポワントでのアラベスクパンシェ(?)のとき、サポート役の渡邊君の手は池田さんのウエスト部分を下から支えていました。女性ダンサーの動きにばかり目が行きがちですが、地味に男性ダンサーも働いている。

第4楽章はこの日のプリンシパル細田さんと井澤君。女性ダンサーが多くいるなか、細田さんがまったく埋もれません。真ん中が定位置という感じのオーラが出ていました。上半身は優美、足元は細かいステップを踏んでいます。

最後は全員そろってフィナーレを迎えますが、アレグロの曲調のなか、曲に遅れず、美しさを保ちつつ素早いステップを踏み続けるさまは圧巻です。ぐんぐん引き込まれます。曲が終わるとともにフィニッシュのポーズを決めるダンサー。終わった瞬間、ブラボーというより、「イエーイ!」と叫びだしたくなりました(叫ばなかったけど)。祝祭感たっぷりで見ごたえあり。

楽しい観劇が終わって出口に向かうと、ニューイヤー・バレエを協賛している花王の化粧品(エスト)のサンプル配布あり。舞台に満足していい気分でいたうえ、サンプルまでもらえてさらに気分が良くなりました。花王さん、ありがとう。