「仁和寺と御室派のみほとけ」展(@東京国立博物館)

国宝の秘仏を見たい。ということで、トーハクの特別展「仁和寺と御室派のみほとけー天平真言密教の名宝ー」に行ってきました。

後期展示で国宝の秘仏が展示されるようになると、グッと入場者が増えたという仁和寺展。金曜夕方ならそれほどでもないかと思って行ってみたものの、人気のある展示品の前はやはり混んでいました。

お目当ての秘仏その1の「国宝薬師如来坐像」は会場に入ってすぐに安置されています。360°からほとけ様を見られようになっています。鑑賞者がたくさん群がっています。展示ケースの間近で見るには列に並び、時計回りに少しづつ動きながら鑑賞してくださいとの指示あり。

日本一小さい国宝というだけあって、本当に小さい。ですが、作りは見事で、細かいところも驚くほど丁寧です。截金で出来た細かな文様が剥落しておらず、しっかりと見えます。ずっとお寺で大切にされてきたのでしょう。このほとけ様のフィギュアがあったら買うのに。

第1会場は書や仏画などがメインです。学術的には貴重なものなのでしょうが、その中で国宝の両界曼荼羅は仏像を見たい人には物足りません。(あ、国宝の両界曼荼羅は大きくて美しくて見入ってしまいました。)仏像をもっと見たいと思って第2会場に行くと、これでもかと仏像がお迎えしてくれます。

まず「第4章仁和寺の江戸再興と観音堂」の場では、通常非公開(修行の場だかららしい)の観音堂が再現されています。全部で33体あるというほとけ様がずらっと揃った姿は圧巻です。こんなにほとけ様を東京に連れてきちゃって、仁和寺の観音堂は特別展の期間中、どうなってしまっているのだろうかと余計な心配をしてしまいます。もしかして観音堂はすっからかん?

ちなみにここは写真撮影可(フラッシュ不可)で、鑑賞者はパシャパシャ写真を撮りまくっていました(もちろん、わたしも)。お堂の壁に描かれた絵も再現していて、わざわざ汚しの処理もあり。お堂の裏側に描かれた絵をよく見ると、パネルのつなぎ目部分で絵がズレているところがありました。これも本物のお堂の絵を忠実に再現したのでしょうか。

のっけから大量の仏像攻勢を受けましたが、お次は「五智如来坐像」です。5体のほとけ様で1セット(?)になっており、真ん中に一番大きな大日如来、それより少し小さな如来4体がバランスよく安置されています。ライトが当たって光る姿が神々しいです。蓮華座に座ったほとけ様は、会場のライトのせいかそのほかの効果のせいか、空中に浮遊しているか水面に浮かんでいるかのような錯覚を受けました。

五智如来坐像の美しさに感銘を受けていると、次の場では仁和寺の国宝「阿弥陀如来坐像および両脇侍立像」。大きさもあって立派です。

道明寺の国宝秘仏「十一面観音菩薩立像」のスッとした立ち姿。360°ぐるっと見て、なだらかな肩や背中のラインを楽しみます。

そして後期展示の大本命の秘仏葛井寺の国宝「千手観音菩薩坐像」。普段は正面から限られたお姿しか拝見できないものが、360°から見られます。ほとけ様の11面の解説や持物の解説が壁に展示してあり、鑑賞の助けになります。特別展冒頭の薬師如来坐像も混んでいましたが、こちらの千手観音菩薩坐像の周りも混んでいました。この二つで人気を二分している感じです。

1000本以上ある千手観音の手の多さの迫力がすごいです。何も持っていない手が多数ですが、持っているものを一つ一つじっくり見るのが楽しい。持物の中に骸骨がありましたが、この骸骨がちょっとかわいい。会場内の他の千手観音像が持つ骸骨はもう少し怖い感じな造形なのですが、この葛井寺の千手観音が持つ骸骨は怖さよりかわいさを感じました。

この千手観音の数ある手の中で、もとは何かを持っていたらしいが、現在は持物亡失で手のひらを正面に向けているものがあります。この手のひらにしっかりと目が描かれているのが見えるのも、面白い。

国宝、重要文化財の仏像以外で、気になる仏像がありました。神奈川の龍華寺の菩薩坐像です。脱活乾漆造の奈良時代のほとけ様だそうですが、表面がこげ茶色に鈍く光り、半跏の端正な姿、静かな表情は見るものをひきつけます。美しい姿のほとけ様です。

帰宅後ネットで検索してみると、修理前の菩薩坐像の姿を映した画像を見つけました。腕が断裂し、ところどころ破損していたみが激しい。修理後とだいぶ姿が違っているのに驚きましたが、美しい姿に修理されて良かった、良かった。

普段見られない仏像が見られるということで、仏像好きな人が秘仏目当てに来場し、ちょっと混んでいる特別展でしたが、見ごたえ充分。

さらに、特別展や常設展のチケットで、表慶館で行われている「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」展も見られておトク。ちなみにこちらの展示品の中では、装飾的なアラビア文字が書かれた墓碑や、金糸で刺しゅうしたカーテンが印象的でした。