変化に富んでる天上山(@神津島)

神津島の前浜港に着いたら、天上山トレッキングツアー一行を島の観光協会の職員の方が迎えに来てくれていました。まずは近くのまっちゃーれセンターまで、徒歩で移動です。

まっちゃーれセンター内は広く、畳敷きの広いスペースもあります。山バッジや島唐辛子などちょっとした土産や、観光情報が得られます。寄りませんでしたが、お隣のよっちゃーれセンターには食堂と海産物の販売所があるそうです。

まっちゃーれセンターで顔合わせをしたガイドさんと共に、車に乗って黒鳥登山口へ。歩いて登山口まで行くこともできますが、ルートタイムで40分かかります。

登山前の説明によると、天上山にはクマ、イノシシ、スズメバチなど人間にとって危険な生き物がいないとのこと。危険生物を気にすることなく、山を楽しめるのは良いですね。黒鳥登山口には登山に使える杖が何本も置いてあるので、体力が心配な人は借りていけます。

登山口から黒鳥山10合目までは距離は長くはないけれど、ずっと登りの階段が続きます。けっこうな急登の黒鳥登山道を海岸を背にして登っていると、あっという間にかなりの高所にまで到達します。振り返ると、眼下に神津島の町並みと海岸線、海が広がっています。そして高度感がすごい。登山道には、スミレが登り始めにほんの少し、ショウジョウバカマが点々と、ミヤマシキミがそこここに咲いています。

10合目の標識のあと、ほどなくして千代池に到着。少し前は水がなかったそうですが、前日までに降った雨でしっかり水が溜まっています。ここでジャンプした姿を撮影すると、池の上を飛んでるように見えるというガイドさんのおすすめで、みんなジャンプ姿を撮影してもらいます。撮影してもらった結果・・・、池の上を飛んでいるようには見えませんでした。何が悪かったんだろう・・・。

千代池から表砂漠までに行く間は、丈の低い木で出来たジャングルのような中を歩いていきます。この丈が低く、うっそうと茂った感じが、マングローブの林の中を進んでいくような錯覚を覚えます。ここではミヤマシキミだけでなく、シキミの花が見られました。この日、天上山でシキミが見られたのはここだけ。

丈の低い木々のジャングルを抜けると、腰の高さにほどもない植物が生い茂るところにたどり着きました。眼前には岩や石ががれきのように露出し、低木で覆われた山肌が見えます。この景色だけを切り取ってみれば、相当高い山にいるように見えます。稜線とその上を歩く登山者の姿と背景の青空をあわせて見ると、北アルプスの景色のよう。北アルプスとは規模がまったく違いますが、こんな景色が見られるなんて。

高山のような景色を眺めながら歩いていると、すぐに表砂漠に到着しました。案内板によると、ここはその昔の噴火時の火口で、砂地として残っているとのこと。砂漠というだけあって、砂地で荒涼とした景色が広がっています。ですがテーブルやベンチが設置されていて、休憩するのによい場所です。登山口で配られたおにぎり弁当はここでいただきました。ちなみにおにぎり弁当のお味は普通。

 昼食が済んだら次の目的地、天使の立つ場所に向けて出発です。登山道の両側には膝丈ほどの松が生えています。その松は、高山に生えるハイマツのように見えます。ガイドさんに聞いてみると、ハイマツではなくクロマツとのこと。風が強いので木が高くならないのだそうです。ますます景色は高山っぽい。添乗員さんが撮ってくれた写真をあとで見せてもらったら、森林限界を超えた高山をいくツアー一行のように見えました。

天使の立つ場所は、あるとき雲の合間を天からパーッと光が降り注ぎ、神聖なものが降りてきているような神々しい景色が見られたことが、その名の所以。石の上に「天使の立つ場所」と文字が彫られていて、その隣の石には天使と犬の絵も彫られています。この天使の立つ場所の石の上で、ツアー一行は天使ポーズをとって写真撮影。

さらに進んで、裏砂漠。ここも荒涼とした砂地です。表砂漠同様、砂漠に咲くツツジが名物なのだとか。まだツツジの季節には早かったので見られませんでしたが、咲いている写真を見ると綺麗ですね。ザラザラとした砂地を歩いていると、ここにコマクサが咲いていればますます北アルプスっぽい、と思ってしまいます。

次にたどり着いた裏砂漠展望地からは、春霞でうっすらと三宅島と御蔵島が見えます。神津島近くの無人島、ヘビ島もよく見えます。神津島にはヘビがいないそうですが、ヘビ島にはヘビがいて、大学の先生や学生が研究のため訪れるのだとか。

それより気になるのは、表砂漠の前から我々ツアー一行についてくるカラスです。裏砂漠展望地にも、何食わぬ顔でついてきているし。神々が集った島という伝説の神津島ですから、もしかして我々一行を導く八咫烏?というわけではなく、人間からエサがもらえると思って付け回している、ただのハシブトガラスでした。ついてきても、エサはやりません。

新東京百景展望地で平たい式根島と、それより大きく標高の高い新島を見たら、お次は天上山のパワースポット、不動池です。こちらも千代池同様、前日までの雨で池に水が溜まっています。池のそばに石製のとても小さな祠と鳥居。こんもりと植物が生えている池の中州と池の端が、細い石橋で繋がっています。細い石橋を渡って、竜神がまつられているという中州に入ってはいけないんだとか。不動池はハート形の池として観光案内に載っていますが、池のそばではハート形には見えません。

ところで、この不動池そばには公衆トイレあり。おがくずを使ったバイオトイレで、まったく臭くありません。用をたしたら、トイレ内に設置されている自転車を20回漕ぎ、さらに逆回しで10回漕いで、おがくずを攪拌します。

次は、天空の丘で360°の展望を楽します。ここからさらに登ると、不動池がハート形に見えるスポットに到達します。観光パンフレットなどで見られるハート形の不動池は、ここら辺から撮ったもの。見下ろすと、おお、本当にハート形に見えます。このスポットに登らず通り過ぎようとする登山者に、ガイドさんが「池に水があるときじゃないとハート形に見えないよ。いつも見られるわけじゃないから、見た方がいいよ。」と誘います。ハート形の不動池を見られたのは運が良かったようです。

そしてそして、岩がゴロゴロとした一見、高山っぽい道を登り、やっと天上山頂上に到着です。いろいろと寄り道してたので、登山開始から5時間弱かかりました。標高572m。山の最高地点から海の方を見下ろすと、灰色の雲の間からこぼれる陽の光が海面に反射して、きらきらと美しい。

ちなみに山頂に建てられた「天上山々頂」と書かれた柱はガイドさんが設置したといいます。ついでに、柱の上に据え置かれた玉を持つ龍の置物も、ガイドさんが設置したのだとか。

山頂に到達したら、後は下山するだけ。階段になったザレた道を一気に下ります。ここは登りの際に通った登山道とは様相が違い、白くザレた景色が広がっています。ガイドさんは慣れたもので飛ぶように下山していきます。階段にはなっているものの、ザレ場は小石に滑らないように気を使います。遅れないようについていきますが、喉がカラカラ、船であまり寝られなかったツケもたたって、結構大変でした。

トイレのある白鳥登山口まで降りてくると、やっと一休憩。もう下山が済んだ気になりましたが、まだまだ下山は続きます。今度は森の中の湿った階段を下っていきます。滑りやすいためか、ところどころロープが設置されていて、補助あり。そんな中でも、相変わらずガイドさんの脚は早い。結構なお年のように見えるのに、なんでこんなに元気なんだと思いながら、やはり遅れないようについていきます。

登山道が車道に合流して、下山終了。登りより、下りの方がきつかったです。そうはいっても決して大きな山ではないのに、ぎゅっと凝縮して様々な景色を見せてくれる天上山は面白味のある山でした。花の百名山だそうですし、ツツジの咲く5月やサクユリが咲く7月に行ってみるのも良さそうです。