世界バレエフェスティバルAプロ(8/2@東京文化会館)

世界バレエフェスティバルAプロ(8/3)についてメモ。

暑い、長い、そして疲れた。長丁場で観るのも疲れますが、この酷暑の中、冷房きいている室内とはいえ、ダンサーもさぞ大変だと思います。

エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴの「ディアナとアクテオン」。明るい演目で観客のつかみはOK。ダニエル・カマルゴは540を連続して、見せ場を作っていました。

マリア・アイシュヴァルトとアレクサンドル・リアブコの「ソナタ(ウヴェ・ショルツ)」。情感のある作品です。上演された部分だけの作品なのか、もっと尺の長い作品なのか分かりませんが、他のパートがあるなら観てみたい気がします。アイシュヴァルトのファニーガラのノリの良さと、この作品でみせる情感の落差がすごい。ウヴェ・ショルツというと、木村規予香さんを思い出す。

マリア・コチェトワとダニール・シムキンの「ジゼル第2幕のパ・ド・ドゥ」。コチェトワとシムキンはバランスが良いペア。9年前の全幕特別プロ「ドン・キホーテ」のはじけた姿とは違い、情緒の世界を描き出します。コチェトワは風に吹かれるようでこの世のものではない存在感を漂わせ、一方シムキンは重力を感じさせ(動きが重たいという意味ではありません)生身の人間であることを表現します。うまい2人。

オレシア・ノヴィコワとデヴィッド・ホールバーグの「アポロ」。ノヴィコワとホールバーグは美しい。けれど、「アポロ」って、バランシンの作品の中では個人的に面白みを感じない作品です。玄人好みの作品なのかもしれません。近くの席の小学生ぐらいの子は退屈そうにしてました・・・。

サラ・サムとフェデリコ・ボネッリの「コッペリア」。かわいいけれど、なぜバレエフェスでこの作品を選んだのか・・・。

ヤーナ・サレンコの「瀕死の白鳥」。バレエフェスではどちらかというと、テクニックをばんばんみせるサレンコですが、今回は表現力で勝負。悪くはないです。

メリッサ・ハミルトンとロベルト・ボッレの「カラヴァッジオ」。暗めな照明の中、フォーメーションを変え続ける姿が浮かび上がります。コンテンポラリーは良く分かりませんが、退屈しないので見入ってしまった作品。ボッレの容姿は(遠目には)劣化しておらず、メリッサ・ハミルトンは身体能力が高い。

レオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェの「くるみ割り人形」。ヌレエフ版は細かいところで難しい。動きの中で、この動きの次は右に回転した方がスムーズだろうというところで、あえて左に回転するような細かい難しさ。ボラックとルーヴェの動きが回転速度、腕や脚を上げる角度などよく合っています。ボラックは正確な技術に裏打ちされた可愛らしい美しさ。ルーヴェは雰囲気がよく、もしかしたら現時点で最高の夢の国の王子様かもしれません。

オレリー・デュポンとダニエル・プロイエットの「・・・アンド・キャロライン」。オレリーのコンテンポラリーは初めて観ます。やはりコンテンポラリーは良く分からず、プログラムの作品解説を読んでから観たら、少しは内容が分かったかもしれません。記憶に残っているは、衣装の赤い靴下。

アレクサンドロワとラントラートフの「ファラオの娘」。分からないコンテンポラリーの次に来たのは、ボリショイ組のクラシック。ロシア人の伝統芸能クラシックバレエはいいなぁ。

ロシアの姐御、アレクサンドロワの元気な姿を観られるのは嬉しい。フェッテの回転速度が一定のペースを保って速く、アレクサンドロワ健在という感じです。ラントラートフはビシビシと技を決めまくります。会場は大盛り上がりで、2人の出番は終了。

タマラ・ロホとイサック・エルナンデスアロンソ版「カルメン」。技巧派であり演技派でもあるクレバーなダンサー、ロホのカルメン。強い女に扮したロホがかっこいい。アロンソカルメンは、ロシアの手足の長いダンサーによる上演を観ることが多いのですが、作品の舞台であるスペインの出身であるロホに合わないはずがありません。エルナンデスのホセは伊達男ではないけれど、もっさりした田舎者でもありませんでした。

エリザベット・ロスの「ルナ」。ベジャール作品なのでコンテンポラリーというより、モダンバレエといった方がいいのかな。すみません、疲れてきてあまりよく観てませんでした。

アンナ・ラウデールとエドウィン・レヴァツォフのノイマイヤー版「アンナ・カレーニナ」。 上演中は何の作品か分からず観ていましたが、物語を感じる作品です。後の休憩時間中に確認したところ、物語を感じるのはさもありなん、ノイマイヤー作品だったからです。

舞台上には現代的な衣装を身に着けた男女。心残りがあるような、物思いをしているような女性(アンナ)に、強引に自分に向き合わせる男性(ヴロンスキー)。2人の演劇的なパ・ド・ドゥが続く中、男の子(アンナの息子)が電車のおもちゃで遊ぶ幻影がアンナの心に浮かんでくる。ハッとして息子を失いたくない思いを溢れさせるアンナ。といった感じでしょうか。全幕を観てみたい作品です。

アシュレイ・ボーダーとレオニード・サラファーノフの「タランテラ」。この作品は大好き。テンポの速いピアノの音と、小気味のいい男女の踊りの掛け合い、ピアノと踊りの掛け合いが、とても楽しい。テクニックに不足のあるダンサーが踊ると作品の持つ軽妙洒脱さが無くなってしまいますが、テクニシャンの2人が踊ると爽快です。お祭りを盛り上げてくれる2人でした。

アレッサンドラ・フェリとマルセロ・ゴメスの「アフター・ザ・レイン」。以前英国ロイヤルバレエの映像を観たときは、ながら見で内容をよく覚えてませんが、こうしてガラで一部を観てみると情感があって素敵。40代で踊ったジゼルもジュリエットも素晴らしかったフェリは、50代になってもこんなに踊れるんだと目を見開かされます。ゴメスは見た目から受ける印象とは違い、相変わらず端正なダンサーです。しかし舞台上のゴメスを見ると、以前ファニーガラで踊ったバヤデールのニキヤ(女装姿を舞台で見せることが出来て、内心の嬉しさが滲み出ていた)の一連のパフォーマンスが どうしても浮かんできてしまいます。舞台上のパフォーマンスに集中しようとしても、あの衝撃のニキヤが頭から離れません。ファニーガラは楽しいけれど、こんな弊害があります・・・。

シルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコの「ドン・ジュアン」。表現力とテクニックを兼ね備えた2人が何か物語っているのですが、ドン・ジュアンの物語自体知らないので、どんな場面なのか今一つ分かりません。リアブコが一人残されるので、袖にされたんだなとは分かりますが、作品解説を事前に読んでおけば良かったと後悔です。

アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーの「シェエラザード・パ・ド・ドゥ」。バレエのシェエラザードというとフォーキン振付のものを思い出しますが、今回コジョカルとコボーが踊るのは、リアム・スカーレット振付(世界初演)のもの。フォーキン振付の金の奴隷と寵姫ゾベイダの濃厚な色気を放つパ・ド・ドゥとは違う、恋の喜びをうたうかのような作品でした。役柄設定はコボーは金の奴隷、コジョカルはゾベイダでなのだよね、もしかして違う役柄?と思う程、フォーキン振付のものとは雰囲気が違います。コボーはヅラを取り、サイドやバックの頭髪も刈ってスキンヘッド。コジョカルのリフトに安定感があります。一方、コジョカルはコボーへの愛を隠そうとせず、ラブオーラを放ち、喜びを溢れさせるように舞う。コジョカルって分かりやすいダンサーだと思います。コボーと踊っている時が、他のダンサーと踊っている時とは段違いに輝いています。ラブオーラにあてられた演目でした。

ポリーナ・セミオノワとフリーデマン・フォーゲルの「ヘルマン・シュメルマン」。どこかで観たことあるな、フォーサイスっぽい作品だなと思っていたら、やはりフォーサイス作品。バンバン踊ってカッコよく、クスっと笑えるところもあって、セミオノワとフォーゲルに似合っていた作品でした。

ドロテ・ジルベールマチュー・ガニオの「マノンより第1幕のパ・ド・ドゥ」。この辺からかなり疲れてきて、ボケーっと観ていてあまり記憶にありません。

マノンとデ・グリューの寝室のパ・ド・ドゥです。ベッドから起き上がりデ・グリューに近づいていくジルベール演じるマノンがなまめかしさを漂わせていて、存在感あり。マチューは・・・老けた?

ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマンの「ドン・キホーテ」。バレエフェスのトリはドン・キホーテ第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ。キトリの衣装は黒、マチアス・エイマンの身のこなしが軽やかだった、盛り上がった、という印象です。

トータルで4時間半ぐらいかかったので、腰が痛くなるわ、眠くなるわ、疲れるわでしたが、世界バレエフェスのお祭り感はやはり良いです。大物スターがいなくて、随分小粒のダンサーだけになっちゃったねという意見もあるのでしょうが、わたしは充分楽しめたフェスティバルでした。