世界バレエフェスティバルBプロ(8/9@東京文化会館)①

今更な感もありますが、世界バレエフェスティバルBプログラムに行ってきたので、メモ。全部の演目についてメモすると長くなるので抜粋です。

オレシア・ノヴィコワとデヴィッド・ホールバーグの「眠れる森の美女」。良いじゃないですか、Aプロの「アポロ」より!「アポロ」が悪かったというより、わたしが「アポロ」という演目の面白みを分かっていないだけですけれど。ノヴィコワの弓なりに反る脚、高い甲が美しい。年齢を感じさせない可憐さの漂うお姫様でした。ホールバーグも、若々しく美しい脚のノーブルな王子でした。

ヴィエングセイ・ヴァルデスとダニエル・カマルゴの「ムニェコス(人形)」。初見の作品ですが、分かりやすくて楽しめます。

ヴァルデス演じる人形の女の子は、赤いトウシューズに赤系のスカートを身に着け、髪形はツインテールをそれぞれお団子状にして、ファニーだけどキュートな容貌。カマルゴ演じる人形は兵隊さん風で、スタイルの良さが引き立ちます。

夜になると動き出す人形の恋人たち。ファニーガール風の女の子人形は、動きもコミカル。兵隊人形のことが大好きという様子が伝わってきます。兵隊人形は、融通のきかない生真面目な感じです。2体でパ・ド・ドゥを踊りますが、朝の光が射しこんでくると、動きが鈍くなります。慌てて窓から入ってくる月の光を恋人に浴びせて、2体の幸せな時間を今一度作ろうとする。可愛くてコミカルなだけじゃない、幸せな時って長く続かないんだなぁということも感じさせてくれる演目でした。

レオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェの「ソナチネ」。これ、他のダンサーで観て寝落ちしたことありますが、今回は寝落ちせず。美しい演目でした。ピアノの美しい音と、若く魅力的な2人の舞が融合して、片時も目を離したくない。バランスが良く、雰囲気の良い2人に魅了されました。ボラックは個人的に好きなタイプのダンサーかも。

シルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコの「オルフェウス」。解説を読まないで観たので、舞台中央でヴァイオリンを持って佇んでいるリアブコが何の役柄なのか分からない。ついでに言うと、この演目が「オルフェウス」だということも忘れていたので、???と思いながら観ていました。

いつの間にかリアブコは、その昔、視覚障碍者がかけていたような黒いサングラスをかけ、アッツォーニと踊っています。サングラスをかけ、アッツォーニと手をつなぐリアブコは、視覚ではなく感覚でアッツォーニの存在を感じているように見えます。そして何だか苦悩している。物語を感じるけれど、何を表している演目だろうと上演中は思っていました。

そんな演目を、後の休憩中に作品の解説を読んで納得しました。オルフェウスが妻のいる冥界に下り、冥界を出るまでは妻の姿を見てはいけない、でも妻の姿を一目見たいと葛藤しながら、冥界の道を2人で手を引き歩んでいる場面を描いていたのだと。何も知らない状態の観客にも訴えかける、憑依型ダンサー、リアブコの表現力のすごさに感服です。

アリーナ・コジョカルとセザール・コラレスローラン・プティの「コッペリア」。コジョカルのプティ版コッペリア、似合ってました。可愛くて、踊りに余裕があり、「このダンサー、誰?」と思ったら、コジョカル。コラレスもカッコいい。

ドロテ・ジルベールマチュー・ガニオの「シンデレラ」。アシュトン版シンデレラはこの世でないどこか遠い国のおとぎ話という感じで可愛らしいですが、映画スターになるヌレエフ版は大人っぽくて近代的。ドロテがキラキラと存在感があり、まさしく映画スターへの階段を昇っていく新進スターのきらめきがありました。

タマラ・ロホとイサック・エルナンデスの「HETのための2つの小品」。ロホは劣化しない。以上。

アシュレイ・ボーダーとレオニード・サラファーノフの「白鳥の湖より第3幕のパ・ド・ドゥ」。オディールと王子のパ・ド・ドゥの場面。ボーダーのグランフェッテでダブル(トリプル?)のとき、両腕を天に向けて上げて回転するのが見もの。何回やったか定かではありませんが、フェッテの前半部分でダブル回転するときは手を挙げていたはず。ABTの白鳥の湖で、ジリアン・マーフィーが両腕を上下に羽ばたかせながらグランフェッテをやっていたのを観たことがありますが、テクニックに強いアメリカ人ダンサーはグランフェッテ時に腕の動きを加える傾向にあるんでしょうか。サラファーノフは軽くて、高い。

アリシア・アマトリアンとフリーデマン・フォーゲルの「椿姫より第2幕のパ・ド・ドゥ」。フォーゲルが若々しく、そしてアルマンの衣装が似合う。恋が成就した喜びを余すことなく情熱的にマルグリットにぶつけます。対するアマトリアンのマルグリットは病に侵されいるらしき様子が垣間見えますが、アルマンの愛情を精一杯受け止めます。このまま溺れるように幸せに浸っていられるのだろうか、という不安感ものぞかせながら。演技派な2人。

続く。