剱御前小屋へ

立山三山縦走ツアーに参加したのでメモ。

初日の行程は、室堂から剱御前小屋まで。晴れていれば雷鳥平から剱御前小屋まで、少々急登なところはあれど、手こずるようなところはないと思うのです、晴れていれば。ですがこの日は低気圧の影響で、雨風強い日でありました。

剱御前小屋まで何とか雨が降らないで欲しいという願いも虚しく、室堂に向かうバスの中で無情にも雨は降りだしたのでした。車窓から野生の猿を見たり、称名滝を見たりで、曇っているものの楽しいバスの中。しかし、室堂に近づくにつれ、小雨から本降りへと雨は移行します。

室堂で出発前に昼食休憩を取っている間も、雨はやむ気配はありません。添乗員さんとガイドの方の会話が聞こえてきます。「剱御前小屋のスタッフから、本当に来るんですかと言われている。」と。立山に以前来たことのあるツアー参加者は、「この雨の中、剱御前小屋まで行かずとも、雷鳥荘までで良いんじゃないか。」と言っています。

そんな声がある中で、この後、天気が良くなる見込みもないので、出発時間になると予定通り出発することになりました。風に煽られないように、普段ストックを使っていない人も2本ストックを使うよう指示があり、慌ててストックの準備をします。

室堂バスターミナルを出ると、ビョービョーと強風が吹いていて、雨も強い。雨粒が顔に当たると痛い、痛い。後で聞いたところによると、普通の雨ではなく、あられが降っていたそうです。痛かったわけですね。室堂は風の吹き溜まりで、天気の良い日も風が強いそうですが、それにしても風が強い。いつもの雨天時と同じ具合で雨具のフード被っていたら、強風でスポッとフードが脱げてしまいます。フードの顔周りの紐をきつめにして脱げないように調節しなくては。

強い雨風の中を進んでいくツアー一行ですが、あまりの雨風に耐えられず、途中、雷鳥荘で小休憩をさせてもらいました。宿泊者でもない濡れそぼったツアー一行を休憩させてくれた雷鳥荘の方々、ありがとうございました。

雷鳥荘で小休憩した後も、剱御前小屋を目指して山行は続く。雷鳥荘近くで雷が一回ゴロッと鳴ったのですが、一回鳴っただけだったのでそのまま続行です。ガイドの方に後で聞いたことですが、雷が続くようだったら剱御前小屋まで行くことはやめ、雷鳥荘で宿泊することも考えたそうです。雷が鳴ったのが一回だけだったのが、良かったのか悪かったのか。雷鳥荘ならお風呂があって、冷えた身体を温められたはずということですし。

雷鳥沢キャンプ場は、激しい雨風のため、さすがにテントは張られていませんでした。(しっかり目視したわけではなく、強風の中チラ見だったので、もしかしたらテントを張っていた剛の者がいたかもしれません。)剱御前小屋に行くには、木の橋を渡っていきます。橋はしっかりしていますが、その下を濁流がゴウゴウとすごい勢いで流れているので、万一ツルっと滑って落ちないように、慎重に一人ずつ渡ります。

橋を渡れば剣御前小屋に続く登山道を、ひたすら登っていきます。しばらく行くと地形的に風の勢いがそがれる箇所に至ったのか、風が弱まった所に出たので小休憩。

小休憩をしていると、後ろから大学か高校の山岳部風の3人組が登ってくるのが目に入りました。自分たちもそうですが、何もこんな日に登らなくてもと思います。大きな荷物を背負って(テント背負っている?)、体力のある若者たちは追い抜いていきます。

風が弱い登山道での小休憩が終わったら、再び登山開始です。雨風が弱くなるのかと思ったら、またまた強風が吹きつけ続け、強い雨も容赦なしに降り続きます。

そんな中を歩き続けていると、防水グローブ(といってもテムレス)の中にいつの間にやら雨水が侵入し、手先が濡れているのに気づきます。そして強い雨のため登山靴の表面から雨水が浸透してきたのか、スパッツをつけていなかったので足を上げるたびに雨具のボトムの裾と靴の間の隙間から雨水が侵入してきたのか理由は分かりませんが、靴の中も雨水で濡れてきました。靴の中はちょっと湿ったなんてレベルではなく、歩く度にぐちゃぐちゃと入り込んだ水の音がします。靴下も完全に濡れています。(後でスパッツを装着していたツアー参加者に聞いたところ、スパッツをしてても靴の中に雨水が浸み込んで靴の内部がぐっしょりだったとのこと。)

普通の登山ツアーだと1時間に1回程度は休憩があるのですが、休憩に適した場所もなく、既に前の休憩から1時間半以上も歩き続けています。息が苦しい、喉も乾いた、でもここで休憩を取ったら、低体温症になってしまうのではないか。いや、手先足先は濡れて冷たくなってしまっているけど、その他の部分は濡れておらず体幹部分は温かいから、まだ低体温症にはならないか、でも背中は汗をかなりかいて湿っているし、などと考えながら、自分の足元1~2m先の登山道を見つめ、周囲を見る余裕もなく登り続けました。

虚ろな感じで登り続けていると、ガイドの方の「あと10分で、剱御前小屋!」との声。気力を振り絞って顔を上げても、雨で曇った前方には小屋らしき建物は見えません。参加者を元気づけようと、あとちょっとと言ってるだけではないかと疑念を抱いてしまいます。

 「あと3分!」とのガイドの方の言葉で顔を上げると、剱御前小屋の姿が目に入りました!この時は嬉しかったです、足取りが確実に軽くなったもの。ガイドの方の「あと10分」の言葉は本当でした。疑った自分の弱さが恥ずかしい。

剱御前小屋では玄関に入る前に、椅子・テーブルが置いてあるちょっとしたスペースで、雨具を脱ぎ、ザックカバーを外しました。小屋についてちょっと放心したような感じもしますが、事故も起きず、ツアー参加者はみんな無事でした。今になって思うと、初対面でお互い良く知らない人たちばかりのツアー一行で、みんなよく頑張ったなあという感じです。

剱御前小屋で通されたのは2階の突き当りの部屋。女性陣2部屋、男性陣1部屋を割り当てられました。部屋の中は常時(?)、薄い布団が敷いてあり、ザックは室内に持ち込み不可です。宿泊者が少なかったためか、一人当たり布団2セット分のスペースを使えました。広々使えて快適です。

剱御前小屋の乾燥室には、ゴーッと強力な温風を送る機器が置いてあります。常時温風が送られているわけではなく、タイマー式なのか、時間が経つと温風は切れます。強力な温風のおかげで、雨具やザックカバー、靴下をはじめとした衣類を吊るしておくと、厚手のものを除き、すぐに乾きます。乾燥室に靴を入れるとソールが剥がれやすくなってしまうという忠告がありましたが、靴も内部がぐっしょりと濡れているので自己責任で乾燥室へ。小屋のスタッフの方が2回、温風器をつけてくれましたが、靴下や靴の内部は翌日までに完全に乾きませんでした。ゴアテックスを使った靴は水の侵入に強いけど、一旦内部が濡れると乾きにくいとツアー仲間に教わりましたが、そういうものなのでしょうか。

部屋の中は暖房機器がないので暖かいとは言う程でもないのですが、小屋の談話室や入り口近くにストーブがついていて、暖かい。ホットココアを注文し、ストーブのそばでぬくんでいると、まだまだ剱御前小屋に宿泊する人がやって来ます。他人のことは言えませんが、こんな日に来るなんて、みんな何考えているんだろう。

夕食を食べたら、明日に備え早めの就寝です。この日のメニューは白米、油揚げのお味噌汁、鶏のから揚げ、きんぴらごぼう、トマト1カット、千切りキャベツ、オレンジ1カット、冷ややっこ、きゅうりが入った春雨サラダでした。食事時にお茶は出ますが、剱御前小屋では無料の飲料水はありません。500ミリリットルペットボトル(400円)か2ℓ入りペットボトル飲料水(900円)を購入することになります(お酒もあります)。

ちなみにツアー初日のこの日、写真を撮ったのが剱御前小屋の夕食のみでした。いかに写真を撮る余裕がなかったかを物語っています、トホホ・・・。