マリインスキーのすべて(@東京文化会館)

12/2と12/3にマリインスキー・バレエの「マリインスキーのすべて」を観ました。

第一部の「ショピニアーナ」(レ・シルフィード)。正直、ショピニアーナは10年に一度位の間隔でしか観ない作品なので、どこが見どころか良くわかりません。月明かりの下、現実感のないフワッとしたシルフィードたちと詩人が幻想的に踊り、静かな曲調から最後はワルツで華やか、かつ、優美に終わる作品。

12/2のアリーナ・ソーモワのシルフィードっぷりを見て、感慨深かったです。マリインスキーの期待の新人として新国立劇場のくりみ割り人形にゲスト出演したときの印象が強かったので(パートナーのサポートのしやすさも考えず自分の踊りたいように踊り、上げたいように脚をあげ、内心「暴れ馬ソーモワ」と名付けていた位なので)、ソーモワも成長したな、と。でもソーモワより、12/3のエカテリーナ・オスモールキナの方が好みです。

それより作品中に使用されているショパン前奏曲第7番イ長調を聞くと、太田胃散のCMをどうしても思い出してしまいます。太田胃散のCMは罪深い・・・。イ長調を使っているのはイ長(調)と胃腸をかけたダジャレ?

第二部の「眠れる森の美女」よりローズ・アダージョ。12/2はオスモールキナで、12/3は期待の新人(らしい)マリア・ホーレワ。ホーレワは小鹿のようなダンサーで、可愛い。

オスモールキナとホーレワではアティテュードで4人の求婚者の手を取りながらバランスし続けるときに違いがありました。オスモールキナは両手をアン・オーにしてキープはせず、一人の求婚者の手を離したら、次の求婚者の手のひらの上に自分の手をそっと優雅に置くスタイル。ホーレワは次の求婚者の手を取る前に頑張って両腕をアン・オーにして一瞬キープするスタイル。

好みはあるのでしょうが、わたしはアン・オーで無理にキープせず、優雅に手を置くオスモールキナの方が好みです。といっても、ニーナやロホのような強靭なテクニックを持つダンサーがアン・オーでアティテュードの長いキープをするのを観るもの好きです。見せ場に出来る位のキープをできるダンサーなら観ていておおっ!となるので良いのですが、観ているこっちがハラハラするような場合は無理しなくてもいいのではないかと思います。一応、お姫様の設定なのだから。

オーロラ姫の求婚者4人はそれぞれ色、デザインの違った衣装で、それぞれ違う国の出身者という設定のようです。どの衣装の人がどこの国の出身なのかは分かりませんが、設定が細かい。

次は男性3人が踊る「ソロ」という作品。速い曲調に合わせて次々と男性ダンサーが踊りを披露する。楽しくて、観ていて飽きない、眠くならない。2日間とも同じダンサーが踊っていたようで、この作品が身体に馴染んでいるようでした。

「海賊・第2幕のパ・ド・ドゥ」。バレエ好きの友人から「永久メイちゃん、注目!」と言われていたので楽しみにしていました。体型はとっても細くて、加治屋百合子さんをちょっと思い出します。

踊りの方は、うーん・・・、12/2は緊張していたのかな。フェッテも途中で崩れてしまったし。踊りが終わってポーズを取る最後の音に合わせるように、ピッと手首から先を動かすのも、もう少し自然な方が良いのにと思ったし(マリインスキースタイルなのでしょうか?)。

12/3は前日より調子が良く、テクニックも安定していました。そして最後の音に合わせて手首から先を動かす仕草も、それ程気になりませんでした(自分が見慣れたのかもしれません)。外国のバレエ団内に日本出身のダンサーがいると、来日公演では本国の公演より重要な役を配薬されることがありますが、パ・ド・ドゥを任されるとはかなり期待されているのでしょうね、メイちゃんは。

12/2の相手役はエルマコフで、男性的で力強さを感じさせる踊り。12/3はキム・キミンはジャンプが高く、マネージュが高速、テクニシャンぶりを見せていました。

 「バレエ101」。アイディアとユーモアのある作品で、面白い。バレエのポジションとパに1~101番までの番号をつけて、最初は番号ごとのポジションとパを見せる。徐々に番号がランダムに告げられて、それに合わせてポジションとパを組み合わせて踊りになっていく。告げられた番号に合わせて正確にパを繋げるダンサーは、精密な機械のようです。 最後の101番目のポジション(パ)は、観てのお楽しみで、最後にアッと驚く仕掛けつき。ちなみに1番から6番まではふつうのバレエのポジションと同じです。2日はシクリャローフで、3日はザンダー・パリッシュでしたが、お二人とも見事。

2日の「フラッシュ・バックよりパ・ド・ドゥ」。初見の作品でよく分かりませんでしたが、綺麗でフワフワの作品ではありません。エカテリーナ・コンダウーロワが感情の起伏の激しい女性を演じていました。コンダウーロワに似合う。ローマン・ベリャコフと息の合ったパ・ド・ドゥを見せてくれました。

2日の「タリスマンよりパ・ド・ドゥ」。タリスマンのパ・ド・ドゥも過去2回ぐらいしか観た記憶がないので、見どころがよく分かりません。ロシアのダンサーが好んで踊るパ・ド・ドゥ、というかロシアのダンサー以外が踊っているのを観たことがない。キム・キミンがここでもテクニシャンぶりを見せつけて、大きな拍手をもらっていました。キム・キミンは観たことがないような回転ジャンプ(うろ覚えですが、両脚を膝から折り曲げ、進行方向に向かって回転ジャンプをしていたような?)をしていました。あれは何だろう?

3日は2日の「フラッシュ・バック」「タリスマン」に代えて、「別れ」と「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」が上演されました。

「別れ」も初見で、マリインスキーダンサーのユーリー・スメカロフの作品。ダンサーとしてのスメカロフは、前回の来日公演で白鳥の湖でロットバルトを演じているのを観た気がします(うろ覚え)。作品は大人の男女のパ・ド・ドゥという感じでした。

ナデージダ・パトーエワとウラジーミル・シクリャローフの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。悪くはなかったのですが、夏のバレエアステラス2018で観た米沢さんのチャイパドが良かったので、それと比べてしまうと・・・。シクリャローフはソロで踊っている部分でちょっとミスした部分があり、会場からはブラボーと大きな拍手が飛んできましたが、自分で納得いかなかったのか早々に袖にはけてしまいました。その後の踊りで挽回して、大きな拍手を存分に浴びていました。

第三部は「パキータのグラン・パ」。

2日はテリョーリキナと石油王の息子(らしい)ティムール・アスケロフ。テリョーシキナを観たくてこの日のチケットを取りました。テリョーシキナは出てくると主役オーラで場が締まります。観るべき人が出てきたという感じです。パの名称は知りませんが、片脚ポワントで立ちながらトン、トン、トンと前に進んでいく技の優雅で余裕のあること!テクニックに定評のあるダンサーは安心して観ていられます。

3日はエカテリーナ・コンダウーロワとアンドレイ・エルマコフ。コンダウーロワは大人っぽい美人なので、前日のテリョーシキナとはまた一味雰囲気が違います。テリョーシキナが赤い花のようだとしたら、コンダウーロワは白い花という感じですかね。

群舞が脚の上げる角度や身体の向きが合っていない部分がたまにあり、白鳥の湖は大丈夫だろうかとちょっと心配になったパキータのグラン・パでした。