12/14ソワレくるみ割り人形

12/14ソワレ、小野・福岡ペアのくるみ割り人形(@新国立劇場)に行ってきたので、メモ。

シュタルバウム家のパーティーの場面。

ルイーズ(クララの姉)を巡る恋模様が展開されます。詩人と青年、老人(スコットランド人の扮装をした人物)がルイーズに言い寄りますが、詩人と青年に気おされて、老人はルイーズ・詩人・青年の3人の輪の中に入れない感じです。

老人役の福田さんが、3人と少し離れたところで自分もその輪に入りたいと思いつつ、オタオタと入り損ねています。そんなオタオタしているところに、不意にルイーズが近寄ってき、すかさず手を取りエスコートする老人。とエスコートしたのもつかの間、また若者たちにルイーズを取られてしまう。なんてことない場面の人間模様が面白い。

ルイーズを巡る恋模様では後手に回りがちな老人ですが、仮面をつけて踊る余興での踊りはすごい。福田さん演じる老人の踊りはキレキレ。音楽の盛り上がりに合わせてキレキレの踊りを披露する姿には、3人の輪の中に入れずにいた年老いた人物の面影はありません。

パーティーが終わり、時計が12時を回って、クララは夢の中。ねずみの王様率いるねずみたちとの戦いが始まります。

主役の小野さんはこの場面で初登場します。小野さんのクララはちょっとお転婆風。ねずみたちを怖がってばかりいる女の子ではありません。対する奥村さん演じるねずみの王様は、クララ側の兵士(←弱い・・・)を馬鹿にしきっています。おちょくって、馬鹿にした感じの踊りが小憎らしい・・・。

ねずみの王様にやられて倒れるくるみ割り人形くるみ割り人形の仮面って、オペラグラスでよく見ると、結構すごい顔をしています。

倒れたくるみ割り人形ドロッセルマイヤーの魔法で甥に姿を変え、クララとパ・ド・ドゥを踊り始めます。この時のパ・ド・ドゥは、2幕で王子と金平糖の精に姿に変わって踊るグラン・パ・ド・ドゥとは、踊りの趣が違います。何というか、クララの高まる気持ちを精一杯、憧れの甥にぶつけるような感じと言いましょうか。周りは見えていない、自分の気持ちをストレートに表現した踊り。リフトも激しく、疾走感があります。若いなぁ、気持ちの高ぶりが伝わってくるなぁと感じます。

続く雪の国は、コールドバレエの美を堪能できる場面です。ですが、失敗した、この日は1階席で観ていたので、群舞のフォーメーションの妙が見づらかったのです。群舞の美を堪能するには、上方の階の方がおすすめです。すべてがすべて、1階席が素晴らしいわけではありません。

そんな雪の国の場面ですが、雪の結晶のソリスト(?)の飯野さんが素晴らしい。この音の時はこのポーズでいてもらいたい、このポーズはこの瞬間までどこまでも伸びるようにキープしていて欲しい、上げた脚は重力に従ってバッと落ちるように見えるのではなく自分で収めているように下ろしてほしい、といった点、音の捉え方がことごとく自分の好みに嵌っていました。

2幕はディベルティスマンが続きます。

アラビアの踊りの木村さん。巫女のように見えたり、男心を翻弄する悪女のようにも見えたりします。衣装は「アラジン」のルビーと同系統ですが、あの時の色気とはまた別の雰囲気。

ちなみに、今回は隣の席に外国の方(何となく舞台関係者っぽい)が座っていて、気に入ったダンサーには惜しみない拍手を送っていました。その外国の方が気に入ったらしきダンサーは2幕で2人いて、一人目は木村さん。カーテンコールの時も、舞台に登場した木村さんに大きな拍手を送っていました。

さて、謎の存在、蝶々。この日の蝶々は奥田さんです。相変わらず良く分からない存在、かつ、どういった見方をすればいいのか分からない踊り。だと思っていましたが、もしかしたら奥田さんの蝶々は、この踊りの本質を見せてくれたのかもしれません。

蝶々の振り付けは、緩急を楽しむもの、ふんわりと柔らかい踊りから瞬時に素早い動きに移る妙を楽しむもの、かな?ただ、パッパッと一つのポーズ、次のポーズと素早く移るものではなく、素早い動きの合間にゆったりとした柔らかな動きを挟む。ただし、次の素早い動きを予定してゆったりした動きをおざなりにするのではなく、ゆったりとした部分はあくまでゆったりと、だけど次の踊りの音と動きに遅れない。

花のワルツで舞台を盛り上げ、次は金平糖の精になったクララと王子のグラン・パ・ド・です。

今日も小野さん演じる金平糖の精はキラキラだ、アラセゴンに上げた脚の美しいこと!と、主役2人の踊りを堪能していました。で、あれ?アダージョの途中で、小野さんはもしかしたら脚を痛めた?続く踊りで、何となく、片方の脚の動きがもう一方と違い、慎重になっているように見えました。

アダージョに続き、王子のバリエーションが始まります。福岡さん演じる王子は、ジャンプの着地で5番に収めるべきときは、きっちり5番に収めます。これ見よがしではなく、嫌みの無い踊りは観ていて清々しいです。オケの音に合わてコントロールする踊りのフィニッシュも、好感度高し。また隣席の外国の方の話になりますが、2幕でこの方が気に入っていたダンサー2人目は、福岡さんです。

小野さん、脚大丈夫かなと思いつつ観た、金平糖の精のバリエーション。少し慎重になっているかなとは感じましたが、はた目には分からない感じです。いつもだったらもう少し回転していた気がする、少し控えめにも感じる・・・(心配)。

コーダ。福岡さんのマネージュは若々しく、速く舞台を疾走します。舞台を一周しても、はっきりとした感じで速度が落ちません。イーグリング版くるみ割り人形のグラン・パ・ド・ドゥはかなりハードだと思いますが、最後にこれだけのクオリティは、さすが!の一言です。小野さんは笑顔で輝かしく踊ります。脚を痛めたと感じたのは気のせいかな、うーん・・・。

1幕のパ・ド・ドゥのクララに比べ、2幕のグラン・パ・ド・ドゥの金平糖の精の踊りは、しとやかで輝きがあり、幸せに溢れていて、その輝きや幸せを観る者に届けるような感じです。金平糖の精の幸せオーラが舞台に満ち、劇場を包んでいきます。1幕で観た、感情の奔流のような激しいリフトはなく、呼吸を合わせた難しいリフトをスッと決めます。

この日はカーテンコールまで面白かったです。

皆、手を繋いでカーテンコールを行いますが、ねずみの王様は隣の王子と手を繋ぎたい。ですが、ねずみの王様が手を伸ばしてくると、王子はにこやかな笑顔のままサッと避けます。手を取ろうとすると、王子は手を隠して絶対手を取らせません。しょんぼりする、ねずみの王様・・・。

指揮者のバクランさんが舞台上にあがり、オケに対する盛大な拍手が沸き起こります。そしてバクランさんも出演者と一緒にカーテンコールに応えます。位置したのは王子とねずみの王様の間です。ということで、やっとねずみの王様は手を繋いでくれる人(バクランさん)が現れました。良かったね、ねずみの王様。