くるみ割り人形10/28②(@新国立劇場)

2幕のディベルティスマンの振付も、難しそうなものばかり。

スペインの踊りは女性2人、男性1人。ちょっとした手足や首の角度の違いなのでしょうが、寺田さんは見せ方が上手いなぁ。

アラビアの踊りは女性1人、男性4人で、リフト多用。紅一点の木村さんは地上で踊る時間より、リフトされながら踊る時間の方が多いのでは?男性陣にリフトされながら、前方に倒れこむ振付がありました。「マノン」の娼館の場面で似たような振付ありますが、空中で前方に倒れこむ恐怖をダンサーの方はどうやって克服しているのでしょうか。アラビアの踊りは色気が必要とされる役柄なので、木村さんだけでなく他日キャストの本島さん、寺井さんもハマった役柄になりそうです。

中国の踊りは京劇風。通常女性・男性1名ずつのペアですが、女性1名、男性2名。奥田さんが元気で軽やかでした。

ロシアの踊り。女性4名の中に、男性1名で、男性ダンサーが主役。福田君の踊りが爆発していました。1幕でおじいさん役をやっていた人と同じとは思えない。ロシアの踊りは爆音でどんどんテンポが速くなるにつれ、客席のボルテージもあがるので、尻すぼみな踊りだと肩透かしをくらうのですが、見事に最後まで観客を引き付けていました。大喝采。1幕でクララの父母役を演じていた貝川君と本島さんが、友情出演的にロシア人形風の格好で突如現れ、ロシアの踊りグループと一緒に踊っていたのが謎でした。

蝶々の踊り。謎の役「蝶々」はこれか!葦笛の踊りの曲で蝶々の格好をしたダンサーが踊ります。踊りも格好も蝶々だな、とは思いましたが、なぜ蝶々?葦笛の踊りはフランスをモチーフにしているので、フランスと蝶々ってなにか関係があるのでしょうか。

花のワルツは群舞の美しさが際立っていました。背景が緑と青の中間色で、中央にはビザンチン様式風(?)のいくつものドームをもつ左右対称の建物が描かれています。どこかで見たことあるような建物ですが、何の建物だっけ。上方にはオレンジ色のバラ科の花がいくつも吊り下げられています。背景の緑と花のオレンジ色のコントラストが美しい。補色ですね。女性陣の衣装は裾に向かって色が濃くなる綺麗なオレンジ色。何枚も布を重ねてあり、動くたびにフワーッと柔らかに広がり、オレンジ色のポピーの花が舞台上にたくさん咲いているよう。高揚感とちょっとした哀愁を含むチャイコフスキーの音楽との相乗効果で、いつまでも終わらずに見続けていたいワルツでした。

最後はお待ちかねの金平糖の精と王子のパドドゥです。やはり難易度の高い振付。小野・福岡組の息のあった踊りを堪能しました。顔や腕をあげる角度が揃っていて、観ていて気持ちいい。リフトでは、「絶対落とさないぞ」という福岡君の心の声が聞こえてくるような鉄壁のサポート。ソロパートではそれぞれの良さを発揮していました。福岡君は、高度な技術なのにこれ見よがしにテクニックを誇示せず嫌味の無い、爽やかで美しい踊り。ソロになると、水を得た魚感がハンパない。小野さんは音感豊かに、ニュアンスがあって甘やかな踊り。チェレスタの不思議な音色とキラキラした小野こんぺい糖の精が、夢見心地にさせます。コーダでも難易度高く細かな振付で、フィニッシュがオケの音に間に合うか息をのんで見守りましたが、杞憂に終わりました。小野・福岡組はいつも質の高い舞台を見せてくれて、本当に満足度が高い。

新しい作品に取り組むバレエ団の熱が舞台から伝わってきて、終始楽しく見られました。バクランさんの指揮や東フィルの奏でる音も舞台を盛り上げてくれました。今回はシーズンオープニングということでこの時期の上演でしたが、再演はやはり12月が良いですね。