12/22シンデレラ(@新国立劇場)

12月の新国立劇場シンデレラは、12/22小野・福岡組と12/23ソワレ木村・中家組を鑑賞しました。

小野さんのシンデレラはこれまで何回も観ています。シンデレラの演目自体、新国立劇場初演から観続けているので、もう行かなくてもいいかと思うものの、舞台はなまもの、一期一会。いつ観られなくなるか分からないので、観られるうちに観ておかなくては、と観に行くことに。

一幕の小野シンデレラ。お城で開かれる舞踏会に連れて行ってもらえないけれど、しょげません。誰もいない家で一人舞踏会を夢見て踊るさまは、元気で、ちょっとお転婆な感じ。ステップが身体に馴染んでいて、動きが軽いです。ただ元気な女の子というだけでなく、つま先まできれいに神経が行き届いて美しい。

留守番のシンデレラのもとに、昼間受けた施しに報いようと老女が現れ、一瞬のうちに美しい仙女に早変わり。この日の仙女は細田さん。上半身の動きが柔らかくきれいです。腕の動きが優美。新国立劇場シンデレラの仙女というと、川村真樹さんの仙女が気品があり、シンデレラへの慈愛を感じさせ素敵でした。細田仙女はシンデレラより少し年上の、優しく美しいお姉さんのように見えました。

仙女の招きで四季の精が現れます。春の精は五月女さん。春の浮きたつような気分が表された振り付けですが、テクニックのある五月女さんはさすが。細かいステップの連続で実は難しいアシュトンの振り付けをモノにしていて、観ているこちらが楽しい気分になってきます。

四季の精の各々の踊りが終わったら、仙女がセンターに立ち、踊りを先導していきます。コミカルな音に合わせて細かなステップを踏みますが、ここは音に合わせるのが地味に大変だろうな。ステップをはしょって、いかにも踊れてますと見せかける事はできるだろうけど。細田仙女はふわっとした見た目に反して、テクニックは盤石です。

続いて星の精たちが登場。かわいい踊りです。毎回思いますが、新国立劇場バレエのコールドは素敵です。

でも、ああ、また思い出してしまった・・・。何が?星の精が着用している水色のチュチュを見ると、あるものを思い出してしまう。

それはロビンちゃん(@がんばれロボコン)。

ロボコンに出てくるロビンちゃんは水色のチュチュを身に着けています。ちょっと色合いも異なり、デザインも見た目も違いますが、星の精が登場すると「ロビンちゃんの集団だ。」と思ってしまいます。色の記憶というのは強いのですかね。

白を基調としたきれいな衣装で輝くような美しさのシンデレラが、きらきらとした馬車に乗り、舞台を一周して1幕が終了。魔法がかかったようなこの場面は、夢見る小さな女の子(大きな女の子も?)だったらワクワクするところ。2幕への期待を抱かせる演出がにくい。

2幕があいて、一人、宮殿の舞踏会場に道化が座っています。今回の道化は木下君。道化は小柄でテクニシャンのダンサーが演じるものと個人的に思っているのですが、木下君は別に小柄ではありません。他日でキャスティングされているように、王子の友人役が本来のポジションと思うのですが、井澤(兄)君(こちらも小柄ではない)も道化。

道化を任せられるテクニックを持つ小柄のダンサーが不足しているのか、長身ではないテクニックのあるダンサーはこだわりなく配役するということなのか、良くわかりません。小柄なダンサーだと茶目っ気や憎めなさ、愛嬌が、外見が手伝って表現しやすいのに。ダンサーの役の表現の幅を広げようという親心(?)でしょうか?芸術監督が、「王子役は絶対長身」というこだわりがありそうなことは何となく分かりますが。

舞台に舞踏会の客人が加わり、シンデレラの義理の姉達も到着して、王子の友人に続き、ファンファーレが鳴って王子の登場です。王子役の福岡君が王様のような貫禄になっていないか注目しました。ほっ、大丈夫です。

王子の踊り、客人たちの踊りと舞台が進んでいき、不思議な雰囲気が舞踏会に流れてきます。舞踏会のメンバーが注目する中、四季の精たちに引き続き、シンデレラが現れます。すぐさま王子がシンデレラの元に駆け付け、王子の片手のサポートだけで、シンデレラはトウシューズで立ったまま舞踏会場の階段をしずしずと降りてきます。顔は真正面に向けて決して足元を見てはいけない振り付けで、ポワントで降りるのはさぞ怖かろう。この時のシンデレラは真顔。小野シンデレラだけではなく、他のキャストの時もそう。この真顔は、魔法が解けてしまわないだろうか、場違いだと追い出されたりしないだろうかという緊張感を表しているのですかね。一方王子は「なんて素敵な人なんだ」とでもいうようにシンデレラを見続けています。

ポワントで階段を降り終え、無表情だったシンデレラの顔が緩みます。初めて見るきらびやかな世界に感動しているかのようです。お付きが持っていた柔らかなヴェールをフワッと広げ、柔らかな表情になったシンデレラに王子はさらに魅了されたよう。そして羽の生えたかのような軽やかな踊りで、素敵な女性に出会った喜びを表現します。バレエに出てくる王子ってこういうのばかり・・・。小野シンデレラは王子の好意に最初は戸惑うものの、徐々に二人の心が通じ合っていきます。

軽やかなパを繰り出し、愛らしさと魅力を振りまく小野シンデレラ。シンデレラを探す王子のそばを彗星のように現れて、王子の恋心を掻き立てます。

小野さん、福岡君の二人のパドドゥは、何回もペアを組み続けているものの良さを発揮してました。リフトもサポートもとてもスムーズで、構えることがありません。絶対落とされることはないと、小野シンデレラは躊躇なく福岡王子の元に飛び込んでいきます。

舞台を観ていると、実際はどうなのか分かりませんが、小野さんは実は誰とでも合うタイプのダンサーではないという気がします。ムンタギロフが新国立劇場に出演した際、小野さんと米沢さんを交互に相手役にしていました。米沢さんとでは恋人同士に見えたのに、ラ・バヤデールで小野さんと共演した際、二人は恋人同士には見えませんでした。どちらかというと、見た目はまったく違うのに兄妹という設定の方が合っている感じ。そんなわけで、小野さん贔屓のわたしは、小野さんには福岡君(か、前シーズンの「テーマとヴァリエーション」でのペアが良かった奥村君)を相手役として希望しています。

舞踏会が佳境に入ってきたころ、12時の魔法がとけ、シンデレラは元の灰かぶりの格好に戻って慌てて宮殿を後にします。残されたのはきらびやかな片方の靴。王子が靴を拾い上げ、シンデレラを見つけるぞと誓って2幕は終了です。

3幕が開幕して、家に戻ったシンデレラ。楽しかった舞踏会を思い出し、一人踊ります。ここの小野シンデレラは王子が自分を探して追ってくるなんて、想像もしていない感じです。楽しい思い出を胸にそっと収め、舞踏会から戻ってきた義理の姉たちのお土産話に聞き入っています。そんなところへシンデレラを探している王子一行が登場。義理の姉たちの醜くもおかしな靴をめぐるすったもんだがあった末、シンデレラのポケットからもう片方の靴が転がり落ちて、大団円です。大それたことなど望まないタイプのシンデレラですが、王子の思いの強さにはにかみながらも、喜びで顔が輝いています。王子の思い人がシンデレラと判明し、義理の姉とシンデレラがハグ。姉がチョンチョンとシンデレラの頬に触れ、笑顔で「幸せになりなさいよ」とでも言っているかのような場面は、ジーンときてしまいます。

舞台が暗転し、少しづつポッ、ポッと星の精の持つステッキに光がともります。静かな星の瞬きのようできれいです。幸せをつかんだシンデレラと王子の最後の踊りは、満ち足りた幸福感が伝わってきて、観ている方も幸せな気持ちになります。王子の肩にそっと頭をもたせかけるシンデレラ。良かったねシンデレラ、という思いの中、終幕です。行くのを迷ったシンデレラの演目ですが、エンディングの幸福感がたまらない。やはり行っておいて良かった!