豪華な舞台のオペラを観ました

頚椎症なのですが、毎年春は頚椎症の神経痛と腕の痺れがひどくなります。花粉症のくしゃみのせいで、頸椎に変なダメージが与えられてしまうのか、よく分かりませんが春になると症状が悪化します。ロキソニンを服用したくらいでは全く痛みが軽減しませんが、チケットを無駄にしたくないので観劇に行ってきました。

行ってきたのはアイーダ(@新国立劇場)です。オペラは人生で数えるほどしか観たことがありません。なので、歌が、指揮が、オケが、と細かいところは分からないので、自分のための備忘録です。

アイーダを観るのは10年ぶりです。豪華な舞台と評判なのでちょっと行ってみるかと10年前に観たときは、安い席にしてしまったため舞台が遠くて迫力減でした。というわけで、今回はもう少しいい席にしてみたのです。

前回の教訓1。ゼフィレッリ版のアイーダは舞台に紗幕がかかっていて、オペラグラスで見ると紗幕の小さなアミアミが気になってしょうがない。よって、肉眼で観れる席にした方が良い。

前回の教訓2。第3幕(ついでに第4幕)は第1幕・第2幕のような華やかな舞台ではなく、薄暗い舞台設定。そのため遠くから観ると、暗くて舞台での動きがよく見えず、眠気を誘う。よって、舞台が良く見える席の方が良い。

幕が開いて第1幕。のっけから壮麗な舞台美術に圧倒されます。第2場の神殿の場面では多くの登場人物が舞台上に整然と配置され、その人々を照らす照明が美しい。中央部分は明るく、周辺に行くにつれ徐々に明度が下がっていきます。が、かといって舞台の端にいる人々が影のようにつぶれて見えなくなるというのではない、照明の絶妙さ。巫女たちの不思議な歌声に誘われて、古代の神秘的な神殿を覗き見しているような感覚がしました。

第2幕第1場は王女アムネリスの部屋。花園です。いえ、お花があるわけではなく、笑いさざめく女性たちの集団が、華やぎ芳香を放っているようで、花園のように見えました。しかしここで、ある妄想がいきなり浮かんできました。ここにブルゾンちえみさんが混じっていても、違和感ないよね、と。古代エジプトが舞台のアイーダなので、皆さん、アイメイクは強め。そして髪形はロングのボブスタイルです。服装替えて、髪をロングにしたブルゾンさんが紛れ込んでいたら、この集団にうまく溶け込むのではないか。

第2幕第2場はお待ちかねの凱旋の場です。圧倒的な華やかさ、晴れがましさ、豪華さ。これが観たかった!舞台上にはあふれんばかりの人。

前回観たときは平日18:30開演だったので、周りの席の人には第2幕が終わったら帰ってしまった人が結構いました。アイーダと言えば第2幕が見どころ、2幕も観たし最後まで観ると遅くなるから帰ろう、という考えだったのでしょうね。

高らかなラッパ(正式名称知りません)の音が、高揚感をもたらし舞台に華やかさを添えます。

騎手が本物の馬を乗りこなして走り去っていく演出も、前回観たとき同様、今回もあり。というのは、バレエの方はいつの間にやらドン・キホーテで本物の馬が登場しなくなったので、オペラでもワンポイントの登場の騎手と本物の馬は割愛されているのでは、と疑っていたからです。さすがにオペラではそんなことはしないようですね。それにしても舞台上に多くの人がいるのに、よく事故も起こさずうまく馬を操れるものです。

第2場では東京シティ・バレエ団のダンサーが祝福の舞を踊る場面もあり。ダンスを観るのはやはり楽しい。楽しい思いをしていると、神経痛と腕の痺れが軽減したように感じます。

第3幕は夜半のナイル川の場。1幕・2幕の華やかさ、豪華さから一転、薄暗い夜の場面です。この静かな場面で初めて主人公たちの歌声に聞き入った気がします。アイーダ役のイム・セギョンさんの歌声が美しく、声量があって聞きごたえがあり、ラダメス役のマヴリャーノフさんの歌声はつややかで色男の声でした。1幕・2幕は舞台が華やかで賑わいがあったため、主人公たちの歌や感情に入りこんでいけませんでした。3幕の薄暗くて地味な舞台装置には、歌にフォーカスさせるための効果があったのか・・・。ちなみに、前回観劇した10年前は仕事の後のアイーダ鑑賞だったので、薄暗い3幕で早々に寝落ちしていました。

第4幕。第3幕で思いもよらず、敵に行軍情報を伝えることになってしまったラダメス。弁明をせず、粛々と判決を受けるラダメスを、王女アムネリスが気が狂わんばかりに案じる姿にスポットがあたります。アムネリス役のセメンチュクさんの身も世もない姿と迫真の歌声に鷲掴みにされ、息を飲んで舞台を観続けました。アムネリスは1・2幕ではただの高飛車で嫌な性格のお姫様という感想でしたが、身がひきちぎられんばかりの嘆きぶりが、見る者の心にズドンと響いてきます。

3幕も主人公たちの歌、演技に引き込まれましたが、4幕も同様です。「アイーダ」は1・2幕は豪華な舞台装置、3・4幕はオペラ歌手の歌と演技にスポットが当たって、それぞれの良さが楽しめるバランスのいい作品ですね。

ラダメスが神殿の地下室に生き埋めになり、4幕も地味な舞台装置で終わりそう。と思っていたら、神殿のセットを乗せたまま舞台がせりあがります。ラダメスが入れられた神殿の地下室と、その上の神殿、上下2段の様子が、客席から見えるようになりました。上の神殿も重厚さがあるしっかりした作りで、下の地下室も安っぽくないしっかりした作り。素人目で見ても、アイーダの舞台って本当にお金がかかっていますね。

舞台が終わって、カーテンコール。セメンチュクさんの登場時は、熱狂的な歓声が上がっていました。どのオペラ歌手が人気者なのか分からないのですが、どうやらセメンチュクさんは相当な人気者なようですね。客席に手を振ったり、投げキスをしたりするチャーミングさと、オケの人を何度もねぎらう姿をみると、どうやら舞台の外でも魅力的な人柄らしいのが見て取れました。これにてアイーダ観劇記、終了です。