バレエ・アステラス2018

バレエ・アステラス2018(7/28@新国立劇場)を観てきました。印象に残った演目についてだけ記録しておきます。

ノーザン・バレエの宮田彩未さんとジョゼフ・テイラーの「夏の夜の夢」第2幕のパ・ド・ドゥ。オベロンとタイターニアが仲直りして愛を確かめ合う場面です。ニクソン版「夏の夜の夢」を観るのは今回が初めてです。リフトをしつつフォーメーションを変えたりして、意外に見どころがあります。

この演目は「大人だなぁ。」と思う作品です。「大人」といっても、エロティックという意味ではありません。ほんのりとした色っぽさも時折感じるのですが、情熱に流されて自分が見えなくなっている若者の恋とは違った、穏やかでしみじみとした愛を大人が再確認しているといった感じです。

情熱的に若々しく踊ったら、また違った雰囲気の作品になるはず。大人っぽく感じたのは、ダンサーの演技力なのでしょう。アシュトン版とは違う、「夏の夜の夢」パ・ド・ドゥを観られる良い機会でした。それにしても、タイターニアの衣装は妖精の女王にふさわしい輝きのあるロング丈のものでしたが、オベロンの衣装が腰みの風なのは何故なのでしょうか。

ジュネーブ大劇場バレエ団の相澤優美さんとフリーランスのヴラディミール・イポトリフの「End  of Eternity」。プログラムによると「人生の最後の惜別を表現した作品」とのこと。長めのコンテンポラリー作品です。コンテンポラリー作品は良く分からないので、上演時間が長くなるといつの間にか寝落ちしてしまうことが多い。今回は大丈夫かなと思いながら観ていましたが、ちっとも眠くなりませんでした!

ピアノをメインとしたオケの音楽が良かったのか、コンテンポラリー作品によくみられるシンプルだけどクールな照明や演出が良かったのか。眠くならなかった理由を色々と考えてみましたが、相澤さんのダンサーとしての力に目が離せなかった、というのが一番の理由です。

相澤さんは白い大きめのシャツを身にまとい、シャツの裾からはすらりと伸びた生足が見えています。動きに従って脚についた筋肉の形が露わになりますが、筋肉の形や脚のラインがきれいで惚れ惚れします。

振付自体は、それほど目新しいという感じのものではありません。ですが相澤さんの踊りからは「この作品の世界観を伝えたい、観てもらいたい、感じ取ってもらいたい。」といったメッセージを発しているように感じました。作品の世界観はプログラムの解説を読めば何となく分かります。おそらく型だけをなぞっているダンサーが踊っていたら、もっとつまらなく感じ、寝落ちしていたのではないかと思います。ダンサーの精神性が、作品に力を与えているのではないか。コンテンポラリーダンスって、ダンサーの精神性で面白くも、つまらなくもなるものなのかもしれないと思いながら観続けていました。相澤さんのことはまったく知らなかったのですが、良いダンサーに巡り合えました。

若いダンサー2組がそれぞれ踊った、ロメオとジュリエットのバルコニーパ・ド・ドゥと、ジゼル2幕のパ・ド・ドゥ。細かくは書きませんが、若いダンサー達にこの2作品は難しいのか・・・。

米沢さんと奥村君の「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。米沢さんは主役オーラが強く、軽快かつ優雅です。トリプルを混ぜたフェッテも余裕。アラベスクのポーズで後退するステップも、曲の尺をいっぱい使ってステップを踏みます。以前、外国人ダンサーがこのアラベスクでの後退部分をあっという間に止めてしまった舞台を観たことがありますが、アラベスクでの後退ステップって難しいのでしょうか?

相手役の奥村君は元気。アントルシャは細かく高く、トゥール・アン・レールはピタッ。明るい演目は、奥村君に良く似合います。大盛り上がりで二人の出番は終了です。

トリの高田茜さんと平野亮一君の「ジュビリー・パ・ド・ドゥ」。2人はスターですね。特に高田さんのオーラがすごい。

幕が開くと、舞台下手から2人が勢いよく飛び出してきて、踊り始めます。

舞台にセットは無く、舞台後ろの幕がブルーグレイのような、青みがかった薄いパープルのような色に照らし出されているだけ。後ろの幕の色合いが高田さんのチュチュの色に似た色なので、2人が背景の色に埋もれてしまうのでは?と勝手な心配をしていました。が、2人の輝きは強く、背景に埋もれるなんてことはありませんでした。

2人の踊りはグラン・パ・ド・ドゥではないので、息つく間もなくスピーディに踊りまくって、短時間で終了です。こんな短い時間の登場ではなく、もっと2人の踊りを観たかった。来年6月にNBSで英国ロイヤルバレエが招聘されますが、その時は高田さん主演の舞台が上演されると嬉しいですね。