尾瀬沼経由して大清水へ

7時過ぎに桧枝岐小屋から大清水に向かって出発。尾瀬沼方面は行ったことがないので、どんな景色が待っているのか楽しみです。

尾瀬沼方面に行く道も木道が整備されています。木道の両側は笹が生い茂り、広葉樹や針葉樹が生えた普通の低山の中を進んでいく感じです。茶色と緑色でいっぱいの森の中で目に付く花は、黄色いマルバダケブキ。木道を横切って流れるちょっとした沢の流れが涼し気で、瑞々しい黄緑色の苔が生えています。

と、最初の方は森の中の景色を楽しんでいる余裕もありますが、意外に次の沼尻休憩所までが長い(見晴から沼尻休憩所までルートタイムで2時間15分位)。木道が終わり、両側を木々に挟まれた岩場を下ります。そして岩場が終わると・・・。

突然、視界が開け、山間にぽっかりと小さな湿原が広がっていました。白砂湿原に到着です。森の中の木道上では見上げても空は狭く窮屈な感じがしましたが、到着した湿原では空は青く高く、解放感を感じます。

岩場が終わって平坦になった道は再び木道が敷かれ、先へ先へと繋がっています。白砂湿原の間を通る木道には休憩スペースも設けられています。尾瀬ヶ原で終わりかけのようだったワタスゲが、ここではたくさん咲いています。尾瀬ヶ原の方では細長いナガバノモウセンゴケが多かったのですが、この辺りでは細長いものに混じって楕円形のモウセンゴケもわりあい目につきます。

さらに歩いていくと沼が見えて、沼のそばに新し気な建物が建っています。沼尻休憩所です。

階段を昇った先に大きなパラソルがいくつか設置された、ウッドデッキのテラスがあり、その先に缶ビールや清涼飲料水の自販機、店頭でアイスやお菓子などを売っています。わたしは給食で食べたことがある(と思う)クレープアイス(中に挟まれたクリームが冷蔵なら冷たく、冷凍にすれば固まってアイスにようになる)を購入(200円)。

尾瀬沼から渡ってくる風で涼しさを味わいながらクレープアイスを食べていると、桧枝岐小屋で出会った人が懐かし気に語った話を思い出しました。「何年も前に尾瀬沼方面に行ったときに、沼尻に年季を感じる休憩所があって、そこでお蕎麦を食べた。あの休憩所はまだあるのかなぁ。」

年季を感じる建物は見当たらないので、沼尻休憩所の店舗スタッフのおじさんに「お蕎麦を食べられる所があったと聞いたのですが」と尋ねてみると、

「3年前に発電機から発火して、周りに燃料をたくさん置いてあったので、火事ですべて燃えてしまいました。この建物は今月(7月)出来たばかり。今は太陽光発電になっています。お役所と水の問題で意見が合わなくて、ここで作ったものは提供できなくて・・・。」

そういえば、新しい休憩所のそばに焼けただれた木材が少し残っていました。この焼けた木片は何だろうと思っていたのです。火事で燃えてしまった跡だったんですね。水の問題というのは、塩素を入れた水でないと使ってはいけないと指導されていることのようです。そのままで美味しい水に塩素を入れるのも何だかなという気がしますし、お役所側が衛生面の心配から塩素を入れろというのも分かるし、うーん・・・。

という次第で、今のところ休憩所でお蕎麦を食べることはできません。おじさんが一人で切り盛りしていてとても忙しいらしいので、水の問題が解決してもお蕎麦を提供するようになるのかは不明です。売っているアイスや飲料は休憩所のおじさんが運んできているとのことで、懐かしいアイスのチョイスはさすがだなと思います。ちなみに休憩所のトイレも新しい。使用しなかったので中の様子は分かりません。

沼尻休憩所を後にし、大江湿原へ。シーズンには多くのニッコウキスゲが見られるという大江湿原ですが、尾瀬ヶ原同様、ここでもニッコウキスゲは終わりかけ。といっても尾瀬ヶ原より多くのニッコウキスゲが咲いています。そしてニッコウキスゲ以外の花もたくさん。コオニユリ、ヤナギラン、コバギボウシ、ミヤマシシウド、名前の分からない白い花。橋の上からは、小川の中に多くのヤマメがみえ、木道から離れた小川にはサギが1羽いました。来てみたかった大江湿原ですが、コンパクトに多くの花を楽しめました。

 大江湿原から尾瀬沼ビジターセンターはすぐ近く。

突然ですが、トイレのチップについて書いておきます。ビジターセンター近くの公衆トイレ外で、しばし荷物整理をしていました。そのあいだ観察していたたら、トイレのチップ払わない人が結構いる。それは沼尻休憩所の公衆トイレでも同じでした。荷物整理中に、トイレを利用しに来た人は5人。5人目の年配女性はチップを払ってましたが、その前の4人は払わず。チップ制に気付いていないわけではなく、チップ入れの箱をジッと見たのに無視です。どういったタイプの人が払うか否かは、年齢や見た目に関係ありませんでした。確実にチップを払ってもらう良い仕組みがないものだろうかと、考えてしまいます。強制的に徴収するようになると、チップ惜しさにそこら辺で用をたす人が出てきてしまうかもしれないしねぇ。

ビジターセンターの外には望遠鏡が2台設置してあって、燧ケ岳の山頂を見ることができます。望遠鏡を覗くと、岩っとした俎嵓(だと思う)に立っている人が見えます。今回尾瀬沼方面に来たのは燧ヶ岳の情報収集(どの登山道から登ったら良いか)のためでもありました。登頂している人を望遠鏡で見てしまうと、「登りたい!」という気持ちが強くなってきます。湿原を歩いていても暑かったのだから、燧ケ岳に登っている人たち相当暑いだろうなという気もしましたが。

肝心の燧ヶ岳登山おすすめルートですが、結局良く分かりません。山小屋の人は御池から登るのがおすすめ(登山口がアクセスしやすく、登山途中の湿原が素晴らしい)と言いますが、ビジターセンター情報では長英新道からが、なだらかで比較的登りやすいとのこと。一方で、御池からは長時間で大変、迷いやすいといった意見もあり、長英新道はぬかるみがあると言います。ナデッ窪は管理者がいない道で荒れている、見晴新道は新しい道なのでぬかるみ易いとも言います。さて、どういうルートで登って下りるのが良いのか。

ビジターセンターから三平下の尾瀬沼山荘は比較的近い。ここから先は一ノ瀬休憩所まで、ゆっくりとくつろげるところはありません。そのため、尾瀬沼休憩所で昼食をとることにします。イエローココナツカレーがおすすめと掲示されていたので、注文(確か900円)。タイ風カレーで、具は細切りのタケノコと、チキンと思しき謎の加工肉。味は普通です。

尾瀬沼山荘から先は木道があったりなかったり。そして木道は新しいものを設置工事しているものの、以前からあるものは破損しているものが多い。石を埋め込んだ階段があり、滑らないように気をつけて下っていきます。普通の山の中を下っていくように、延々と下り続けるのが想像していたよりつらくて、山小屋で出会った人の言葉を思い出します。「大清水まで行くの?頑張ってね。」とエールを受けた意味が分かった気がします。途中で湧き水の岩清水をコップで受けて、一飲み。

思ったより消耗してたどり着いた一ノ瀬休憩所内は、無人。休憩所内に虫がたくさん入り込んでいて、これなら外で休憩した方が良さそうです。

ここから大清水まで低公害乗り合いバスが出ていますが、大清水の集合時間までかなり時間に余裕があるので、旧道を下っていくことにしました。旧道は最初は瀬音が聞こえる気持ちのよいハイキングコースですが、ところによりぬかるみありで足元が汚れ、寄ってくる虫が煩い。近くの林道を走る乗り合いバスの音が聞こえてくると、バスに載っておけばよかったかという思いも頭をもたげてきます。

大清水に到着すると、あれ、あまり人がいない。14時半過ぎのこの時間帯、鳩待峠だったらハイキングや登山を終えて帰ろうという人で賑わっているはず。ここ大清水にはハイカーは10人もいません。入山の分散化を図ろうとしているそうですが、大清水に下りてくる人は鳩待峠に比べまだまだ少ないようです。

バスの到着時間まで大清水の休憩所で、同じツアーの人に草笛のレクチャーを受けたのもいい思い出です。前日、見晴近くの湿原で夕日や夜空を見ていたときに、「見上げてごらん夜の星を」の曲が聞こえてきました。レパートリーは坂本九さんの曲だけでなく色々。山小屋のスタッフさんがサービスで草笛を吹いていると思っていたのですが、実は同じツアーの人だったことがここで判明です。宿泊していた山小屋でも草笛は大人気で、教えを乞う人がたくさん集まってきたとか。一芸があるのはいいな。

旅行会社のバスが来て、帰宅の途につきます。帰りのバスは満員です。バスに乗っていると、車道を一匹の鹿がのんびりと横切っていきました。害獣扱いされている鹿ですが、随分のんきなものです。

こんな感じで尾瀬ハイキングは終了です。今度尾瀬に行くときは、満開のニッコウキスゲを見るんだ、燧ケ岳に登るんだと決意して。