3日目は五色ヶ原山荘まで行く

立山ツアー3日目のメモ。

3日目の朝は夜明け前に起きだして、4時半前から一ノ越山荘の外で日の出を待ちます。雄山を見上げると、日の出を雄山で迎えようとする人たちのランプの明かりが、登山道に点々と見えます。夜明け前の外は寒い。だんだんと明るくなってくるなか日の出を待っていると、山荘の人がガラっと窓を開け、「富士山が見えますよ。」と教えてくれました。

えっ、富士山?富士山が見える?そうです、ギザギザとした山頂部分が山の間から見えていたのです。2日目に一ノ越山荘到着後、さんざん山並みを眺めていたのですが、山頂部分だけの富士山にはさすがに気づきませんでした。もう少し下の部分まで(冠雪時だったら冠雪部分と雪に覆われていない部分の境目辺りまで)見えていれば気づいたでしょうが。言われてみれば、確かにあの上部のギザギザがある台形の形は富士山。

まだかな、まだかなと待っていたモルゲンロートですが、太陽は山の陰に隠れてしまい、一ノ越山荘そばからはっきりと見えません。そのため山の陰から漏れてくる光で、山並みにきれいに光が当たりません。そんなわけで少しだけ山並みがピンク色になったかな、という程度で諦めました。きっとこれ以上待ったとしても、もっと多くの部分が赤く染まることはないと。

一ノ越山荘の朝食は並んだ順、早い者勝ち。提供開始時間前から列を作って並んでいると、きれいにテーブル上に配膳されている朝食セットが目に入ります。個々の席には、固形燃料で加熱する鍋のようなものがセットされています。あれは何?と思っていたら、目玉焼きを焼くための浅い鍋でした。予め鍋にはミックスベジタブルがセットされていて、卵をコンと割って入れたら蓋をして焼き上がりを待ちます。時間がかかるかと思いましたが、思ったより早く焼きあがります。アツアツの目玉焼きが食べられるのは嬉しいサービスです。

3日目は初日、2日目よりは暖かい気がするものの、やはり早朝は寒い。この日は五色ヶ原山荘までの行程です。まずは2日目の縦走路から見えた富山大の施設がある、浄土山へ。道々、早朝から働くヘリが快晴の青空を飛んでいく姿を何台も見ました。救助のためのヘリではなく、物資をぶら下げて山小屋に必要なものを運ぶヘリです。物資を運んでくれているヘリを見ると、嬉しいようなありがたいような気持になります。

ここも別山同様、最初に南峰に行き、ザックを置いて北峰に向かいます。北峰には遠目から何かの遺跡のようなものが見えます。北峰に向かう途中の登山道は、霜柱が降りていました。水たまりみたいな小さな池のようなところは表面に氷がはっています。寒いはずです、8月中旬なのに霜柱に、池の表面の薄氷。

北峰に近づいていくと、ロープが張ってあって石組みの遺跡状のものの近くには、立ち入ることはできません。遺跡のようなものは慰霊碑でした。霊山で大切に守られている慰霊碑。

浄土山の次は龍王岳そばの巻き道を通ります。岩でできた龍王岳は管理された登山道がありません。そのため登頂はせず、巻いていきます。それでも自己責任で登っている人はいるわけで、踏み跡をたどって果敢に登っている人もいました。他人事ながら、大丈夫なのかと心配になります。

次の鬼岳も登頂せず、巻きます。巻くといっても、けっこう急な岩場のの道を下っていきます。金属製の梯子も下っていきます。鬼岳の巻き道は時期によっては雪渓になっているそうですが、この日の通過時には巻き道からかなり下の方にまで、雪渓は後退していました。よって、雪渓上を歩くこともなく、ゴロゴロしているけれど平坦な登山道を苦労なく歩くことが出来ました。

龍王岳、鬼岳は巻きましたが、次の獅子岳は登ります。獅子岳に登る手前にちょっとしたスペースがあるので、一ノ越山荘でもらったお弁当で腹ごしらえです。ここは他の登山者も休憩していたので、獅子岳に登る前に一休憩する定番の場所なのかもしれません。

獅子岳は久々の登りらしい登りで、山頂に着くまで地味にキツい。獅子岳への登りは花がたくさん咲いていました。クロユリがあるという情報を聞いたのですが、どこにあったのか気づきませんでした。開花時期ではなかったのかもしれません。クロユリは見られませんでしたが可憐できれいな花々に慰められながら、頑張って登り続けます。

獅子岳山頂は広くはないけれど、狭いという程でもありません。視界が開けていて気持ちが良い。黒部湖も見えます。山頂では我々ツアー一行を惑わす黄色いアゲハチョウがひらひらひらと飛んでいました。

せっかく登った獅子岳ですが、ザラ峠を下っていきます。ザラ峠までの下りがザレた急な道で、気が抜けません。ところでザラ峠は漢字で書くと「佐良峠」。一ノ越山荘に貼られたポスター(だったか?)に書いてありました。何だか納得のいかない漢字です。漢字の字面を見ると、険しい雰囲気は感じません。なぜこの漢字?カタカナの「ザラ」だと、ザレた道なんだなと見当がつきやすいのですが。

いったん下った峠ですが、五色ヶ原山荘までは登り返します。険しい登りではありませんが、もくもくと登っていきます。目を転じると、緑の植物に覆われた山肌や、一方で植物が一切生えていない赤土が露出し山肌が崩壊したような斜面が見えます。

どこまで登っていくのだろうと思っていると、木道が敷かれた道にたどり着きました。前方には赤い屋根の五色ヶ原山荘が見えます。山荘への道は、綿毛になったチングルマがたくさん生えています。その他にも高山植物の花ががたくさん咲いています。圧倒的にチングルマが多く、ここはチングルマの大群生地のようです。もう少し時期が早かったら多量のチングルマが咲いていて、さぞきれいだったことでしょう。山に囲まれてぽっかりと広がった高原は、天上の楽園のような雰囲気です。

五色ヶ原山荘で泊った部屋は2階。窓からは五色ヶ原が一望できます。何だかアルプスの少女ハイジのテーマソングを歌いたくなります(歌わなかったけど)。他の部屋からは富士山が見えました。一ノ越山荘のときのように天辺部分が見えるのではなく、一目で富士山と分かる形で見えます。

五色ヶ原山荘は、雨水などを貯めて水を使用しているのですが、お風呂があります。男湯・女湯が別々にあるのではなく、時間制で(30分交代?)男湯・女湯に変わります。もちろん石鹸などは使えませんが、山奥の高原で汗を流せるだけでもありがたいです。

流しの水は飲料水用でありません。ミネラルウォーターを購入するか、スタッフの方に頼んで無料の塩素入りの水をもらうことになります。わたしは粉末のポカリスエットを入れるので、塩素入りの水をスタッフの方にもらうことにしました。どこで入れるのかと思っていたら、スタッフの方がボトルを持って厨房に入っていきます。無料の塩素入りの水は厨房の蛇口から入れてもらうのでした。ですから宿泊者が自由に汲めるようにはなっていません。

五色ヶ原山荘の乾燥室。ここの乾燥室は、隣にある建物(発電機器などが入っている?)からダクトで繋がれて、自然風より若干温かい風が流れ込んでくる仕組みです。暑すぎることもなく、いい風が入ってくるので乾きもなかなか。

夕飯は千切りキャベツ添えエビフライ2本、もやしのナムル(?)、ナスの煮びたし、春雨サラダ、漬物、白米、玉ねぎのお味噌汁。玉ねぎのお味噌汁は苦手ですが、ここのお味噌汁に入っている玉ねぎは、じっくり火を通して柔らかく甘くなっていたので美味しかったですね。

食後はいつも通り、夕日に染まる周囲の山々を見ます。よく飽きないなと思いますが、きれいに染まった美しい山を見るのは楽しい。富士山もきれいでした。ここ、本当に天上の楽園かもしれません。

翌日の出発時間が早いので、星空観賞はお預け。チングルマが満開のときにまた来たい山荘だと思いながら、3日目は終了です。