くるみ割り人形(@新国立劇場)

新国立劇場バレエのくるみ割り人形初日を観てきました。

再演のイーグリング版くるみ割り人形、ということで簡単にメモ。

簡単な感想は、雪の結晶の群舞きれい!と小野さんは今回も音楽性豊か、です。

くるみ割り人形は子役ダンサーが通常の公演より多く出演します。ということで、父兄なのかか友人知人一家なのか、そして子供も楽しめる演目ということもあり、客席も子供が多い。といっても、ガヤガヤと煩いわけではないので良いですね。なにより客席が満員に近いと、何となく観客の期待感みたいなものが高まって、公演が盛り上がる感じがするし。

さて肝心の公演。冒頭にも書きましたが、雪の結晶の群舞がきれいできれいで、観ていて震えます。

ゆるやかに回転するダンサーが、パウダースノーのような雪の結晶ひとつひとつが音もなく舞いながら地上に降ってくるように見えます。ダンサーたちが集団で交差しながらグランジュテを続けるところは、壮観です。なにより、スタイルの良い人ばかりのダンサーが、揃えに揃えて踊るさまは、見ごたえがあります。観ていて1幕でテンションがあがるのは、この雪の結晶の群舞とその前のクララとくるみ割り人形のパ・ド・ドゥです。

遡って、1幕のねずみたちと兵士たちの戦い。期待のダンサー、騎兵隊長役の速水君がいい。軸が曲がってしまっても、最後はピタッときれいに終わらせることが出来る。

騎兵隊長が目を引く動きを見せる一方、ねずみと兵士たちの戦い自体は最終的にはねずみたちの勝利。前回同様、くるみ割り人形側の最終兵器の大砲が出てきますが、飛距離10数センチ。飛んだというより、発射してすぐ落ちたという感じのショボさです。そりゃ負けるよ。そして兵士たちが捕虜になって舞台から退場。

傷つき倒れたくるみ割り人形のそばで悲しむクララ。ドロッセルマイヤーの魔法でくるみ割り人形がクララの憧れの男性(ドロッセルマイヤーの甥)に変身し、クララとパ・ド・ドゥを踊りだします。穏やかな金管の音色が、ロマンチックな場面を彩ります。(金管が音を外さなくて良かった!)

ここの部分、音楽もパ・ド・ドゥもきれいで胸がいっぱいになるのですが、パ・ド・ドゥの始まりと前の場面とのつながりが困るのです。というのは、観ているわたしは、パ・ド・ドゥの始まり部分では、まだひとつ前のお笑い場面(捕虜になって舞台を退場する兵士たち)を引きずっています。せっかく好きな場面なのに、のっけはお笑い場面の余韻(?)で、すぐにロマンチックなパ・ド・ドゥの世界に入れない。近くの席の人たちは笑っていいい場面でも生真面目に鑑賞しているので、もっと感情をあらわにしても良いいのにと思いますが、舞台を楽しみ過ぎると次のシーンに乗り遅れることもある・・・。

2幕のディベルティスマン。アラビアの踊りは本島さん。本島美和と仲間たちという感じで、本島さんが紅一点で数名の男性ダンサーが恭しく従う。ハートの女王といい、カラボスといい、雰囲気作りがうまくて、男性ダンサーを従える姿がサマになります。

中国の踊りの奥田さん。技術がしっかりしていて、はじけてて、可愛い。

ロシアの踊りは数名の女性陣の中に、黒一点の福田(兄)君。手始めはアクロバットな側宙(正式名称知りません。)。その後も高度な技術を見せて、舞台を盛り上げていました。改めて、福田君の運動神経の良さが分かる踊り。

蝶々は細田さん。細田さんは踊りがきれいなだけではなく、運動神経が相当良さそうな気がします。ピルエットの軸が細くて、キュルルッと回る。

群舞の花のワルツはやはり楽しい。ワルツは音を聞いているだけでワクワクしてきます。照明がカッと明るくないのが少々寂し気な雰囲気ですが、次々と繰り広げられる群舞が楽しい世界に誘う。飯野さんは好きなタイプの踊り方をするダンサーなので、花のワルツのソリストで見れて嬉しい。

トリはこんぺい糖の精と王子のグランパ・ド・ドゥです。こんぺい糖の精は小野さん、王子は福岡君。

アダージョは息の合った踊りを見せる。顔や身体の向き、腕の上げ方のユニゾン。安全を重視した無難な踊りではなく、絶妙のタイミングでスムーズにリフトし、二人の世界を作っていきます。

福岡君の男性ヴァリエーションは、自分のテクニックを誇示するのではない、嫌みが無くて品が良く、美しい踊り。マネージュは若々しく元気に廻る。

小野さんの女性ヴァリエーションは、音楽性豊か。音に踊りを合わせているというより、小野さんが音を奏でているかのようです。どうやったらここまで音楽性豊かに踊れるのだろうか。うっとりと観てしまいます。

コーダは二人で盛り上げて。早いテンポでも息の合った踊りを見せる。観ているこちらは満足度がさらに高まってきて、夢の国に連れて行ってもらいました。

ですが、幸せな気分になってくる半面、ダンサーはいくつになっても踊り続けていられるわけではないので、いつまで二人の踊りを観ていられるだろうかという思いも。

こんな感じで、今回のくるみ割り人形初日鑑賞日記は終わりです。