NINJA

”あなたも忍者、わたしも忍者、目つぶし投げて・・・(FRANK CHICKENS)”

ではなくて

”ひっそり こっそり、ひっそり~”、”ゲコゲコ月光~”

森山開次さん「NINJA」を観ました。

といっても、もう10日以上前の観劇なので、かなり忘れています。

そんなわけで特に印象に残っている部分だけ少し。

「NINJA」は、森山さんによる以前の新国立劇場公演「サーカス」に次ぐ、「こどもも大人も楽しめるダンス公演」という触れ込みです。森山さんが描くチラシの絵からして、楽し気。森山さんのイラストがもしぬりえとして売り出されたら、欲しい。

客席に入ると、天井から大きな手裏剣がいくつも吊り下げられています。手裏剣といっても本物を模したようなものではなく、子供のころ2枚の折り紙で作ったあの手裏剣と同じ形のものです。色とりどりの手裏剣を見ていると童心に帰っていく気がします、まだ開演していなくても。

「NINJA」は、やはり楽しく、質が高い演目でした。

テーマソングがキャッチーです。(上の「ひっそり、こっそり」とか「ゲコゲコ月光」とか)

舞台の床面に映し出される映像がきれいです。舞台上のダンサーの動きと、床面の映像が相まって、何だか別の世界に連れていかれます。「サーカス」の時も床面の映像がきれいで、不思議な気分を味わいましたが、今回も不思議な気分。

ダンサーが粒ぞろいです。どうやってこういう面白いダンサーを集め、そしてその良さを引き出す演出ができるのだろう。

女性ダンサーの浅沼さんと引間さんによって、新体操のリボンを使ったダンスが踊られます。きれい!新体操の経験がないダンサーが数か月かけてリボンの扱い方を習得したとか、新体操をかじったことがあるダンサーが舞台で披露しているとかではありません。経歴を見ると、お二人は本格的に新体操をやっていらしたようで、そりゃ、レベルが違うわけです。「NINJA」と銘打った舞台で新体操のリボンを見られるとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。

踊れる女優(プロフィールより)、中村理彩さんはポワントを履いてソロを踊ります。金襴緞子風の和テイストのチュチュが、きれいで可愛い。群舞のときの忍者衣装との違いが鮮やかです。洋風の顔立ちの中村さんですが、メイクもどことなく和を感じます。中村さんによるポワントでのダンスは、新体操の2人組同様、レベルが高い。ピタッ、ピタッと踊りがきまります。和テイストといっても、こってこての和風バレエではなく、クラシックバレエのしっかりした技術が必要とされる振付でした。「NINJA」でポワントでのダンスが観られるとは思っていなかったので、こちらも嬉しい驚き。

小さな女の子だったら、新体操のリボンの踊り(浅沼さん、引間さん)や和テイストのバレエ(中村さん)に憧れそうです。

男性ダンサーは・・・、森山さん以外、個々の見分けがつきにくくてですね・・・、カブトムシ(?)とか面白かったです。身体能力の高い男性ダンサーの踊りも観られましたし。

ソロ公演では、終盤に向けてカタルシスを感じさせるような、はたまたトランス状態で神仏を顕現させるような圧巻の踊りをみせる森山さん。たくさんのダンサーが出演する今回の公演では、びっくり箱から色々なものが飛び出てくるような感じで終わるのかと思っていました。が、楽しい、楽しいだけではなくて、忍者衣装を諸肌脱いで踊る森山さんは、するどい切れ味があり、圧倒されました。そのあたりのさじ加減が絶妙です。

「NINJA」の感想を一言でいうなら、陳腐な言い方ですが「森山さんはやはりすごい」。こどもも大人も楽しめる演目、でもこども騙しではない演目、それが「NINJA」です。