アラジン雑記

アラジン(@新国立劇場)の最終日6/23の公演に行ってきました。ということで、少しメモ。

最終日の「アラジン」は米沢・奥村ペアです。盛り上がった公演でした。

まず冒頭。奥村さんは、町の明るいお兄ちゃんといった雰囲気のアラジンが似合います。身体の動きも軽い。アラジンのお母さん(菊地さん)は、初日の中田さんより設定年齢がほんの少し若く見えます。背中の感じ、股下の開き具合、膝の曲げ具合など、ほんの少しの違いですが、演じる人によって違う。

宝石のディヴェルティスマン。

オニキスとパールはキビキビした動きで楽しい。ゴールドとシルバーは大人な雰囲気。サファイア細田さんは回転が安定していて、指先まで美しい。

エメラルドは初日と同じメンバーで、寺田さん・玉井さん・速水さんのトリオ。踊りはいいとして、最後のキメのポーズを観ていて思ったのは、「これはナーガ(多頭の蛇の神)?」

ナーガは彫刻だと、大体頭は7つぐらいで作られていて、真ん中の頭が一番高く、左右対称に一段ずつ低くなるように他の頭が配置されています。ポワントで立った左右の女性陣の頭の位置より、真ん中の速水さんの頭の方がちょっと高く位置していて、ちょうどナーガ像っぽく見えたのです。3人で踊っているので頭は3つで、彫刻で見るような7つ頭じゃないですけどね。同じダンサーでも日によって見え方が違ってきて、面白い。

ルビーは奥田さんと井澤さん。奥田さんはパシッと決まる踊りが、観ていて気持ちいい。井澤さんは色気がありました。思い切り胸から上を反らせたり、背を丸めたポーズで女性ダンサーを導いたりする姿が色っぽい。奥田さんのルビーが井澤さんの色気に取り込まれない風なのも良かったです。男女ともお色気ムンムンだったら、濃すぎて観ていられなかったかもしれません。井澤さんのこういう一面を見ると、「シェエラザード」の金の奴隷もいけるかもと思えてきます。

ダイヤモンドは木村さん。ダイヤモンドのお付きも一緒に出てきますが、ダイヤモンドを演じるダンサーによって、お付きとの関係性がちょっと違って見えます。かつてのダイヤモンド役、西山さんは姐御っぽいリーダー、川村さんは気品のある女王のようでした。木村さんは持ち前の華の輝きと、何というか、お付きに守られている感じがありました。

1幕の終盤のプリンセスの登場シーン。米沢さんのプリンセスは高貴な姫君。新鮮な空気を吸いたくて輿から降りてきたという感じでしょうか。町の人からの思いもよらない花のプレゼントを喜び、捧げもつようにして眺め、胸いっぱいに花の香りを吸い込む。宮殿の整備されたお庭では、見ないような野に咲く花なのかも。

踊りは危なげない。登場のシーンも、浴場のパ・ド・ドゥも結婚式のシーンも、どのシーンも安定感が半端ではない。一つの踊りの終わりに、男性ダンサーが補助をしてポーズを保つ必要が無いくらい、最も望ましい位置に自らピタッとポーズを決めます。米沢さんはリフト時や、到底自分一人ではポーズを保てないオフバランスの時以外、男性ダンサーのサポートは必要ないのではないかと思えます。

米沢さんの安定感は、今回のヒヤッと場面でも遺憾なく発揮されていました。ヒヤッと場面・・・。ヒヤッとどころではない、ハラハラ場面と言った方が良いかもしれない、マグリブ人の館で捕らわれのプリンセスが、助けに来たアラジンとの再会を喜ぶパ・ド・ドゥ。

変装したアラジンが変装を解き、プリンセスと再会を喜び合う美しい場面ですが、奥村アラジンのウエストのサッシュベルト(?)がほどけてしまうアクシデントがありました。おそらく変装のボトムを脱ぐときに引っかける等して、ウエストにぐるぐると巻いている長い布がほどけてしまったのだと思います。奥村さんは布を元に戻そうと、踊りの合間にウエストに巻き付けますが、踊っているとほどけてしまう。

一旦中断、なんてことはなく、覚悟を決めたのか、長い布を垂らしながら踊り続ける主役2人。ウエストに巻かれていた布は長く、奥村さんのウエストから床に届き、床の上にも何十センチという長さで垂れていました。ウエストに巻かれている部分も含めると、元々の全長は1m30~40㎝ぐらい(以上?)あるんじゃないでしょうか。

2人が布を踏んだりしないか、身体に巻き付いたりしないかハラハラしながら観ていましたが、2人とも安全性を考慮して技をセーブしている気配はありませんでした。むしろ米沢さんからは、顔はにこやかでありつつも、こんなアクシデントには負けないといった雰囲気があったかも。こちらは、(奥村さん、そんなに飛ばなくていいよ。米沢さんを抱えたまま、3回転もしなくてもいいよ。)と思っていました。

破綻なく、アラジン・プリンセスの再会のパ・ド・ドゥは終了。無事、踊り終えた2人にプロ魂を見た!

ジーンについて。最終日のジーンは渡邊さん。初日の井澤さん同様、いつもはダンスールノーブルをやっていますが、「アラジン」ではジーン。踊りは軽やかなジャンプ、安定した回転。渡邊さんのジーンは風に乗って、空を飛べそうです。

演技面はというと、アラジンの家の前で煙の中から空中に登場するシーンは威厳あり。1幕の宮殿でアラジンに呼び出されたときは、忠実なしもべ。2幕でマグリブ人の支配下に下った時は、冷酷な魔人。連れ去ろうとしたプリンセスが抵抗していると、後ろから押して窓の外に突き落とす。3幕で魔法のランプがアラジンの手に戻り、アラジンの支配下に再び入ると、結構良いやつ風。アラジンであれ、マグリブ人であれ、支配する人間の心根に染まる。

そしてアラジンが魔法のランプをジーンに手渡し、自由の身になったことを悟った時は、喜びの表情だけではない、宿命から解放され、来し方行く末を想うような万感の表情をしていました。

こんな感じで、アラジン最終日の鑑賞は終了です。まだ書きたいこともありますが、長くなりそうなのでやめときます。