タカネビランジたくさん、鳳凰三山②

8月下旬、1泊2日の鳳凰三山登山ツアー2日目。

この日の行程は、南御室小屋から鳳凰三山に登り(地蔵岳オベリスクには登りません)、御座石温泉に下りてくるというものです。

帰りの時間の関係上、夜明け前から出発になります。真っ暗な小屋内の食堂で、前日夜に用意してもらったお弁当を食べ、身支度を整えたら出発です。

南御室小屋の敷地を出ると、すぐに樹林帯です。小屋のある所だけ、森林が切り開かれています。

外は真っ暗、ヘッドランプをつけて樹林帯の中を行きます。ヘッドランプをつけているとはいえ、夜明け前の山道は正規のルートが分かりずらい。ガイドさんに導いてもらっているので、例え間違ったルートに入ったとしてもすぐに正規のルートに戻れますが、一人だととんでもないところに迷い込んでしまう恐れもあります。ここは単独でも来れるかどうか考えながら登山ツアーに参加していますが、夜明け前の単独行動は自分のレベルでは厳しいなと思います。

辺りが徐々に明るくなってきて、樹林帯を抜けると、いきなり視界が開けます。1日目の夜叉神峠の時もそうでしたが、2日目もこのパターンです。登山道が続く前方には花崗岩の岩、開けた片側には白峰三山、その反対側には富士山が見えます。暗い樹林帯の中を歩き続けていたので、開放感が半端ありません。

砂礫の登山道のすぐそばには、お目当ての一つ、タカネビランジがそこここに咲いていました。もっともったいぶった感じで咲いているのかと勝手に想像していましたが、開けた稜線に出た初っ端から惜しみなく咲き誇っていました。タカネビランジはナデシコ科の可愛らしくて目立つ花。この後、砂礫の稜線上や岩石のそばでたくさん見ましたが、色は個体差が大きいようで、かなり白っぽいものから薄いピンク、濃いピンクまで。

花崗岩の岩場を登って下りて抜けていくと、その先は薬師岳小屋。薬師岳小屋は南御室小屋より少々小規模な感じですが、建物が新しくきれいです。ちょっと雰囲気があり、小屋の入り口に暖色系のライトがともっていて、小屋名とホウオウシャジンらしき花をかたどった金属製立て看板が設置されています。稜線上の小屋なので、飲み放題の湧き水はありません。

南御室小屋ではなく薬師岳小屋に泊る登山ツアーもあるようですが、薬師岳小屋まで行くのは1日目の行程はキツくなりますが、2日目は多少楽、そして施設がきれいで薬師岳がすぐ近く。南御室小屋は1日目の行程は多少楽で、2日目はキツくなりますが、湧き水があります。どちらもそれぞれ魅力があります。が、登山していると本当に水の貴重さが分かるので、個人的にはおいしい湧き水飲み放題の南御室小屋宿泊のツアーで良かったと思っています。

鳳凰三山一つ目の薬師岳はサクッと。観音岳もサクッと。ここまでは特に急いで歩いているわけではありませんでしたが、コースタイムと同じくらいか早いペースで進みました。

観音岳から地蔵岳まではコースタイムより多めに時間がかかりました。岩々っとした登りや急な下りがあったり、他の登山者の追い越しやすれ違いで道を譲っていたりしたため。そして、ホウオウシャジンを見たいとガイドさんにリクエストを出していたため、ガイドさんがお花を探しながら歩いてくれたから、ということも理由の一つです。

そんなガイドさんのお取り計らいもあり、自分では見つけられなかったホウオウシャジンを観音岳地蔵岳の間で見ることが出来ました。岩場の下でひっそりと、下向きに咲く青紫色の花。桔梗に似た感じの花ですが、花を吊るす茎が細くて花も小さく、もっとつつましい感じです。

地蔵岳に到着すると、ここ、すごい。特徴的なオベリスクはあるし、何十体もお地蔵さんが置かれています。

鳳凰三山の一つ目の薬師岳では少し雲が出ていたものの、観音岳地蔵岳は雲一つない快晴。地蔵岳では青空をバックにしたオベリスクが映えます。青い空と南アルプスの山を背景に撮影した何十体ものお地蔵さんの画像はここはどこ?という感じです。もっと引いて撮ると、白い砂の稜線上にお地蔵さんが並び、背景は青空だけになると、シュールな感じもしてきます。

絵になる地蔵岳オベリスクですが、ツアーでは登りません。一般の登山者の方々は登っていますね。ガイドさんによると、オベリスクにロープ等が設置されていても、誰かがしっかりと管理して設置しているものではないそうです。それじゃぁ、ツアーでは登らないよね。

鳳凰三山に登った!とミッションが終わったような気になりますが、実はこれから先の下山が長くて脚にくるのです。

下りの行程最初の目的地は、鳳凰小屋です。地蔵岳から、細かい砂の中を下りていきます。富士山に登ったことのある人の話しでは、富士山の下りのような道だとか。「富士山はこんな砂の中をずっと下りていくから、それに比べればここは全然短くて、楽よ。」だそうです。スイーッ、スイーッと下っていく人もいましたが、足をとられて尻もちをつく人もいたので、ご用心。

砂の道が終わり、樹林帯を下っていくと花がたくさん咲いている鳳凰小屋に到着です。ここでテント場の隅をお借りして昼食休憩させていただき、トイレ(200円)も使わせてもらいました。ここもお水が豊富で、ジャバジャバと流れ続けています。飲み水が汲める山小屋って、やっぱりいい!そして小屋の方がオカリナを吹いていて、素朴な音色に懐かしい感じがします。

昼食は南御室小屋で作ってもらったお弁当です。朝食、昼食と小屋でお弁当を用意してもらいましたが、一つはご飯の上に昆布の佃煮を載せ、卵焼きやしゅうまい(だったかな?)が入った折り詰め弁当、もう一つはゆかりご飯2つ・わかめご飯1つの俵型のおにぎり弁当(ソーセージや漬物添え)でした。折り詰めの方を朝食に、おにぎりの方を昼食に食べました。おにぎり弁当は山小屋側からしたら手間がかかりますが、登山者から見ると食べやすくて、登山中に失った糖質と塩分を手軽に補給できるのでありがたいのです。

昼食後もひたすら下ります。小石がコロコロしているところもある整備されている道で、多少のアップダウンはあるものの、とにかくひたすら下ります。そのうち膝にくる人が出てきたり色々で、コースタイム通りにいかなくなりました。樹林帯の中でレンゲショウマが咲いているのを見つけたり、谷側の木が生えていない登山道から地蔵岳甲斐駒ヶ岳が見えたり、楽しいこともありましたが、全体の行程が登りほどサクサクいきません。

下り続けると、西ノ平というかなり広く真っ平らな場所に出ます。ここだけ木が生えてなくて真っ平ら。何だろう、ここ。工事のために人工的に山を切り開いたのでしょうか。ここで長めの休憩になり、熱を持ってきた膝にエアーサロンパスをスプレーしておきました。もっと強力な医薬品もあると思いますが、エアーサロンパス、結構良いです。

西ノ平を出発してちょっと登ってから、結構な傾斜を梯子で下っていくと、山の斜面の崩壊を防止する工事が施されているのが見えてきます。この工事のために西ノ平は切り開かれたのかなと想像しましたが、どうなんでしょうかね。

御座石温泉はまだかなと思いつつ下っていると、フシグロセンノウの朱色の花が見えてきました。そして木々の合間から建物も見えてきました。やった、御座石温泉です!やっと着いたよ。これで8月下旬、鳳凰三山登山ツアーは終了です。