さるびあ丸で神津島へ

竹芝から大型客船さるびあ丸に乗って、神津島天上山トレッキングツアーに行ってきました。神津島到着までのことを、メモ。

22時出発のさるびあ丸に乗るため、夜の浜松町駅に降りたちました。目指すは徒歩10分弱の竹芝客船ターミナルです。

小雨がぱらついているなか、帰宅を急ぎ浜松町へと向かう人々に逆行して、竹芝へと向かいます。同じ方面に向かう人が思ったより多いのが、まず驚きです。

竹芝に近づくにつれ、さらに人が増えてきます。道路沿いには、自転車を収納した袋を車から何台も下ろしているサイクリストの姿も。

竹芝客船ターミナルの待合室に着くと、出発を待つ人がたくさん。個人で行く人、団体旅行の人、多くの人でごった返しています。

ツアーの受付を済またら、21:30から乗船開始です。乗船時にチケットの半券をもぎり取られて、残った方の乗船券は下船時に回収されるので、無くしてはいけません。

今回のツアーの席は、一番お安い2等和室。船内で乗客が入れる部分では、一番下の船室です。船酔いが心配なので酔い止めを飲んでおきますが、さあどうなるか。

ところで、2等和室は、薄いカーペットが敷かれた男女の区別のない雑魚寝スペースです。一人当たりのスペースがテープで区切ってあり、枕が置いてあります。身体の大きい人や、隣の人の寝相・いびきがひどかったら、つらい感じ。翌朝起きたら、2等和室の廊下で毛布をかぶって寝ている男性もいたので、身体の大きな男性にはやはり狭いのかもしれません。

船内にはレストランや身だしなみを整える更衣室、コイン式のシャワールームなどがあります。レストランは開店時間が限られているので、小腹が空いたときは自販機を利用すると良さそうです。自販機の飲み物は120円~、菓子パンやスナック菓子は1個120円。観察していたところでは、スナック菓子ですぐ売り切れてしまうのはカラムーチョのスティックタイプ。お酒のおつまみに買っていく人が多いのかもしれません。

ハーゲンダッツは確か330円。ホットフード自販機の焼きそば、フライドポテトとから揚げのセット、たっぷりフライドポテト1箱などは一律400円。自販機のカップヌードル200円。子どものころ見た以来のホットフードの調理自販機や、熱湯が出てくるカップヌードル自販機がここでは現役で稼働しています。

利用しなかったので味は分かりませんが、レストランのメニューはカキフライ定食(売り切れの表示あり)900円、麺類800円など、町の飲食店とお値段はあまり変わりませんでした。自販機もレストランも良心的な料金設定です。

デッキに出ると、乗船前より雨が降っていて、風もあり、肌寒い。2等船室であれこれやっているうちに、見ようと思っていたレインボーブリッジはとうに過ぎていました。その代わり、横浜のベイブリッジは見られました。雨降る夜のベイブリッジは何となく寂し気です。

横浜の夜景も見たので、2等船室に戻って就寝です。船内の客室は横浜を過ぎると消灯しますが、通路や共有施設などは明かりがついています。明るいと眠れない人はアイマスク必携です。耳栓もあるといいとは思いますが、上階の荷物置き場で酒盛りしている人の声がよく聞こえてきたのであまり効果はないかもしれません。

雑魚寝の2等和室は落ち着かず、なかなか眠れません。さらに深夜になると、寒い。1枚100円で借りた毛布をかけて横たわっていますが、あまりに寒いので、脱いでいた靴下をはきこみます。が、それでもまだ寒い。また起きてアウターを着ると、やっと寒さを感じなくなりました。

上の階から広い階段を通って冷気が降りてきたのか、海の冷たさが船室にまで伝わってきたのか不明ですが、2等和室はとにかく寒かったです。一人で毛布を2枚レンタルしていた人がいましたが、2枚レンタルしておけば良かったと後悔です。2枚借りれば、1枚はカーペットの上に敷いて寝心地を良くしてもう1枚は掛ける、又は、2枚とも掛けて温かく寝ることもできますから。毛布レンタルしていない人もいましたが、相当寒かったのではないかと思います。

大島が近づいてくると、下船する用意をするよう船内アナウンスが入ります。この時期、大島に着く少し前ごろに日の出が見られるはず。下船はしませんが、水平線から昇る朝日を見たくて起きだします。

外に出るとあたりは既に明るい。朝日が出る方向に移動して、デッキから眺めます。ですが水平線に雲がかかっていて、水平線から顔を出す朝日は見られませんでした。残念。

乗客は大島で一気に降りていきました。大島を過ぎたら、船内が急にガランとしています。帰りの便でも大島から大量の旅行者が乗り込んできましたが、伊豆諸島の中で大島で乗降する人が最も多い。

見ていると、桟橋にパトカーが止まっていて、警察官もいます。なぜ警察官が?と思いましたが、このあと理由が分かります。

警察官が港のスタッフと協力して、船と桟橋をつなぐタラップを掛けています。その後の他の島でも、それぞれの島に駐在している警察官が手伝っていました。離島ではタラップをかけるのも警察官の大切な仕事のようです。

大島を過ぎると、船が今まで以上に揺れます。というより、大島までは予想していたより揺れませんでした。大島までは伊豆半島がブロックしていて風の影響を受けにくいところ、それより南の島では風をブロックするものがなく、風の影響をダイレクトに受けてしまうため揺れが大きくなるとか。効き目の弱い酔い止め薬を服用していたので、大島以降はすっかり船酔いしました。よく効くアネロンを飲んでおけば良かった・・・。

さるびあ丸は利島、新島、式根島を経由して、午前10時に終点、神津島に到着。空をみると、神津島の上空には濃い灰色の雲が居座っています。この後は天上山のトレッキング開始です。

 

三頭山の日イベント

3時間弱のブナの路コース三頭山登山から都民の森の森林館に戻ってきたのは、正午前。12時から始まる餅つきイベントに間に合うちょうどいい時間です。

まずは靴洗い場で泥だらけの靴を洗い、朝もらった用紙に書かれたクイズに参加します。クイズは3問。森林館内の展示を見れば、答えは簡単に分かるようになっていました。正解すると(はずれなしの?)くじ引きが出来ます。引いたのは、都民の森入り口にある売店での当日限り有効の金券。他の人のくじ引きを見ていたら、豚汁や檜原やきそばの引換券など当てていた人もいました。

広場に出たら餅つきイベントが始まっていましたが、お餅のつきあがりはまだしばらくかかりそう。その間、気になっていた檜原やきそばを買ってみました。1人前300円。普通のやきそばと違うところは、ボール状にしたマッシュポテトが1ボール添えられていることと、具材としてこんにゃくの刻んだものが入っていること。檜原村特産品のジャガイモとこんにゃくを使っているわけですね。おいしい。

餅つきが終わり、つきたてのお餅がふるまわれ始めました。きなこ、あんこなどの味(確か、みたらし味もあった)が用意されていて、要望に応じた味にからめたお餅を提供してくれます。きなこ味とあんこ味のお餅をもらいましたが、出来立てのお餅はおいしいですね。

その後は、木材工芸センターに寄って、キーホルダー作り体験(無料)をしました。

渡された木材に、フリーハンドで自分の好きな絵を描いたり、置いてある型をなぞって形を写し取ったりします。切り出すのが簡単そうなリスの型を選択してみました。

そして電動糸のこぎりで木材に描いた形を切り出していきます。電動糸のこぎりの使い方はスタッフの人が教えてくれるので、未経験者でも大丈夫。

電動糸のこぎりは他の人が使っているのを見ると簡単そうだったのですが、いざ自分がやってみると勝手が違います。電動糸のこぎりの動きを止めるのではなく、常に動かしながら方向転換をして形作っていく。下絵をなぞって切り出したいのに、あらぬ方向にのこぎりの刃が進んでいってしまいます。なんとか切り出したものは、下絵とは違って、やたらと大きな尻尾のリスが出来上がりました。

そして切り出した木材は、ガタガタになってしまっている部分は紙やすりで滑らかにします。その後、スタッフの人に目の部分を開けてもらい、キーホルダーの金具を取り付ける溝を作ってもらいます。「ずいぶん尻尾の大きなリスだね。」と感想をもらいましたが、下絵にしたリス型との違いはバレバレだったようです。絵心のある人は自分で下絵を描くのもいいですが、電動糸のこぎりの操作に慣れていないと、せっかく描いた下絵を台無しにしてしまうかもしれません。あと3回ぐらいキーホルダーを作ったら、電動糸のこぎりの操作に慣れるかも、わたしの場合は。

キーホルダー作りが終わったら、都民の森入り口の売店に行ってみます。すると、入り口近辺に多くのサイクリストがいました。おそろいのウェアや、違うウェアを身に着けたサイクリスト。自転車スタンドにはたくさんのロードバイクが立てかけてあります。

良く見ると、都民の森入り口付近に自転車競技を記念した銅像が置かれています。帰宅後調べてみたら、奥多摩周遊道路はロードバイクを乗る人にはたまらない道のようですね。事情を知らない身には「えっ、なぜこんなにロードバイク乗りの人が」と思いましたが、納得しました。

売店で物色して、くじ引きでもらった金券を使い、お土産を購入。売店では軽食も提供していますが、サイクリストが食べている串焼き餅やけんちん汁にひかれます。焼き餅とけんちん汁で迷いましたが、けんちん汁(300円)にしました。味は、すまし汁の一般的なものでした。森林館前の広場で売っていたものは豚汁と書いてありましたが、入り口売店のけんちん汁とは違うものなのか、気になるところです。

13時半から森林館2階で音楽会があるというので、再度森林館に向かいます。

まず檜原村村長の挨拶があり、リコーダーやオカリナのアンサンブルが始まります。曲目は忘れましたが、どれも聞いたことのあるメロディ。懐かしく温かい音色で、古き良き時代の風景が浮かんできます。

リコーダーにハープの音色も加わって聴きいっていましたが、15:55武蔵五日市駅発のホリデー快速あきがわ2号に乗るには、都民の森14:35発のバスに乗らなければなりません。この後、ソプラノ歌手の歌や中学校の吹奏楽部の演奏も控えているとのことですが、名残惜しく思いながら退席しました。

都民の森入り口に近づいていくと、さっきとは何だか雰囲気が違います。13時ごろはサイクリストが多数いましたが、14時過ぎにはサイクリストは数名。その代わりに、軽く20台は超すバイクとライダーが集結しています。ハーレーなどの排気量の大きいバイクはもちろん、スクーターやスーパーカブに乗っている人も。ついでにパトカーも止まっています。

こちらも帰宅後ググってみると、奥多摩周遊道路はライダーにとってはツーリングするのに楽しい道とのこと。どおりで八王子ナンバーだけでなく、世田谷ナンバーや川崎ナンバーなど各地のナンバーのバイクが来ていたわけです。お蕎麦屋さんの出前を連想させるカブも、配達のためではなくツーリングを楽しむために来ていたようです(というのは失礼か・・・。もちろん車体後部に出前機は付いてませんでした)。

理由が分かればどうということはありませんが、理由が分からなかったので何かイチャモンをつけられはしないかと少々怖かったのは事実です・・・。ふぅ・・・。

バスが都民の森を出発し、数馬で乗り換え、一路、武蔵五日市駅へ。電車の発車時間に間に合うか途中少々心配したものの、余裕をもって無事、ホリデー快速あきがわ2号に乗れました。そして電車に揺られて居眠りしながら都心まで。ホリデー快速あきがわは便利だな。

 

 

三頭山で富士山をみる

日曜日に三頭山に行ってきました。

当日、檜原都民の森で三頭山の日イベントをやるというので、登山とイベントを楽しむにはこの日に行くのがベスト。花粉症の症状が悪化するのは分かってますが、ちょっと行ってみたい。

新宿からホリデー快速あきがわに乗って、終点の武蔵五日市駅に到着です。武蔵五日市駅のターミナルから都民の森への急行バスの出発は15分後。電車の到着からちょうど良い時間に出発時間が設定されているようです。

武蔵五日市駅から都民の森まで、急行バスでも1時間以上かかる道のりです。バスを待つ乗客が全員座っていけるようにと、増発便が1台出たのでゆっくりと座っていけました。同じ西東京バスでも、奥多摩駅から鴨沢(雲取山登山口)まで行くバスが増発便も出ず、ぎゅうぎゅう詰めだったのとは何故こうも違うのだろう?

バスの車窓からは紅梅、白梅の花がところどころで見えてきます。都心では桜の開花宣言が出てといっても、奥多摩での開花はまだ先。

バスが市街地を抜けると山々が見えてきますが、山肌を覆う緑の針葉樹に交じって、茶色い針葉樹が生えています。車窓からはっきり見える茶色い針葉樹の正体は、枯れて茶色くなっているのではなく、やはり花粉。スギかヒノキか違いは分かりませんが、花粉がわんさか残っています。これだけの量がまだ飛散していないのなら、まだまだ花粉に悩まされるのか・・・。

都民の森に到着したら、入り口の売店付近でクイズのシートが配布されていました。クイズに答えて正解するとくじ引きが出来るといいます。9:30開館にはまだ時間があるので、まずは三頭山に登ることにします。

三頭山は初めて登るので、一番簡単なブナの路コースを選択します。森林館そばを抜け三頭大滝へ。ウッドチップが敷かれた道で歩きやすいです。

前を行くのは、おじさん一人のみ。他の登山者はいません。三頭大滝近くに来ると、おじさんが清掃作業を始めました。登山者ではなく、スタッフさんだったようです。これから先、先行者がいないとなると、念のため熊鈴をつけて行かなきゃ。肝心の見どころスポット、三頭大滝ですが、けっこうな落差で上から下に流れています。周りを彩る色彩がないので、もしかしたら今の時期が一番つまらないかもしれません。新緑の季節や紅葉の季節、凍結している真冬にみたほうが面白いと思います。

三頭大滝を過ぎると、渓流沿いのブナの路を登っていきます。ブナの路は、渓流の石を利用したらしき階段や、渡渉の飛び石がいい位置に配置されている歩きやすい道です。ですが、花粉症対策で相変わらずマスクをしながら登っているので、暑い。ブナの木の新緑はまだ生えておらず木陰のない時期なので、日光がさんさんと降り注ぎます。陽当たりが良いので、おかげで道にぬかるみは無いのは良い点です。暑いのでペースを抑えて歩いていると、あっという間に後ろから来た人に抜かれていきました。

ブナの路を登りきるとムシカリ峠に着き、三頭山山頂まであと15分とのこと。登山道の左手を見ると木々の間から富士山が見えます。眺めの良いところに行って、富士山を見たい。

山頂への道を登っていると、下山してくる人と行き会います。まだ10持半前なのですが、もう下山とは早い。飼い犬連れの人もいたので、お手軽な登山コースとして何度も来ているのかもしれません。

三頭山(西峰)に到着すると、山頂はぬかるみ多し!ぐちゃぐちゃでぬかるんでいない場所を探す方が大変。山頂中央部には東京都の三頭山の標識が設置されています。その前方に新しい標識設置予定場所として敷かれたブルーシートが、写真撮影をする際に目障り。一方、東京都の標識から少し離れたところに、「山梨百名山」の三頭山の標識がひっそりと設置されていました。

三頭山山頂は木が生えていて、この後登る中央峰、東峰では眺望は期待できません。が、北峰だけは富士山と、反対側の雲取山(らしい)が見られる部分は木が伐採されていて、それぞれの山を背景に写真撮影が出来ます。早速、富士山をパシャっと撮影します。

登り途中であれだけ暑かったにもかかららず、山頂で休んでいるとさすがに身体が冷えてきます。三頭山の日イベントでつきたてのお餅のふるまいがあるというので、間に合うよう先を急ごう。

中央峰、東峰に行く途中は、ところどころ道がぬかるんでいて、歩きにくい。両峰とも巻き道あり。中央峰は三頭山最高峰の1531m。西峰とは違い、眺めを楽しめず、最高地点に立っても木の中で高度を感じません。東峰も木の中で眺めはきかないのですが、展望台に続く道があり、そこから奥多摩の山が見られました。案内図によると、見えている山は御前山、大岳山、馬頭刈山。

ぬかるんだ道を滑るのを注意しながら下っていると、若者に追い越されます。若者は歩みが軽くていいな・・・。

歩いていると見晴し小屋へ続く登りと、巻き道に差し掛かりました。名称からして眺望がききそうなので、見晴し小屋に寄ってみます。見晴し小屋は結構広く、屋根があって座れます。テラスからは展望台から見たのと同じような景色が広がっています。案内図はありませんでしたが、遠方に見えるあの山の形は大岳山。展望台からも見晴し小屋からもほぼ同じ景色が見られるので、見晴し小屋の方は案内図がないのでしょうか。

見晴し小屋からは鞘口峠に下っていきます。登りの行程より下りの行程の方が行き会う人が多かったです。時間帯にもよるのかもしれませんが、三頭大滝の方から登る人より、鞘口峠方面から登ってくる人の方が多いような気がします。鞘口峠からの登りがラクだというわけではなく、むしろ三頭大滝方面からより鞘口峠方面からの方が勾配が急。しかも道がぬかるんでいて滑る部分とともに、ゴツゴツした石や岩が突き出ていて、こっちから登った方が良かったかなと少し後悔しました。

ブナの路コースを下り終えたのは12時前。3時間弱の行程。高水三山より登りやすくて花粉の害も少ない、初心者におすすめのコースでした。

花粉で散々、高水三山

日差しが強く、暖かくなってきました。春の陽気に誘われて、奥多摩の高水三山に行ってみよう。

青梅線無人駅、軍畑駅の改札出て右手にあるお手洗いを済ませてハイキング出発です。お手洗いは、小さいけれど手入れが行き届いていて清潔。

高水三山登山口までは、軍畑駅改札出て左方面をしばらく舗装道路を歩いていきます。細い脇道に入ったりせずに、舗装道路を道なりに歩いていくと、登山口近くの高源寺に到着。登山の安全を祈ってから登山口に向かいます。

高源寺から登山口までの舗装道路の両側は、ロウバイの小さく黄色い花が咲き、たわわに実った柚子が。柚子の木にゼリー飲料の光沢のある空き容器が下がっていましたが、鳥よけ対策でしょうか?ちなみに春先の今はここから先、高水三山ハイキング中は下山まで目ぼしい花は見られませんでした。花好きはここでロウバイの花を楽しむべし。

登山口に着くと砂防ダム脇の階段を昇ります。しばらく行くと普通の登山道になりますが、道は整備されていて歩きやすいです。

ふと見ると登山道脇には「二合目」「三合目」などと彫られたかなり年季の入った石の道標が設置されています。合数だけでなく、含蓄のある一言も彫られています。うろ覚えですが「人生はこの登山道のごとし」とか。ラクと思えばラク、大変と思えば大変、自分の感じ方次第ということかな。

木が伐採されて視界が開けたところを過ぎると、再度樹林帯の中に入りますが、休憩のためのベンチが設置されています。続く登山道を見ると、急登が。急登の前の一休みにちょうどいいベンチです。なにより暑いので、一休みしなくては。何しろ陽気が良く、ついでに花粉症対策のためマスクをしていたので暑くてしかたありません。

一休憩したら高水山を目指します。が、さっきからくしゃみがひっきりなしに出ます。こんなにくしゃみが出ていると、体力が奪われてしまう。まだ行程は長いのにバテてしまったらと心配になってきます。

急登を登って、花粉症の症状に折り合いつけながら歩き続け、常福院不動堂に到着です。近くに車道が見えるので、この近くまでは車で登ってこられるようですね。梵鐘があったり、お手洗いがあったり(使っていないので状態は不明)、小高いところにあずま屋があったりで、観光客が気軽に立ち寄れそうです。といってもわたしが行った日は境内にいるのは登山者のみでしたが。

高水山頂は常福院不動堂の近くをさらに登ったところです。標高759m。落葉した広葉樹や、針葉樹が生えているので、暗くはないけれど眺望はききません。

高水山から岩茸石山までは、ほぼ平坦な尾根道です。尾根道に残雪あり。念のため持参した軽アイゼンを使うか、どうするか。道にある程度の広さがあり、残雪のガケ側への傾斜もないので、尾根道の山側に出来るだけ近づいて、アイゼンなしでソロソロと通過します。よし、滑らなかった!

岩茸石山に近づいていくと、目の前に岩がごつごつと突き出した登りが待っていました。岩とか石とか山名についているので岩場があるんだろうなと予想していましたが、やはり岩場がありました。巻き道もありますが、巻き道を使ってしまうと高水三山の中で唯一眺望が楽しめる岩茸石山山頂を通らないことになってしまいます。眺望を楽しみたかったらここを登るしかありません。

「悪路注意」の標識がありましたが、登りより降りの方が大変そうです。岩だらけでどこに足を置いていいか分からないという感じの道ではなく、岩まじりの山道なので、手も使って慎重に登れば、危ないことはありません。

岩場を過ぎれば岩茸石山まで、厳しい道はありません。山頂に向かって辺りが開けてくるのでワクワクしてきます。岩茸石山につくと山頂(標高793m)は見晴らしがきいて気持ちがいい。どれが何の山か分かりませんが、近くに見えるあの山頂は、さっき登った高水山でしょうか。

それよりなにより気になるのは、遠景、近景に見える杉の木です。さっきからくしゃみ鼻水に加えて、眼のかゆみも出てきました。遠景の茶色っぽく見える杉の木は、枯れているのではなく、まさか花粉?近景に見える杉の木には、明らかに花粉がわんさかついています。この大量の花粉が風に乗って都内に運ばれてきているのかー。

岩茸石山は下りも急。慎重に下ります。高水三山は奥多摩登山の入門編と聞いていたので、少々軽く考えていましたが、意外に大変です。花粉症の症状が集中力に影をさすし。

岩茸石山から惣岳山への尾根道にも残雪の凍結部分あり。残雪が凍ってガケ側に傾斜し、しかも表面が溶けていて滑ります。ここでも軽アイゼンはつけませんでしたが、かなり慎重に歩きました。緊張して歩いていたせいか、始終出ていたくしゃみは止まりましたよ、ピタリと。もしくしゃみが出ていたら、バランスを崩してツルっと滑っていたかもしれません。リスキーな場所なので、軽アイゼンをつけておいた方が良かったかも。

惣岳山山頂は針葉樹に囲まれて薄暗い。山頂は青渭神社の奥宮もあり広い空間がありますが、眺望は望めません。惣岳山の標識がありましたが、標高の記載がなし。よく見ると手書きで760mと記されてます。他の2山は標識に標高が記載されていましたが、なぜここは手書き?

青渭神社奥宮は金網に囲われたお社です。金網の隙間から賽銭箱にお賽銭を入れると、ジャリンとお賽銭同士がぶつかる音がしました。廃神社というわけではなく、いたずら防止のための金網なのですかね?良く見ると、鶴、人(仙人?)とカエルなど出来の良い彫刻がしっかりと施されています。地域の人に大事にされているお社のようです。

惣岳山から先は御嶽駅まで下ります。地図を見ると、ルートタイムは休憩なしで65分となっています。くしゃみ鼻水目のかゆみに悩まされ続けのハイキングでしたが、あと少し。杉林のなか、眩しくもないのに目のかゆみ対策のためサングラスをかけ、くしゃみ鼻水対策のためマスクをしていても、花粉症の症状はひどくなる一方。鼻のかみすぎで頭痛までしてくるし、のどもかゆくなってきてるし。いつもより体力が奪われ、早く駅に着きたい気持ちは募ります。

ですが、なにげにアップダウンがあります。もう充分歩いたから、アップダウンはいらないのですが、そうは問屋がおろしません。なぜすんなり下山させてくれないのだろうか?

竹林が見えてきてやっと御嶽側登山口に近づいてきました。登山道に生えた竹の表面がツルっとしています。みんなが触っているせいですかね。こんな近くに竹が生えていたら、たけのこの季節になると、登山道を突き破ってたけのこが生えてきそうです。

登山口に到着。あとは踏切渡って、舗装道路を下れば御嶽駅です。

休憩込みで5時間弱の行程でしたが、今回は疲れました。スギ花粉の故郷(?)、奥多摩の花粉の多さは覚悟してハイキングに来ましたが、症状のひどさは想像以上。しばらく大人しくしていて、花粉飛散が落ち着いたらまた奥多摩に来ますかね。

 

 

 

 

 

「仁和寺と御室派のみほとけ」展(@東京国立博物館)

国宝の秘仏を見たい。ということで、トーハクの特別展「仁和寺と御室派のみほとけー天平真言密教の名宝ー」に行ってきました。

後期展示で国宝の秘仏が展示されるようになると、グッと入場者が増えたという仁和寺展。金曜夕方ならそれほどでもないかと思って行ってみたものの、人気のある展示品の前はやはり混んでいました。

お目当ての秘仏その1の「国宝薬師如来坐像」は会場に入ってすぐに安置されています。360°からほとけ様を見られようになっています。鑑賞者がたくさん群がっています。展示ケースの間近で見るには列に並び、時計回りに少しづつ動きながら鑑賞してくださいとの指示あり。

日本一小さい国宝というだけあって、本当に小さい。ですが、作りは見事で、細かいところも驚くほど丁寧です。截金で出来た細かな文様が剥落しておらず、しっかりと見えます。ずっとお寺で大切にされてきたのでしょう。このほとけ様のフィギュアがあったら買うのに。

第1会場は書や仏画などがメインです。学術的には貴重なものなのでしょうが、その中で国宝の両界曼荼羅は仏像を見たい人には物足りません。(あ、国宝の両界曼荼羅は大きくて美しくて見入ってしまいました。)仏像をもっと見たいと思って第2会場に行くと、これでもかと仏像がお迎えしてくれます。

まず「第4章仁和寺の江戸再興と観音堂」の場では、通常非公開(修行の場だかららしい)の観音堂が再現されています。全部で33体あるというほとけ様がずらっと揃った姿は圧巻です。こんなにほとけ様を東京に連れてきちゃって、仁和寺の観音堂は特別展の期間中、どうなってしまっているのだろうかと余計な心配をしてしまいます。もしかして観音堂はすっからかん?

ちなみにここは写真撮影可(フラッシュ不可)で、鑑賞者はパシャパシャ写真を撮りまくっていました(もちろん、わたしも)。お堂の壁に描かれた絵も再現していて、わざわざ汚しの処理もあり。お堂の裏側に描かれた絵をよく見ると、パネルのつなぎ目部分で絵がズレているところがありました。これも本物のお堂の絵を忠実に再現したのでしょうか。

のっけから大量の仏像攻勢を受けましたが、お次は「五智如来坐像」です。5体のほとけ様で1セット(?)になっており、真ん中に一番大きな大日如来、それより少し小さな如来4体がバランスよく安置されています。ライトが当たって光る姿が神々しいです。蓮華座に座ったほとけ様は、会場のライトのせいかそのほかの効果のせいか、空中に浮遊しているか水面に浮かんでいるかのような錯覚を受けました。

五智如来坐像の美しさに感銘を受けていると、次の場では仁和寺の国宝「阿弥陀如来坐像および両脇侍立像」。大きさもあって立派です。

道明寺の国宝秘仏「十一面観音菩薩立像」のスッとした立ち姿。360°ぐるっと見て、なだらかな肩や背中のラインを楽しみます。

そして後期展示の大本命の秘仏葛井寺の国宝「千手観音菩薩坐像」。普段は正面から限られたお姿しか拝見できないものが、360°から見られます。ほとけ様の11面の解説や持物の解説が壁に展示してあり、鑑賞の助けになります。特別展冒頭の薬師如来坐像も混んでいましたが、こちらの千手観音菩薩坐像の周りも混んでいました。この二つで人気を二分している感じです。

1000本以上ある千手観音の手の多さの迫力がすごいです。何も持っていない手が多数ですが、持っているものを一つ一つじっくり見るのが楽しい。持物の中に骸骨がありましたが、この骸骨がちょっとかわいい。会場内の他の千手観音像が持つ骸骨はもう少し怖い感じな造形なのですが、この葛井寺の千手観音が持つ骸骨は怖さよりかわいさを感じました。

この千手観音の数ある手の中で、もとは何かを持っていたらしいが、現在は持物亡失で手のひらを正面に向けているものがあります。この手のひらにしっかりと目が描かれているのが見えるのも、面白い。

国宝、重要文化財の仏像以外で、気になる仏像がありました。神奈川の龍華寺の菩薩坐像です。脱活乾漆造の奈良時代のほとけ様だそうですが、表面がこげ茶色に鈍く光り、半跏の端正な姿、静かな表情は見るものをひきつけます。美しい姿のほとけ様です。

帰宅後ネットで検索してみると、修理前の菩薩坐像の姿を映した画像を見つけました。腕が断裂し、ところどころ破損していたみが激しい。修理後とだいぶ姿が違っているのに驚きましたが、美しい姿に修理されて良かった、良かった。

普段見られない仏像が見られるということで、仏像好きな人が秘仏目当てに来場し、ちょっと混んでいる特別展でしたが、見ごたえ充分。

さらに、特別展や常設展のチケットで、表慶館で行われている「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」展も見られておトク。ちなみにこちらの展示品の中では、装飾的なアラビア文字が書かれた墓碑や、金糸で刺しゅうしたカーテンが印象的でした。

入笠山でスノーハイク

軽アイゼンの練習を兼ねて、スノーハイキングをしたい。

というわけで、入笠山スノーハイキングのツアーに参加してきました。

富士見パノラマリゾートのゴンドラ山頂駅に着いたら、さっそく軽アイゼンを装着です。

軽アイゼンを使うのは、昨年8月に参加した白馬ツアー以来。今回で軽アイゼンを使用するのは3回目ですが、ベルト式のアイゼンのつけ方をすっかり忘れていました。ええと、この紐はどこに通すんだったっけ。参加する前につけ方の復習をしておくんだったと反省です。

軽アイゼンをつけ終わったら、準備運動をしてスノーハイクを開始。天気は曇りで、雪はたまにチラッと降る感じですが、気温は比較的高めで極寒というわけではありません。このまま天気が崩れないでくれるとうれしい。

入笠山トレッキングコースはたっぷりの雪で埋まり、春~秋のシーズンに見られる花々や湿原は当然のことながら見えません。木道と思われるところの上を、踏まれた雪道ができていて、その上を歩いていきます。歩いていると、雪道脇の窪んだ所に、無雪期には木道と湿原を分けている杭の頭が出ています。この雪の何十センチも下にある湿原で、植物が春の目覚めを待っているんだな。

トレッキングコースにはアイゼンをつけている人だけでなく、スノーシューを楽しんでいる人や、斜面でヒップソリを楽しんでいる人もいます。そりをしているのがとても楽しそうに見えましたが、比較的高めな気温の中、雪崩が起きたりしないのだろうかと余計な心配も。

そしてワンコを連れて雪原で楽しんでいる人が結構います。グループらしき人たちが、それぞれの愛犬を連れて遊んでいて、ワンコも飼い主も楽しそうです。

マナスル山荘前を過ぎたら、ほどなくして入笠山の登山口に至ります。ここからは雪の下は登山道。傾斜のほぼない湿原部分とは違って、山頂に向かって坂道です。

スノーハイクが始まる前に、登山講師の方が予測をしていました。雪が固まっていないので、10本爪アイゼンの人は大丈夫だが、6本爪アイゼンの人は山道で滑るだろうと。

前日降り積もった雪は柔らかく、無雪期の登山のときのように、フラットフッティングで足を置くと、足が雪に埋まります。埋まりつつズルっと下方に滑るので、踏みとどまるようにグッと足に力を入れる。そんな繰り返しをしていると、重心が後ろに持っていかれて危ないし、地味に脚が疲れてきます。新雪ではアイゼンはあまり役立ちません。

「こんなときはキックステップで登ります。」との登山講師の指示が飛び、言われたとおりにキックステップをしてみます。雪の斜面につま先を蹴りこむと、足元が安定し、滑らない。これは登りやすい!

キックステップをするたびに、ザッ、ザッと足先の雪が飛び散ります。普段はしないキックステップなので多少脚は疲れます。が、フラットフッティングで滑って踏みとどまって、の繰り返しで坂道を登る方がもっと疲れます。

入笠山の山頂に着くと、雪は降っていないものの風が強い!ビュービューと風が吹いています。途中の山道では風は強くなかったので、これほど山頂の風が強いとは思っていませんでした。山道を登っているときに登山講師の方が「山頂は風が強いので、休憩する時間はあまり取らない予定です。」と予言していましたが、山頂はのん気に昼食を取れるような天気ではありませんでした。

登ったものの風が強くて早く下山したいのですが、とりあえず山頂の写真を撮ります。天気が良ければ富士山をはじめとする周囲の山がきれいに見えて気持ちがいいそうですが、富士山が少しだけ見えたと思ったら、あっという間に雲に隠れてしまいました。他の山々もきれいに見えず、物足りません。去年2月に行った雪があまり無かった飯盛山は、青空を背景に冠雪した富士山が大きく見えて良かったな、としみじみ。

山頂からは諏訪湖が見えます。ですが諏訪湖方面を眺めていると風上に身体を向けることになってしまい、冷たい風が容赦なく吹きつけてきます。それに耐えられず、山頂にいる人は一様に風下に身体を向けます。そんな強風が吹きつけるなか、単独行らしき人が風上に身体を向けて、動じずに食事をしていました。山頂から少し下ればだいぶ風が弱まるのですが、どうしても山頂で食事を取りたかったのですかね。

雪が固まっていない下りもキックステップで降ります。下りのときは、かかとに体重をかけて。教えに従いかかとで強く雪面を踏むと、滑りません。雪面に対してフラットに足を置いたり、つま先に体重をかけたりするとたちまち滑りました。

帰り道は少し冒険して、踏み跡がついている雪道の少し脇、あまり踏まれていない部分も歩いてみました。歩くたびにズッ、ズッと少しだけ身体が沈むのが楽しい。調子に乗ってまったく踏み跡がついていない所を歩いていたら、ズボッと片足が膝上まで埋まりました。見るとそばに、雪に埋まった灌木が生えています。「木のそばは、他のところより温度が高くて雪が柔らかくなっているから埋まりやすいんだよ」とのこと。

楽しく歩いていたら、ゴンドラ山頂駅に到着して、この日のスノーハイクは終了です。

入笠山スノーハイクは、山頂は強風で景色も楽しめず残念でしたが、新雪の山道の歩き方が学べて軽アイゼンの復習になりました。寒すぎず、靴の中に雪が入ったりしみたりすることもなく(靴の中に雪が入ったまま行動していると、足指が壊死する場合があるという)、安全なツアーでした。忘れないうちに、雪がある山(難易度の低い山に限る)に行って行動範囲を広げてみようと思います。

 

 

2/10ニジンスキー(@東京文化会館)

2/10ハンブルクバレエ団の「ニジンスキー」を観ました。いつもの癖で、事前にあらすじを読まずに行ったので、1幕はまだしも、2幕は(何の場面だ?)という感じで詳細が良く分からなかったです。

1幕は自然に始まります。舞台と客席を仕切る幕は無く、最初から1幕冒頭のセットが客席から見えます。セットがきれいで素敵。舞台上に1台のグランドピアノが置いてあります。ピアニストの男性が本番前の練習のようにピアノを弾き始めたところから、バレエ「ニジンスキー」の始まりです。

1幕はニジンスキーの華やかな前半生。ハンブルクバレエ団ダンサーたちが次々と繰り出すダンスの洪水が、圧倒的で見ごたえあり。そんなダンスの合間、ニジンスキーとディアギレフの関係性、ニジンスキーとロモラの恋愛が語られていきます。

薔薇の精ではディアギレフと悩まし気に踊り、黄金の奴隷登場シーンではディアギレフに抱きかかえられての登場。二人の関係性が、単なるバレエ団の創設者と所属ダンサーの関係ではないことが暗示されています。黄金の奴隷はその魅力でハーレムの女性を虜にする存在ですが、ディアギレフに抱きかかえられ、ディアギレフの首に腕をまわして身を委ねているさまは、黄金の奴隷自身がディアギレフに魅せられているよう。ディアギレフ役のイヴァン・ウルバンがスタイルのいいイケメンダンサーだから、絵になります。

ロモラと出会った場面で出てくるのは、「牧神の午後」の牧神。「牧神の午後」では牧神はニンフに興味を持ち近づいていくわけですが、ここで牧神が出てくるということは、ニジンスキーがロモラを女性として興味を持ったということ。

2人の関係を知ったディアギレフは激怒。舞台奥の壁がバンという音がして倒れます。ディアギレフが壁の後ろを歩きながら、大きな音を出して壁を一枚づつ倒していく。おびえるニジンスキー

ディアギレフとの関係を修復しようと、ディアギレフに抱きつくニジンスキーですが、ディアギレフの態度はそっけない。からみついているニジンスキーを投げ捨てます。プライドの高いディアギレフには、裏切ったニジンスキーは決して許すことができないということか。

2幕はニジンスキーが精神の均衡を崩してからの後半生。暗い色調の2幕は、ニジンスキーの暗闇の中の精神世界を観ているようでつらい。音楽も血の日曜日を題材にしたというショスタコーヴィチの「1905年」が流れ、得体のしれない暴力が蔓延しているような不穏な感じです。

軍服の上着をまとって踊る人々の群れの中に、心を持ってしまった人形ペトルーシュカが加わって一緒に踊っていました。これは何のメタファーなのでしょうか?不格好な動きでたどたどしく踊る姿は、抗えない時代の波に否応もなく巻き込まれていく人間の象徴?

精神病のニジンスキーの傍らに寄り添い、最後まで付き添っているのはロモラ。重そうにニジンスキーが乗る橇を引いてますが、決してニジンスキーを見捨てることはありません。それでもニジンスキーは正気の世界に戻ってきません。

物語の最後は、床に敷かれた赤い長い布と黒い長い布で十字が作られています。その赤い長い布を自ら身体に巻き付け、黒い長い布も身体に巻き付けながらニジンスキーは踊ります。布が巻き付くほどに身体の自由は失われ、それでもさらに布を巻き付けます。ニジンスキーの目には狂気が宿っています。何の踊りなのか分かりませんが、自分で自分を戒めているよう。

なりきりタイプのダンサー、アレクサンドル・リアブコ演じるニジンスキーは、実は2幕が見どころなのかもしれません。その憑依ぶりに観ていて息苦しくなってきますが。

舞台が終わって、カーテンコールのリアブコはすべてを舞台で出し切ったような、放心したような、まだ現実の世界に戻り切っていないような感じです。客席のハンブルクバレエ団ファンは熱い声援と拍手でリアブコの熱演を称えます。実は上方の階は結構、空きがありました(椿姫の初日は「大入り」の掲示がありましたが、この日はさすがになし)が、客席は熱い。ノイマイヤーも加わった何度も続くカーテンコールで、最終的に1階席の観客は9割がた、スタンディングオベーションでバレエ団を迎えていました。