黒部ダムでゴール

 立山縦走ツアー4日目のメモ。

4日目は五色ヶ原山荘から黒部ダムまで下りていきます。帰りのトロリーバス、立ち寄り温泉、特急の出発時間の関係で、ルートタイムより時間に余裕をもって出発です。

出発は夜明け前。五色ヶ原山荘宿泊者の中では我々ツアー一行が一番先に出発かなと思っていましたが、山の朝は早い。他の登山者グループも出発の準備をしていて、洗面所は結構混雑。玄関口で出発準備をしているとお見送りをしてくれるスタッフの方もいました。朝4時前に山荘スタッフの方にお弁当をもらっている宿泊者もいましたが、皆さんどこに行くんでしょうね。

外に出ると星空が見えていました。前日は星空を見ずに就寝しましたが、出発前に降るような星空を見られて感激です。オリオン座が大きく見え、都市部では見えない他の星々も余すことなく散りばめられた満天の星空。やはりここは天上(雲上)の楽園かもしれません。

ヘッドランプをつけて出発した一行は、まずは平ノ小屋を目指します。テント場の近くを通っても、暗くてどれくらいテントがはってあるのか分かりません。急ぐでもなくかといってのんびり歩くでもなく、足元を気を付けてしっかりとした足取りで木道の上を歩いていきます。40分も歩いていると、山の際が明るくなってきます。まだ夜明けには遠いですが、山が黒くシルエットになり、藍色の夜空が微妙なグラデーションになって白からほのぼのとした曙色に移り変わっていく様子が美しい。

ゆるやかな高原の道を下っていくと、徐々に樹林帯に入っていきます。樹林帯に入るころには日が出ていて、辺りは完全に明るくなっていました。樹林帯の中はほぼ下り一辺倒です。急なところもありますが、手こずるようなところはありません。高原とはすっかり植生が違っていて、コケモモの実や野生の小さなブルーベリーの実がなっていました。

五色ヶ原山荘からかなり歩いて、黒部湖畔の平ノ小屋に到着。長めの休憩を取ります。平ノ小屋には湧き水があって、冷たいお水を汲めます。4日目は標高が下がり暑くなってきつつあったので、冷えた湧き水がとても美味しく感じます。平ノ小屋まで来たらゴールまであと半分くらいかなと思っていたら、まだまだ。この先からアップダウンのある道に入ります。

黒部湖ぞいの平ノ小屋からロッジくろよんまでの道は、フィールドアスレチックにある梯子のような階段が何か所もあります。何の予備知識もない状態でツアー仲間に見せられた画像の階段は、何とも頼りない感じ。そんな階段が長短、いくつもあるといいます。

平ノ小屋方面から最初に階段に遭遇するのは、船着き場近くに降りていくところ。階段は画像で見るよりしっかりした作りで、昇り降りに支障がある感じではありませんでした。ただし手すりが樹皮を剥がされツルツルした丸太なので、手すりに体重をかけすぎると手が滑って危ないかもしれません。

細かなアップダウンを繰り返し、木の階段、川にかかった木の橋も渡ります。道々、黒部湖が目に入りますが、水量が例年より少ないそうで、水面がかなり下がっています。ツアー初日に随分雨が降ったと思いましたが、あの程度ではまだまだらしい。

階段をいくつか通過して歩いていくと、登山道の木々の間から遠目には、昇るのに手こずる簡単な骨組みだけのような階段が見えてきました。まさかあれは昇らないでしょう、というか昇れる状態の階段なのでしょうか。と思っていると、何の躊躇もなくツアー一行は進んでいきます。その階段はこのコースの中で最も長い階段。建物の何階分の高さがあるのか分かりませんが、とにかく長い階段です。いったん下って、また同じ高さを昇ります。滑って先行者を巻き添えにしないように、間隔をあけて下っていきます。

下り終わって平地を少し歩くと、今度は昇りです。木々の間から見えた登りの階段は、近づいてみると今まで昇り降りしていた木製階段と同じ作りだと分かります。遠目には頼りなく見えても、実物を近くで見るとそうでもありません。といっても傾斜が急だし、何しろ長い階段なので、下り同様、前後の人と間隔をあけて登っていきます。

平ノ小屋からロッジくろよんまでルートタイムで3時間。ペースは速くもなく遅くもなく快調に歩いていきますが、下界の暑さがこたえます。途中休憩は開けたスペースではなく、細い登山道の途中で水分補給の立ち休憩のみ。黒部湖を進むガルベ(黒部湖遊覧船)を歩きながら何台見たものか。ロッジくろよんはまだか、トロリーバスの時間に間に合うのか、温泉入浴の時間は今のペースだとどれくらいとれるのだろうかと考えながら歩き続けます。

やっと青い屋根のロッジくろよんが見えてきましたが、ここは素通り。この先のキャンプ場に水場、トイレ、日陰がある開けた場所があるということで、そこで休憩を取ることにします。ここら辺まで来ると道は登山道ではなく歩きやすく整備されていて、黒部ダムからちょっと足を延ばして散策している観光客もいます。

到着したキャンプ場は、こじんまりとしていました。ガイドさんが言っていた日陰でツアー一行10数名が休める場所はなく、日光がさんさんと降り注ぐなかで休憩です。暑い。キャンプ場近くではアサギマダラが飛んでいました。アサギマダラは台湾から飛んできている、いやもっと遠くから飛んできているという話が出ましたが、どうなんでしょう。

橋を渡って、遊覧船乗り場前を通り、黒部ダムに次第に近づいていきます。黒部ダムの観光放水が見えてきます。黒部湖に注ぐ観光放水は迫力があり、虹がかかっています。初めて見る黒部ダムの観光放水に喜んだものの、ますます観光客が多くなり、汗まみれの疲れた様子で大げさな登山の格好をしたツアー一行は、周囲から完全に浮いてます。中には室堂から黒部ダムにやってきたらしき登山者(雄山のお札をザックにくくりつけていたので、雄山に参拝したらしい)もいましたが、我々よりスッキリした感じで、汗臭そうな我々とはちょっと様子が違います。肩身が狭い・・・。早く、早くトロリーバス、観光バスに乗って温泉に行きたいと黒部ダム駅に急ぎます。

トロリーバスは初めて乗りましたが、車内は普通のバスと同じような作り。乗り心地もバスと同じですが、実は鉄道らしい。一度は乗ってみてもいい乗り物です。(2度は乗らな良くてもいいかも。)有名な破砕帯では徐行して、「ここがあの破砕帯か!」と分かりますし、トロリーバスの車体にファンシーな絵が描かれていたのも面白いし。といっても走る場所は変わりませんが、トロリーバスは今年で最後で、来年からは電気バスになるそうです。

こんな感じでツアー最終日の4日目は終わりました。4日目がツアー中一番行動時間が長く、フィールドアスレチック的な階段の連続で疲れましたが、4日間の縦走登山は楽しかったです。ツアー仲間もスタッフの方も良かったし。一つの山に登るのが目的の登山ツアーより、今回のような縦走登山の方が自分の好みに合っていると気づいたツアーでもありました。

 最後に、4日目で驚いたのがガイドさんの到着時間の読みの正確さです。ほぼガイドさんが予想した通りの時間に黒部ダムに到着しました。10数名のツアーだったので途中遅れが発生する可能性もありましたが、時間配分が適切で、疲れはありますが思った以上に楽に歩けました。ガイドさんによると、参加者を疲労させ過ぎずに、あと30分や1時間短縮する歩き方をすることもできるとのこと。どんなもんだい、という自負心が垣間見えました。すごいなぁ、プロの仕事!