那須塩原ハイキング

5月上旬に那須塩原にハイキングに行ってきたので、メモ。総勢80名くらいで2台のバスに分乗して行ってきました。

行き先は那須塩原の富士山です。読み方は「ふじさん」ではなく、「ふじやま」。本家の富士山と区別するため、新湯富士と言われることが多いようです。

今回は、塩原自然研究路の大沼までの周遊コースです。

ハイキングを始める前に、まずは準備。登山口に行く前に公衆トイレに寄りましたが、ここのそばには噴火跡があります。石碑が設置してあり、「双子火山式に属する新湯爆裂噴火跡」と書かれています。噴火口には近づけないようになっていますが、下からは、岩肌から白い噴煙が上がっているのが見えます。噴火跡はそんなに大きくないようですが、ここら辺は塩原温泉郷の一地域で、噴煙があがっているのは温泉郷のすぐそば。この噴火跡に来る途中にも噴煙が上がっているところがありましたが、あたりには硫黄のにおいが漂っています。

さてハイキングの開始。最初のスポットは新湯温泉神社です。神社は登山口からとても近くにあります。登山口の階段を登った先にある、祠だけの小さな神社です。石の階段は段数は多くありませんが、一段一段の奥行きが短く、急いで昇り降りするとツルっとしそうです。

ちゃちゃっと神社に参拝をしたら、すぐにハイキングコースを先に進みます。なにしろ、各班8~9名ほどの総勢80名の団体ですから、次々に移動しないと後ろの班がつまってしまうのです。

温泉神社からすぐそばに、噴煙展望所があります。出発前に下から見上げた噴煙あがる噴火跡が、今度は上から見下ろすことができます。噴火跡は荒涼とした岩肌を見せていますが、その下の距離にして1kmもないんじゃないかと思われるところには温泉郷の建物群が見えます。そして温泉郷の満開の桜も。荒涼とした噴火跡と穏やかな人の暮らしが近接していて、何だか不思議なところです。噴火跡からホテル、旅館までの実際の距離はどの位なんでしょうね。

山頂までは神社の登山口から1時間くらいでした。道は整備されていますが、倒木があったり、少々急な所もあったりで、小さな子供がいるファミリーでも楽しめるハイキングコースです。ハイキングコースの途中の、ポコッと高くなっているところが山頂で、辺りに木が生えているので眺めは良くないです。苔むす木と石ででこぼこした山頂は狭く、お弁当を広げるのに適した場所ではありません。というわけで、記念写真を撮ったら、程なくして次の班に山頂を譲ります。

ちなみに新湯富士は標高1180m。日光国立公園の標識は1180mと書いてありましたが、他のハイキングマップや地図をみると1184mと書いてあります。4mの違いは何でしょうね。

次のスポットは大沼です。新湯富士山頂から下り、車道を横断した先にある沼です。山頂から大沼に行くまでの下りの方が、登りより急なところが多いです。といってもファミリー向きのハイキングコースなので、手を使って下らなければならないようなところはありません。前日に丹沢の大室山に登ったため、この日は筋肉痛がひどくて、個人的に下りは地味につらかった・・・。

新湯富士の下りが終わり、車道を横断すると、大沼公園駐車場に到着します。駐車場にはトイレ(いわゆる山のトイレではなく、普通のトイレです。)、雨風をしのげるちょっとした休憩所があります。大沼だけに行きたいなら何も新湯富士経由じゃなくとも、車道を通って駐車場まで来れます。

大沼の前が明るく平らな広場になっていて、ここで昼食休憩です。大島桜かと思われる白くて大きな桜がまだ咲いていました。ここら辺は標高が高いから、まだ咲いているのかも。

広場には、木のテーブルやベンチ、ベンチが設置されたあずま屋風の建物があります。あずま屋は沼に面していますが、目の前の沼は背の高いヨシが茂っていて、きれいな風景を楽しめるという感じではありません。あずま屋で昼食を取っていると、目の前はヨシが広がるばかりで、何となく寂しい。そして、沼からヨシの間を通って渡ってくる風が冷たい。というわけで、余程暑い日でない限り、大沼に面したあずま屋で休憩を取ることはおすすめできません。

この大沼の辺りは湿原になっていて、木道が敷設されています。湿原というと、湿原の植物がみられるのかと期待しますが、あまり種類はないようです。尾瀬のように花がたくさんの湿原ではなく、雰囲気的には戦場ヶ原のような寂しい感じの湿原です。この寂しさは、花が咲いていないからというだけでなく、ヨシばかり生えていることが原因のような気がします。

広場の脇の方にミズバショウが生えていましたが、白い苞はついておらず緑の葉っぱだけ。5月上旬のこの頃にはもう終わっちゃったんでしょうか。そして大沼ではない近くの湿原にはワタスゲが咲くらしいのですが、まだ花期ではないので当然見られません。今時分の7月からワタスゲのシーズンになりますかね。ミズバショウワタスゲも見られませんでしたが、広場で桜とフデリンドウミツバツツジが見られたので良しとしましょう。

木道は、広場からぐるっと大沼の周りを周遊するように設けられています。静かな湿原の木道を歩き、振り返ると午前中に登った新湯富士が見えます。大沼から見る新湯富士は山の形が三角に見えます。三角形に見える山だから富士山と言っているのかもしれません。国立公園の標識には大沼の標高は980mとありますが、遠目からにはここから標高差200mしかない山には見えず、もっと高く見えます。この静かさも悪くありません。

帰路は新湯富士の山頂を踏まず、山頂を巻くように作られた平坦な道を進みます。ヨシ沼の周りに設けられた木道を歩いて沼の周囲を半周し、木道が終わったらほぼ平坦な登山道。ほぼ平坦な道なのですいすい進めます、道の脇から水が湧き出ているところもありますが。出発時の温泉神社に到着したら、那須塩原ハイキングは終了です。

新湯富士ハイキングは、行動中、我々一行の他のハイカーは数組ぐらいでした。陽気の良い日曜日だったのですが、落ち着いた場所でした。ファミリー向け、のんびりハイクをしたい人にお勧めです。

なお、温泉郷を歩いていて気になった共同浴場。町の道端に、共同浴場を見かけました。温泉郷内に何か所かあるらしいですが、草津共同浴場のようなもののようです。洗い場はなく、湯船のみ。入浴料は300円。団体で来ているのじゃなかったら、共同浴場(混浴もあるらしい・・・)に入ってみたかったのですね。

目撃情報

クマの出る山の登山口にあるもの、それは熊目撃情報。

3月に行った川苔山の川乗橋ゲートにも掲示してあったし、6月上旬に行った大塚山(御岳山~古里)の分岐にも掲示してありました。

今までクマに遭遇したことはありませんが、一人で歩いている時に熊目撃情報を目にすると、必要以上に熊鈴をリンリン鳴らすようにしてしまいます。

熊に襲われたらしい頭から血を流している人を、川乗橋付近で見かけたという知人の話しもありますし。用心にこしたことはありません。

単独行の際には「熊に気をつけなきゃ」と緊張させる熊目撃情報ですが、先週行ってきた八ヶ岳の美濃戸にも掲示されていました。場所は美濃戸口から少し歩いた、やまのこ村の壁面だったでしょうか。

文面は淡々としていました。

「熊目撃情報」

「〇月〇日、爆裂火口に熊が転落しました」

・・・・。

なに?

硫黄岳の爆裂火口にクマが転落した?

この目撃情報、クマが出るから気をつけてねということなのか、野生動物のクマでも爆裂火口に転落することがあるから人間はもっと気をつけてねということなのか、良く分かりません。が、クマが転落した瞬間をどこで目撃したのか、気になる・・・。

硫黄岳の爆裂火口が見える遠方のどこかの登山道から、「あっ、クマがいる!」と思って見ていたらクマが足を滑らせて爆裂火口に転落していくところを見たのでしょうか?

それとも、クマが人間の気配を感じて急いで逃げていく際に誤って転落していく姿を、硫黄岳に登って行く登山者が登頂途中で目撃した、とか?

爆裂火口に転落して、さぞあせったことだろうとクマの気持ちを考えると・・・、かわいそうですが、どんな状況だったのかという好奇心の方が勝ってしまいます。

天候不良で硫黄岳には登れませんでしたが、他の場所から爆裂火口を見て、(あそこをクマが転落していったのか・・・。)と感慨深い八ヶ岳ツアーでした。

アラジン雑記

アラジン(@新国立劇場)の最終日6/23の公演に行ってきました。ということで、少しメモ。

最終日の「アラジン」は米沢・奥村ペアです。盛り上がった公演でした。

まず冒頭。奥村さんは、町の明るいお兄ちゃんといった雰囲気のアラジンが似合います。身体の動きも軽い。アラジンのお母さん(菊地さん)は、初日の中田さんより設定年齢がほんの少し若く見えます。背中の感じ、股下の開き具合、膝の曲げ具合など、ほんの少しの違いですが、演じる人によって違う。

宝石のディヴェルティスマン。

オニキスとパールはキビキビした動きで楽しい。ゴールドとシルバーは大人な雰囲気。サファイア細田さんは回転が安定していて、指先まで美しい。

エメラルドは初日と同じメンバーで、寺田さん・玉井さん・速水さんのトリオ。踊りはいいとして、最後のキメのポーズを観ていて思ったのは、「これはナーガ(多頭の蛇の神)?」

ナーガは彫刻だと、大体頭は7つぐらいで作られていて、真ん中の頭が一番高く、左右対称に一段ずつ低くなるように他の頭が配置されています。ポワントで立った左右の女性陣の頭の位置より、真ん中の速水さんの頭の方がちょっと高く位置していて、ちょうどナーガ像っぽく見えたのです。3人で踊っているので頭は3つで、彫刻で見るような7つ頭じゃないですけどね。同じダンサーでも日によって見え方が違ってきて、面白い。

ルビーは奥田さんと井澤さん。奥田さんはパシッと決まる踊りが、観ていて気持ちいい。井澤さんは色気がありました。思い切り胸から上を反らせたり、背を丸めたポーズで女性ダンサーを導いたりする姿が色っぽい。奥田さんのルビーが井澤さんの色気に取り込まれない風なのも良かったです。男女ともお色気ムンムンだったら、濃すぎて観ていられなかったかもしれません。井澤さんのこういう一面を見ると、「シェエラザード」の金の奴隷もいけるかもと思えてきます。

ダイヤモンドは木村さん。ダイヤモンドのお付きも一緒に出てきますが、ダイヤモンドを演じるダンサーによって、お付きとの関係性がちょっと違って見えます。かつてのダイヤモンド役、西山さんは姐御っぽいリーダー、川村さんは気品のある女王のようでした。木村さんは持ち前の華の輝きと、何というか、お付きに守られている感じがありました。

1幕の終盤のプリンセスの登場シーン。米沢さんのプリンセスは高貴な姫君。新鮮な空気を吸いたくて輿から降りてきたという感じでしょうか。町の人からの思いもよらない花のプレゼントを喜び、捧げもつようにして眺め、胸いっぱいに花の香りを吸い込む。宮殿の整備されたお庭では、見ないような野に咲く花なのかも。

踊りは危なげない。登場のシーンも、浴場のパ・ド・ドゥも結婚式のシーンも、どのシーンも安定感が半端ではない。一つの踊りの終わりに、男性ダンサーが補助をしてポーズを保つ必要が無いくらい、最も望ましい位置に自らピタッとポーズを決めます。米沢さんはリフト時や、到底自分一人ではポーズを保てないオフバランスの時以外、男性ダンサーのサポートは必要ないのではないかと思えます。

米沢さんの安定感は、今回のヒヤッと場面でも遺憾なく発揮されていました。ヒヤッと場面・・・。ヒヤッとどころではない、ハラハラ場面と言った方が良いかもしれない、マグリブ人の館で捕らわれのプリンセスが、助けに来たアラジンとの再会を喜ぶパ・ド・ドゥ。

変装したアラジンが変装を解き、プリンセスと再会を喜び合う美しい場面ですが、奥村アラジンのウエストのサッシュベルト(?)がほどけてしまうアクシデントがありました。おそらく変装のボトムを脱ぐときに引っかける等して、ウエストにぐるぐると巻いている長い布がほどけてしまったのだと思います。奥村さんは布を元に戻そうと、踊りの合間にウエストに巻き付けますが、踊っているとほどけてしまう。

一旦中断、なんてことはなく、覚悟を決めたのか、長い布を垂らしながら踊り続ける主役2人。ウエストに巻かれていた布は長く、奥村さんのウエストから床に届き、床の上にも何十センチという長さで垂れていました。ウエストに巻かれている部分も含めると、元々の全長は1m30~40㎝ぐらい(以上?)あるんじゃないでしょうか。

2人が布を踏んだりしないか、身体に巻き付いたりしないかハラハラしながら観ていましたが、2人とも安全性を考慮して技をセーブしている気配はありませんでした。むしろ米沢さんからは、顔はにこやかでありつつも、こんなアクシデントには負けないといった雰囲気があったかも。こちらは、(奥村さん、そんなに飛ばなくていいよ。米沢さんを抱えたまま、3回転もしなくてもいいよ。)と思っていました。

破綻なく、アラジン・プリンセスの再会のパ・ド・ドゥは終了。無事、踊り終えた2人にプロ魂を見た!

ジーンについて。最終日のジーンは渡邊さん。初日の井澤さん同様、いつもはダンスールノーブルをやっていますが、「アラジン」ではジーン。踊りは軽やかなジャンプ、安定した回転。渡邊さんのジーンは風に乗って、空を飛べそうです。

演技面はというと、アラジンの家の前で煙の中から空中に登場するシーンは威厳あり。1幕の宮殿でアラジンに呼び出されたときは、忠実なしもべ。2幕でマグリブ人の支配下に下った時は、冷酷な魔人。連れ去ろうとしたプリンセスが抵抗していると、後ろから押して窓の外に突き落とす。3幕で魔法のランプがアラジンの手に戻り、アラジンの支配下に再び入ると、結構良いやつ風。アラジンであれ、マグリブ人であれ、支配する人間の心根に染まる。

そしてアラジンが魔法のランプをジーンに手渡し、自由の身になったことを悟った時は、喜びの表情だけではない、宿命から解放され、来し方行く末を想うような万感の表情をしていました。

こんな感じで、アラジン最終日の鑑賞は終了です。まだ書きたいこともありますが、長くなりそうなのでやめときます。

アラジン(@新国立劇場)

アラジンの初日(6/15)に行ってきました。

「アラジン」は、アラジンと魔法のランプを基にしたビントレー元芸術監督振付の作品です。公演リーフレットの「見どころ」の部分が作品の性質を端的に表現していて、「エンターテインメント性と芸術性が見事に調和した作品」です。

全編通して見どころ満載ですが、特に1幕は、宝石たちによるディヴェルティスマンオンパレードの洞窟の場面が豪華です。

個人的に印象に残ったところを、書いておきます。

まずは1幕。

人で賑わう市場の場面に登場するアラジン役の福岡さん(※今回から全員「さん」づけで統一することにしました)。やんちゃでいたずら好きだけど、憎めないキャラクターです。友人2人(木下さん、原さん)と合流し、3人が気の合ういい仲間同士という雰囲気が出ています。3人の関係性がいい。市場のシーンの踊りは、ビントレーさんらしく、細かなパを入れています。流してしまいそうなところも気を使ってステップを踏む必要がありそうです。

マグリブ人にそそのかされたアラジンは、魔王のランプを探す旅に出ます。砂漠の嵐に巻き込まれ、何とか洞窟に到着するアラジン。洞窟では宝石たちの踊りが始まります。

が、洞窟の前に忘れてはならない、砂漠でのシーンの女性ダンサーの動きがきれいでいて、ちょっと怖くもあります。女性ダンサー8名は「砂漠の嵐」という役名で、アラジンが砂漠で遭遇した砂嵐を表現したものです。アラジンを翻弄して、砂の中に飲み込んでしまうそう。そんな砂漠の嵐ダンサーズの衣装は一見、裾が切れ離しのぼろきれのように見えますが、そんな衣装を着用していても、美しいスタイルと基礎のしっかりしたクラシックバレエのテクニックが楽しめます。

「アラジン」最大の見どころ、洞窟の宝石たちの踊り。多彩な振付でどれも面白いのですが、特に印象が残ったものを挙げると、エメラルドの速水さんとルビーの木村さん。

エメラルドは女性2人男性1人の踊り。バヤデールの黄金の仏像のようなポーズが随所にあって、インド風です。速水さんは外見からは俺様タイプで押し出しが強そうに見えます。が、舞台では組んで踊るダンサーとの調和を乱さず、自分だけ目立とうとはしていません。見た目から受ける印象って、あまりあてになりませんね。速水さんはテクニックが半端ないので、どうしても目立ってしまうという感じです。ピルエットを連続して回り続けて、軸が傾き、フィニッシュがぐらつくかなと思っても、ピタッと止まる身体能力の高さが目を引きます。指先まで動きがきれいで、どこかノーブル。

エメラルドでは男性ダンサーを挟んで、女性ダンサー2人が上げた脚を交差させるキメのポーズがいい。「アラジン」のエメラルドは蛇のイメージとどこかで読みましたが、キメのポーズは蛇が巻きついたオブジェのように見えます。

ルビーは女性と辮髪(?)の男性のデュオ。色気とムードがある踊りです。観る前は、若い木村さんには難しいのではないかと思っていましたが、予想に反して色気がありました。高くリフトされて、パッと腕を大きく開くと、真っ赤な大きな花が咲いたように見えます。手足の長いダンサーが踊ると、空間の切り取り方が大きくて見栄えがします。

木村さんと組んでいる男性ダンサーは渡邊さんでしたが、辮髪姿とアラブ風衣装でいつもの面影はありません。男性ダンサーがバリバリ踊るというより、難しいリフトで女性ダンサーをきれいに見せるのが仕事というポジションです。

ランプの精ジーンの力で、洞窟から自宅への帰還を果たしたアラジン。王宮のそばでプリンセスの輿が通るのを見かけます。一同平伏した中、輿の中からプリンセスが姿を見せます。

小野さんのプリンセスは、ひょこっと顔を出してから輿を下りてきます。ここらへんがプリンセスの性格を表しているように見えます。この王女様、王宮の外の暮らしが見たいんだろうな、ちょっとした冒険心があるんだろうなといった感じです。

好奇心旺盛なアラジンは周りの人々が平伏しているところ、プリンセスの気配を感じて起き上がり、プリンセスの姿を見つめ続けます。プリンセスの気を引きたくてリンゴを投げて、いきなりこんなことをする男性にプリンセスはびっくり。一同平伏しているなか、立ち上がって動いているのは2人だけ。2人だけの時間が流れます。

プリンセスが乗り込んだ輿が出発して、平伏していた民衆は立ちあがり、日々の暮らしへと戻っていきます。その中でアラジンが一人だけ、微動だにせずにいます。瞳だけはずっとプリンセスが乗る輿の行方を見つめ続けて・・・。先ほどのプリンセスとアラジンだけが動いていたシーンとの対比が鮮やかです。客席に背を向けたアラジンの背中が、プリンセスに心奪われ、時が止まったのかのよう。背を見せているだけなのに、アラジンの心情がどのようなものか、雄弁に物語っていました。

2幕は結婚式の場が印象深いです。

イロモノキャラ(?)を滅多に踊ることのない井澤さんがジーンを踊ります。前回のアラジンで初めてキャスティングされていましたが、その回は観劇しなかったので、観るのは今回が初めてです。ジーンはテクニック抜群のダンサーが踊る役という認識でしたが、井澤さんもなかなか良いです。王子キャラでは絶対出てこない振付をこなしていて、いつもの正統派王子のかけらもなく、同一人物には見えません。あれだけ外見を変えていると、ダンサー側もいつもと違う自分を出しやすくて良いのかも。

配役の権限を誰が握っているのか知りませんが、誰が井澤さんにジーン役を振ったのでしょうか?ダンサーには様々な踊りを踊らせることが栄養になるといった趣旨の、ビントレーさんのインタビューを以前読んだことがあります。ビントレーさんが井澤さんを選んだのだとしたら、正統派王子とはまったく違う役柄を井澤さんに経験させたかったのかもしれません。どんな風に演じるのか面白いですし。

そして、ジーンのお付きの集団ダンスが圧巻です。クラシックバレエでは見られないような動きがたくさんあって面白く、機敏で、常に動き続ける運動量の多さ。ジーンダンサーズの女性ダンサーは、初演の頃からソリスト以上のダンサーを配役していたはず(うろ覚え)で、これを踊り切るには体力、テクニックともに必要そうです。観ていると気分が高揚してきます。

結婚式のパ・ド・ドゥ。リフトが相当難しそうです。抱え上げたすぐ後に、男性ダンサーが片腕離してリフトしたままポーズをつけたり、女性ダンサーが飛び込んでいって男性ダンサーが抱え上げ、すぐさま回転しながら女性ダンサーを下ろしたり(女性ダンサーは着地後すぐアラベスクのポーズを取ります)。息のあった小野・福岡ペア。一人ひとり踊るときは、福岡さんはキレッキレ。小野さんは初々しく、そして少し元気というか、お淑やかなだけでない姫でした。完璧に理想的な姫ではなく、オーロラ姫やオデット姫とは踊りの感じが違います。

3幕。マグリブ人にさらわれたプリンセス。密かに助けに来たアラジンと打ち合わせ、マグリブ人を誘惑して睡眠薬入りの飲み物を飲ませようとします。誘惑の際の踊りはアラビアンな感じで、なまめかしい。プリンセスは誘惑ダンスを踊っている一方、杯に睡眠薬を入れるよう合図を送ってアラジンに催促します。ブルカを着て変装しているアラジンは、ずっこけたりしながらも睡眠薬を入れるのに成功。睡眠薬を催促するプリンセスの様子やなまめかしい誘惑ダンスをみていると、そのうちアラジンはプリンセスの尻に敷かれそうな気がする・・・。

アラジンの命令下に戻ったジーンの力を借りて、マグリブ人をやっつけ、さあ、故郷に戻ろうという際に登場するのが魔法の絨毯。一般的には、魔法の絨毯で空を飛ぶ演出のところが、3幕の見せ場でしょうか。かつての上演時は、ここのシーンで客席から拍手が沸き上がった日もありました。

アラジン・プリンセスが王宮に戻り、踊るパ・ド・ドゥは、しみじみと幸せをかみしめるような踊り。結婚式の時の幸せいっぱい、高揚感あふれる踊りとは違います。

2人のはからいでジーンは自由の身になります。大団円を迎えて、ドラゴン・ダンス。(ビントレー版「アラジン」は、アラブが舞台でアラジン親子は中国からの移民ということになっています。それでときに中国テイストが出てくる。)ドラゴン・ダンスはいいとして、一緒に踊っているジーンダンサーズの踊りが、どうも盆踊りに見えてしょうがありません。踊りの一つ一つのポーズはカンフーのポーズに似ているので、中国風なのでしょうが。

というわけで、いろいろなテイストのダンスが観られて、大人も子供も楽しめる「アラジン」は、今回も楽しかったです。芸術監督が代わっても、ダンサーの世代交代が進んでも、新国立劇場バレエ団で上演し続けて欲しい作品です。

マスクをしてたら猫に噛まれた件

世間では花粉症のシーズンは終わったように考えられていますが、今の時期はイネ科の花粉のシーズンです。

スギ、ヒノキと続いてイネ科の花粉にも反応して、いまだにマスクをしていますが、大抵「風邪ですか?」と聞かれます。まだ花粉症のシーズンが終わらない人もいるのです。

そんなイネ科の花粉が飛んでいる6月上旬、花粉対策のマスクをして、知人宅を訪れました。

知人の家には猫がいます。その子は、旦那さんの実家近くで捨てられていたのを保護したのです。手のひらに載るサイズだった猫さんは、その後すくすくと成長し、4kgを超える大人の猫になりました。

久々に会う知人宅の猫、ミケちゃん(仮名)。以前会ったときは本当に小さくて、抱き上げると軽くて、でもじんわりと暖かかった。懐かしくて、美人猫に成長したミケちゃんを撫でようと手を伸ばすと・・・。

ミケちゃんに噛まれました。

力一杯噛んでくるわけではありません。指先がミケちゃんに触れようとすると、身をよじらせつつ、軽く噛んできます。以前遊んだときは噛んだりしない子でした。再度手を伸ばすと、やはり指先を噛んできます。甘噛みのような感じではなく、これ以上近寄ったら容赦せず、本気で力を入れてブスッと噛みますよという意思表示のように感じます。

おかしい・・・。

「ミケちゃんが噛んでくるんだけど。」と知人に言うと、

「おかしいわね。お客さんを噛んだりしない子なんだけど。」とのこと。

うーん・・・。

これはもしかしてと思い、つけていたマスクを外してみました。

すると、マスクを外した顔を見た瞬間、ミケちゃんがハッとした表情をしました。

そして、さっき噛んだ指先を「ごめんね、ごめんね」とでも言うかのように、何度も舐めてきました。猫の舌は表面がザラザラしていて、その舌で舐められてるとちょっと痛い。ミケちゃんの謝罪の気持ちは分かった、もう舐めないでいいから。

マスクをしていたらミケちゃんの嫌がるものに見えたようで、その結果、噛んできたようです。ミケちゃんから見たら、マスクをしている人間は何に見えたんでしょうね。動物病院のスタッフに見えたのか、それとも人間以外の謎の生物に見えたのか。

ソロモンの指輪があればミケちゃんの言葉が分かるのでしょうけど、あいにくソロモンの指輪は持っていないので、真相は分からない。

 

 

 

NINJA

”あなたも忍者、わたしも忍者、目つぶし投げて・・・(FRANK CHICKENS)”

ではなくて

”ひっそり こっそり、ひっそり~”、”ゲコゲコ月光~”

森山開次さん「NINJA」を観ました。

といっても、もう10日以上前の観劇なので、かなり忘れています。

そんなわけで特に印象に残っている部分だけ少し。

「NINJA」は、森山さんによる以前の新国立劇場公演「サーカス」に次ぐ、「こどもも大人も楽しめるダンス公演」という触れ込みです。森山さんが描くチラシの絵からして、楽し気。森山さんのイラストがもしぬりえとして売り出されたら、欲しい。

客席に入ると、天井から大きな手裏剣がいくつも吊り下げられています。手裏剣といっても本物を模したようなものではなく、子供のころ2枚の折り紙で作ったあの手裏剣と同じ形のものです。色とりどりの手裏剣を見ていると童心に帰っていく気がします、まだ開演していなくても。

「NINJA」は、やはり楽しく、質が高い演目でした。

テーマソングがキャッチーです。(上の「ひっそり、こっそり」とか「ゲコゲコ月光」とか)

舞台の床面に映し出される映像がきれいです。舞台上のダンサーの動きと、床面の映像が相まって、何だか別の世界に連れていかれます。「サーカス」の時も床面の映像がきれいで、不思議な気分を味わいましたが、今回も不思議な気分。

ダンサーが粒ぞろいです。どうやってこういう面白いダンサーを集め、そしてその良さを引き出す演出ができるのだろう。

女性ダンサーの浅沼さんと引間さんによって、新体操のリボンを使ったダンスが踊られます。きれい!新体操の経験がないダンサーが数か月かけてリボンの扱い方を習得したとか、新体操をかじったことがあるダンサーが舞台で披露しているとかではありません。経歴を見ると、お二人は本格的に新体操をやっていらしたようで、そりゃ、レベルが違うわけです。「NINJA」と銘打った舞台で新体操のリボンを見られるとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。

踊れる女優(プロフィールより)、中村理彩さんはポワントを履いてソロを踊ります。金襴緞子風の和テイストのチュチュが、きれいで可愛い。群舞のときの忍者衣装との違いが鮮やかです。洋風の顔立ちの中村さんですが、メイクもどことなく和を感じます。中村さんによるポワントでのダンスは、新体操の2人組同様、レベルが高い。ピタッ、ピタッと踊りがきまります。和テイストといっても、こってこての和風バレエではなく、クラシックバレエのしっかりした技術が必要とされる振付でした。「NINJA」でポワントでのダンスが観られるとは思っていなかったので、こちらも嬉しい驚き。

小さな女の子だったら、新体操のリボンの踊り(浅沼さん、引間さん)や和テイストのバレエ(中村さん)に憧れそうです。

男性ダンサーは・・・、森山さん以外、個々の見分けがつきにくくてですね・・・、カブトムシ(?)とか面白かったです。身体能力の高い男性ダンサーの踊りも観られましたし。

ソロ公演では、終盤に向けてカタルシスを感じさせるような、はたまたトランス状態で神仏を顕現させるような圧巻の踊りをみせる森山さん。たくさんのダンサーが出演する今回の公演では、びっくり箱から色々なものが飛び出てくるような感じで終わるのかと思っていました。が、楽しい、楽しいだけではなくて、忍者衣装を諸肌脱いで踊る森山さんは、するどい切れ味があり、圧倒されました。そのあたりのさじ加減が絶妙です。

「NINJA」の感想を一言でいうなら、陳腐な言い方ですが「森山さんはやはりすごい」。こどもも大人も楽しめる演目、でもこども騙しではない演目、それが「NINJA」です。

 

洗濯表示を見なかったばかりに・・・

夏の登山シーズンに備えて、アンダーウェアを新調してみました。

まずミレーのあみあみ、ドライナミックメッシュを購入。こちらは着た瞬間から、暑い。

ドライナミックメッシュを通して汗がメッシュの外に放出され、肌はいつでもサラッとしているという触れこみで期待していました。が、登山中に着用してみたところ、ドライナミックメッシュの上に着ているジップシャツが汗で背中に張り付いている感があります。

おかしいと思って友人に聞くと、サイズが大きいのではないかと言います。肌にぴったりフィットしている場合はすぐに外に汗を逃がすけれど、ゆったり着ている場合は期待の効果は薄くなると。

登山ショップの店員さんが見た目で選んでくれたサイズのものを試着し、こんなものかと思って購入しましたが、普通に着ている状態でゆるい部分があり、ぴったりフィットしていません。このせいで汗が放出されにくくなっていたのかもしれません。

もうワンサイズ下のものを購入するつもりで再度登山ショップに行くと、店員さんのいちおしはファイントラックのスキンメッシュとのこと。そういえば友人もファイントラックを勧めていた、ミレーのドライナミックメッシュは洗濯の回数を重ねると伸びてくる(特にタイツが伸びるらしい)と言っていたな、と頭によぎります。

というわけで、ミレーは買わず、ファイントラックのスキンメッシュを試しに購入しました。スキンメッシュは少しシャリッとした感じの薄い生地で、無数の小さな穴が開いています。こちらの方がミレーより安いのもポイントです。

さて、このスキンメッシュは5月の陣馬高原下から高尾山口までの縦走のとき着用していました。

気温はそれほど高くならないという予想でしたが、それなりに気温の上がった日でした。着用しているスキンメッシュは、背中に汗をかいた感はあるけれど、それ程不快ではありませんでした。まだ湿度や気温の高い時期に着ていないので本当の実力は不明ですが、5月下旬の陽気にはちょうどいい感じです。

帰宅後、1日着用したスキンメッシュを洗濯。あまり考えないで、登山ウェアと一緒に洗濯機でガラガラと洗濯しました。

そして、さあ干すぞとスキンメッシュを広げていたら、あれ?生地の小さな穴と穴がつながり、伝線したようになっています。

急いで洗濯表示を見ると、はっきり書いてありました、「洗濯ネット使用」と。

1回しか着用していないのに、1回目の洗濯で生地を損傷させてしまいました。登山用品は普通のものより丈夫だからと、油断していましたよ。(ミレーの方は毎回洗濯ネットに入れて洗濯していたので、生地の損傷なし。)

洗濯前に、洗濯表示はよく見ましょうという教訓です・・・。伝線したスキンメッシュは、伝線部分は一か所だし・・・、もちろん今後も着ます!