湖森館と古賀志山

1泊2日岩場練習ツアーの1日目行程が終わり、宿泊先は宇都宮の湖森館。暗闇の中に突然現れた建物です。

到着して割り振られた部屋は、2Fの和室。3人1部屋です。2Fに行くには階段で、エレベーターはありません。部屋は普通の旅館と同じような作りですが、布団は宿泊者が敷きます。浴衣、タオル、歯ブラシ・歯磨き粉あり。各部屋に洗面台はありますが、トイレは共同。共同の流しに給湯器あり。飲み物の自動販売機はありますが、食べ物は売っていないようです。サイクリングターミナルというだけあって、自転車レースのパネル等が1階ロビー横、談話スペースに展示されてます。

宿に着いての一番の楽しみは何といっても食事です。サーモンの刺身、がんもどき、卵とじなど贅沢さはないけれど、美味しい。嬉しかったのは、餃子が出てきたこと。宇都宮なら餃子を食べたいと思っていたのです。宿の人は良く分かってらっしゃる。

湖森館の浴場は大・小の二つ。この日の宿泊者は我々登山ツアーのみで、ツアー参加者に女性が多かったせいか、大きい方の浴場が女性用になっていました。大きいと言ってもホテルや温浴施設の大浴場のような大きさではありませんが、狭いというほどでもありません。登山の後にお風呂に入れるだけで有難い。

お風呂でさっぱりしたら、後はふかふかの布団で寝るだけ。明日に備えて早めに就寝です。

2日目、朝食は7時。食事の準備が出来たら館内放送でお知らせがあります。メニューはサバの味噌煮、きんぴらごぼう、里芋の煮っころがしなど。

古賀志山への出発は7:45です。湖森館の前で準備体操が終わったら、赤川ダムの横を通って古賀志山登山口まで歩いていきます。赤川ダムではのんびりとカモが数羽浮かんでいました。

登山口に着いたら、あら大変。工事中の看板があり、中に入れないように封鎖されていました。古賀志山は主に北コース、南コースというハイキングコースがありますが、そのどれでもないルートで今回は登る予定にしていたそうです。半月前に登山講師陣が下見に来たときに使った入り口が、目の前で封鎖されて容易に入れないようになっています。そんななか、どうにかこうにかして予定していたルートにたどり着きました。少し離れたところでは、工事関係者が数人おり、「工事しているそばなんだから入っちゃだめだよ。」と言われるかと気になりましたが、特におとがめなし。良かった。

さあ、登山開始です。古賀志山で岩場の練習といっても、スケジュール的に山頂に行くことは難しいとのこと。山頂に立って達成感を味わうより、岩場の練習をみっちりとおこなういうことらしいです。

というわけで、ひたすら岩場を登りました。二日続けての岩場練習だと前日の感覚がからだに残っていて、登るのがラク!毎月1回岩場練習を続けてますが、1か月に1回だと前回の練習で習得した感覚が、次の回では鈍ってしまってる感じがしていました。離れた場所にある別々の山を1泊までして登らなくてもと思っていましたが、なるほど、こういう効果が考えられているんですね。

岩場の練習は続きます。登り終わったさきに、総勢20名(+2名)がひとところで待つことが出来るスペースはありません。そのため順繰りにさらに上へと登り、ツアー参加者全員が登り終わるのをテン、テン、テンと登山道に散らばって待ちます。天気が良く無風の日で、のんびり待っているのも日向ぼっこ気分です。

カラビナ、簡易チェストハーネスを使った岩場練習は終わり、お昼の時間が近づいてきました。登山道を上り下りしますが、全員が食事をとれるようなスペースがありません。旅行案内の2日目の行程に展望台とあったので、その展望台で昼食でしょうか。と思っていたら、少し開けた杉林の中で昼食休憩になりました。結局、帰りの時間の関係で展望台や古賀志山山頂には行けず、昼食後下山することに。前日の大小山が標高のわりに展望が良かったので、古賀志山の山頂からの眺めはどうだったのだろうと気になります。

下山して湖森館そばの駐車場まで戻り、鹿沼ニューサンピアの温泉へ。ここの温浴施設には加温していない源泉をひいた、ぬるめのお風呂がありました。近所の常連さんらしき年配グループが、このぬるめのお風呂に世間話をしながら気持ちよさそうに入っていましたね。

温泉で汗を流して、帰路につき、今回の登山ツアーは終了です。関係ないけど、帰路途中のサービスエリアで買った菊水堂のポテトチップス、美味しい。

大小山から大坊山縦走で岩場練習

岩場練習ツアーの第4回目は1泊2日の行程です。1日目は大小山から大坊山への縦走、2日目は古賀志山(登頂なし)。事前に大小山や古賀志山をネットで検索するとハイキングコースと出てきたので、岩場はあれど楽な道かと思って臨みました。が、低山といえど岩場練習によいルートでした。

阿夫利神社前から出発。今回も最初からヘルメットを被り、簡易ハーネス・カラビナをつけています。ということはすぐに岩場練習があるということ。

しばらく歩くと岩場が見えてきました。登山講師がさっそくスルスルッとロープを張ります。斜度はそれほどではありませんが、下からは岩場の終わりは見えません。岩場練習ツアーで今まで登った岩場の中では、最も長いコースのようです。

順番にカラビナのかけ替えをしながら岩場を登っていきます。参加者総勢20名なので、登る前、登った後の待ち時間が長い。そんなときは日当たりの良いところに移動です。良く晴れた天気の下、日当たりの良いところは気持ちがいい。今回は前回と違い、靴の中のつま先部分が冷えて足先に力が入りにくいこともなく、いい感じです。

自分の順番になると、怖くて躊躇することはありませんが、どこで三点支持をするか、まだまだ瞬時に判断できません。どこに足を置こうかなと思って、ここかと思うところに足を置いてみますが体重をかけるのに不安があり、いやここかと他の場所を探す。小さな足場でも、思い切って足を置いてみれば意外に安定すると言われますが、なかなか思い切れません。岩場を登り切ったら、初っ端から、ああ疲れた。

岩場を登り、さらに進むと往きのバスの中から見えた大小山の「大」「小」の文字板が見えるところにやってきました。「大」「小」の文字板は、なだらかな山の斜面ではなく、岩でできた山肌の結構な絶壁に設置されてます。あずま屋があるここが、見晴台というところのようです。遠景の山々がきれいに見えます。

あずま屋内には旅の思い出的なノートが何冊も置いてあり、鉛筆も置いてあるのでたくさんの人の書き込みがあります。大小山は近隣の人の良いハイキングコースになっているようで、毎週どころか数日に1回来ているような人の書き込みも。

見晴台から10分弱で大小山(282m)に到着。さらに10分ほどで妙義山(313.6m)に到着です。空気が乾燥しているので、山頂からは筑波山が良く見えました。

アップダウンを繰り返し、岩場の練習もして進んでいきます。手書きの標識「仮称 あいの山」、同じく手書きの標識「仮称 越床山」と記された場所を過ぎ、ツアーメンバーの「越床峠はまだ?」という声がいくつも。やっと越床峠に到着したのは14:16頃でした。昼食休憩を終えて12:20に妙義山を出発し、途中岩場の練習で時間がかかったとはいえ、結構歩いています。

まだまだ縦走は続きます。15時過ぎにつつじ山(270m)、下って登って大坊山(285.4m)に15時20分過ぎに到着です。大坊山山頂には大山祇神社奥ノ宮とその昔、落雷で焼失した神社跡地があります。狛犬も設置されていましたが、顔の前面部分が割り取られたようにして無くなっていたのが、打ち捨てられたようで物悲しい。

奥ノ宮から参道を通って、ふもとの大山祇神社が1日目のゴールです。大山祇神社には16時頃到着しました。

バスに乗り込み、足利市から2日目に登る山に近い宇都宮市まで移動です。途中、あしかがフラワーパークが車窓から見えました。藤の花が有名ですが、冬はイルミネーションが名物になっているとか。まだ陽がある時間に通りがかったため、ほんの少しだけのイルミネーションがちらり。フラワーパークの前に駅を新設している工事も見えました。ググってみたら、今年の4月にあしかがフラワーパーク駅が出来るとのこと。

この日のお宿は宇都宮市森林公園内にある湖森館。

足利市から高速に乗って宇都宮まで移動です。宇都宮市内の商業施設や民家があるところを過ぎて、まったく街灯のない道をバスは進みます。バスのヘッドライト以外に明かりはなく、対向車線を走る車もありません。ひた走るバスの車窓からは暗闇しか見えず。目指す湖森館はいったいどこに?と思っていたら、ぼんやりと建物が見えてきました。大坊山ふもとから意外に遠かった湖森館に到着です。

分からない・・・

ル・グラン・ガラ2018(1/12@東急シアターオーブ)を観ました。コンテンポラリーはよく分からないのに、勢いで取ってしまったチケット。なぜ買ってしまったのか・・・。

一幕目はオニール八菜さん、ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャンによる「ヴェーゼンドンク歌曲」。プログラムを買わなかったし、事前にどのような演目か調べもしなかったので、やはり良く分からない・・・。観ていて浮かんできたイメージは、瀕死の白鳥の新装版。八菜さんが傷ついた白鳥、ルーヴェとマルシャンも鳥っぽいけれど白鳥ではない。傷つき、死による苦痛の解放を選んだ白鳥は、死後の世界を訪れるけれど、そこにあったのは無。肉体を失い、魂も空しくなり、白鳥のすべては失われる。

こんなイメージを思い描いたけれど、振付家の意図と違うと思います。なぜなら帰宅後「ヴェーゼンドンク歌曲集」をウィキで検索してみると、1曲目のタイトルが「天使」。八菜さんの役どころは白鳥ではなく、天使ということだったようです。

ではルーヴェとマルシャンの役どころは?白鳥ではない大きな鳥、例えば鷲のようなものに見えましたが、彼らも天使だったということでしょうか。

ルーヴェとマルシャンが二人で踊るパートでは、見た目や体つきからマルシャンの方がぱっと見では男性的なのかなと思いました。が、その後、二人がそれぞれソロで踊ったときに、ルーヴェの踊りは中性的。マルシャンの踊りは女性的な柔らかさを感じました。中性的だったり女性的だったりして見えたのは、やはり二人も天使という設定だったせいかもしれません。

2曲目以降の曲のタイトル(2とまれ、3温室にて、4悩み、5夢)と3人の踊りの関連性は、やはり分かりません・・・。(教養の豊富な人なら分かるかもしれません。)振付家の意図は伝わってきませんでしたが、美しい容姿と踊りを楽しむ作品ということにしておきます。

二幕目はドロテ・ジルベールマチュー・ガニオによる「トリスタンとイゾルデ」です。オペラのあらすじを少しは知っているので、こちらの方は「ヴェーゼンドンク歌曲集」よりは分かりやすかったです。同じ振付家の作品なので、部分的にどちらにも似たような振りがありました。振付家は意図して同じ振りを入れているのか否かは不明ですが。

舞台にイゾルデ役ドロテが一人、立っています。手には一つの杯を持ち、恭しく床に置くと、トリスタン役マチューが登場。トリスタンとイゾルデはお互い顔をそむけつつ、実はどうしようもなく惹かれあっている情景が続きます。目についた振り付けは、所々で見られるトリスタンとイゾルデが、相手の方に波を押し寄せるような腕の動き。これは二人がいるのは波に揺られる船の上ということを表すとともに、相手に向かっていく思いを表しているのでしょうか?

意を決したイゾルデが杯から毒薬(本当は媚薬)を汲み取り、トリスタンに飲ませ、自分も飲み下します。すると、二人は抑えていた感情を解放し、欲望に身を任せます。

ここで、舞台前面に映像が映し出され、欲望に身を任せる二人のイメージ映像が流れます。色っぽいイメージ映像でしたが、ダンサーの体の一部をアップに映すのは、ちょっと勘弁してほしい・・・。ヨーロッパではああいった映像が喜ばれるのでしょうか。

映像が終わって再びトリスタンとイゾルデが登場し、媚薬を飲む前の恋情を抑えた表情から一変、歓喜の表情と生き生きした踊り。今後のことの懸念など一切頭になく、恋に溺れて甘い果実を味わっているよう。

しかし甘美な時間はいつまでも続くわけではなく、敬愛する叔父、親愛の情を持つ夫への不義理に苦しみます。しかし恋情は断ち切れず、苦しいけれど離れられない。イメージ映像の水の上で踊る二人が、禁断の恋から抜けられないさまを表しているように見えます。

不倫の関係が明るみになりトリスタンは死に、イゾルデも傍らで後を追い、幕が下ろされます。

ドロテの美しく、内面の強さを感じさせるイゾルデが印象的でした。ただあらすじが予め分かっていたので何とかなりましたが、知らなかったらこの作品も自分にとっては美しい容姿と振付を楽しむ作品で終わってしまっていたと思います。やはり、コンテンポラリーはよく分かりません・・・。

1/6ニューイヤー・バレエ(@新国立劇場)

今年最初のバレエ鑑賞は新国立劇場の1/6ニューイヤー・バレエです。昨年12月下旬までシンデレラを上演していましたが、両方とも出演しているダンサーや裏方の方は大変ですね。観ている方は楽しいけれど。

最初の演目は「パ・ド・カトル」。地方公演では上演したことあるけれど、新国立劇場本拠地での上演は初めて。というわけで楽しみにしていました。この演目はあまり観たことがなく、だいぶ前にロパートキナを含むロシアダンサーの上演を観たとき以来です。

タリオーニ、グラーン、チェリート、グリジそれぞれのダンサーの特徴を集約した振付になっているそうですが、面白い。派手な盛り上がりのある演目ではありませんが、タリオーニ役本島さんは風格で存在感を示し、グラーン役寺田さんはジャンプの連続。グジリ役木村さんの動きは風になびくよう柔らかさを見せたり、腕の助けを借りないゆっくりとした回転を続けて技術の確かさをふんわりと見せてくれたりしました。チェリート役細田さんは、踊りが終わりと見せかけて、次の瞬間観客サービスをする茶目っ気をみせます。チェリートは客席の掛け合いや反応を楽しんでいるようなダンサーという設定なのかも。むかし読んだ解説によると、4人のダンサーの違いとともに、それぞれから他のダンサーに向けられる対抗心、静かな火花が散るところも見どころとありましたが、今回の上演ではそのような対抗心は見られませんでした。それよりそれぞれの違いを理解した穏やかな間柄を感じました。4人ともバレエ研修所の先輩後輩なので、仲の良さが現れたのかもしれません。

2番目の演目は小野さん、福岡君による「グラン・パ・クラシック」です。2人が登場した瞬間の拍手がすごい。片足静止状態でのポワントが得意ではなさそうな小野さんはどう踊りを纏めるのか気になります。

まず最初のアダージオ。福岡君がトゥールザンレールしている間、小野さんは片足ポワントを無理にキープせず、余裕のある範囲で降りて美しくポーズ。強靭なテクニックを持つダンサーがキープし続けているのも見ごたえがありますが、無理にキープして頑張っています感が漂ってしまうと興ざめになります。余裕を持たせて優雅さを備え、美しさを優先させた小野さんの戦略が良かったです。

続いてそれぞれのソロですが、今日の福岡君は技のキレがすごかったです。キレのある回転、軽いジャンプ、細かく速いアントルシャ。もしかして絶好調なのでは?小野さんのソロは、なんだか眩しく、神々しさを感じました。背中がきれいで見とれます。

コーダで盛り上げて華々しく終了。福岡君の男性的な力強さと美しさを備えた踊り、小野さんのつま先まで美しく音楽性豊かな踊りに劇場は大盛り上がり。満足度の高い演目でした。個人的には年初に2人の元気な姿を見られて嬉しい。

3演目目は米沢さん、奥村君の「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。全幕ではほとんど組むことのない2人ですが、ガラ公演での共演はいつも楽しみにしています。おととしのニューイヤー・バレエの「タランテラ」は本当に楽しかったし、去年のヴァレンタイン・バレエの「ソワレ・ド・バレエ」も素敵でした。チャイパドもきっと合うはず。

走って登場してきたものの、お互いの存在が気になり歩を止め、徐々に近づいていく男女。薄暮のような薄暗さを感じる舞台で、ヴァイオリンの甘やかな音色が2人の気持ちの盛り上げりを代弁しているよう。アダージオがしっとりと終ります。

その後のパートの奥村君はとても元気な踊り。やはりこういうパートは、素敵な女性に出会えた喜び爆発みたいな意味があるのでしょうか。奥村君は細かく速く高いアントルシャが印象的でした。米沢さんは、迷いのないつま先で音符を一つづつ刻んでいるよう。優美だったり、キュートだったり、小粋だったり。米沢さんのインタビューを読むと真面目な人なんだなという印象を受けますが、この舞台で見るキュートさというのは演技なのか、本来の資質が現れたものなのか。

疾走感のある音楽に合わせて、細かく音をとらえた2人の踊りが続きます。米沢さんのダイブをしっかり奥村君がキャッチし、最後は頭上にリフトして退場。胸が高鳴る演目でした。

幕が代わって、最後の「シンフォニー・イン・C」です。

第1章は米沢さんと福岡君がプリンシパル。ここでも米沢さんは細かく音を刻んで、軽やかでキュート。後のパートで女性ダンサー陣を従えて踊るときは、キュートさは影をひそめ、中心でみんなを引っ張っていく強い輝きを放っていました。場面によって自分のどの部分を舞台に出すか変えているということですね、おそらく。福岡君は相変わらずキレキレ。楽章の最後で米沢さんと福岡君のタイミングが合わなかったのが少し残念でしたが、それまでの素晴らしかったものだけ記憶に刻んでおきます。

第2章は小野さんと菅野さんが中心です。小野さんはゆったりと抒情的な踊り。きれいで一瞬も見逃したくない。この踊りを支えているのは菅野さんの鉄壁のサポートです。菅野さんのサポートは無駄な力が入ってなく見えて自然で、女性ダンサーが美しく見えます。菅野さんの丁寧なサポートで小野さんはキープがし易そうでした。最近の新国立劇場の舞台で観ていなかったので存在を忘れかかっていましたが、菅野さんはきれいな踊りと演技力、安定感のあるサポートが持ち味のダンサー。もっと舞台に出てもいいと思うものの、公演数が少ないなか、若いダンサーに舞台経験を踏ませなきゃならないので、そうもいかないんでしょうね。

第3楽章のプリンシパルは池田さんと渡邊君です。渡邊君のジャンプが高い。ニューイヤー・バレエでの出演はこの演目だけなので、この演目にかけるような爆発力がありました。若さからくる威勢の良さを感じさせる2人。今まで気づかなかった部分に目が行きました。池田さんのポワントでのアラベスクパンシェ(?)のとき、サポート役の渡邊君の手は池田さんのウエスト部分を下から支えていました。女性ダンサーの動きにばかり目が行きがちですが、地味に男性ダンサーも働いている。

第4楽章はこの日のプリンシパル細田さんと井澤君。女性ダンサーが多くいるなか、細田さんがまったく埋もれません。真ん中が定位置という感じのオーラが出ていました。上半身は優美、足元は細かいステップを踏んでいます。

最後は全員そろってフィナーレを迎えますが、アレグロの曲調のなか、曲に遅れず、美しさを保ちつつ素早いステップを踏み続けるさまは圧巻です。ぐんぐん引き込まれます。曲が終わるとともにフィニッシュのポーズを決めるダンサー。終わった瞬間、ブラボーというより、「イエーイ!」と叫びだしたくなりました(叫ばなかったけど)。祝祭感たっぷりで見ごたえあり。

楽しい観劇が終わって出口に向かうと、ニューイヤー・バレエを協賛している花王の化粧品(エスト)のサンプル配布あり。舞台に満足していい気分でいたうえ、サンプルまでもらえてさらに気分が良くなりました。花王さん、ありがとう。

戌年なので

戌年なので犬の話題を。自分で犬は飼っていないので、知人の犬(以下ワンさんと呼ぶ)の話です。

知人が飼っているワンさんはカニヘンダックス。フレンドリーでかわいい子です。

ある日、知人の家に遊びに行って、しばし知人とリビングで談笑。そのあと出かけるのでリビングを出ると、リビングに向かう廊下のある一定のラインの前で、ワンさんが待っています。人懐こい顔してシッポを振り続けて、こちらには近寄ってきません。

(いつもならすぐさま近づいてきて飛びつくのにな。)と不思議に思っていると、

知人「ねえ、あのラインからこっちに入ってこないでしょ。あそこから先は入っちゃいけないって躾しているの。」

なるほど、それでいい子にしてこちらが行くまで待っているのか。

それではと、ちょっとした遊び心で入場禁止ラインの近くまで行ってみました。ラインまであと10センチくらい。ここまで来たらラインを越えて飛びついてくるかな。

すると、ワンさんはジリジリと前足で床を掻くように、近づくような動きをします。

ジリジリ、ジリジリ。

が、一歩も入場禁止ラインを越えてはこない。

四肢を使って進もうとすれど、何かに身体を押さえつけられているか、枷を嵌められているかのように、前進はできない。

しばらく(演技派だなー。)と思って見ていましたが、あまり面白がっているとかわいそう。それで入場禁止ラインを越えてワンさんのそばに行ってみました。

するとすぐに、ワンさんが感情を爆発させたかのように飛びついてきました。

結局、飼い主のいいつけを守り続けたワンさん。

が、ワンさんの行動から「行きたい。でも行けない。でも行きたい(以下ループ)。」という心の声が聞こえてくるようでした。

犬にも葛藤があると知った一件です。

 

12/23(ソワレ)シンデレラ(@新国立劇場)

もうだいぶ経ってしまったので今更書いてもな、と思いますが、とりあえず記録のため短く。

12/23ソワレのシンデレラ(@新国立劇場)木村・中家組を観ました。

木村さんは今回がシンデレラ初主演、昨年のシンデレラでは仙女を演じていました。過去に新国立劇場でシンデレラと仙女の両方を踊ったことがあるのは、確か、本島さんだけです。主演ダンサー陣で年齢的には木村さんがシンデレラをやるのが一番ふさわしいですが、最初に仙女役をやったのでこのまま仙女役で固定かと思っていました。華のある若手ダンサー木村さんのシンデレラデビューとあっては行かないわけにいきません。

1幕、義理の姉たちと父が舞踏会用の豪華な衣装に着替えても、連れて行ってもらえないシンデレラは相変わらずの灰かぶりの服のまま。

父がさあ出かけるぞ、という段になり、舞踏会に行きたい木村シンデレラは、少しでも見苦しくないようにと掃除で汚れくすんだ服をパンパンとはたきます。舞踏会に行ったら浮くであろうみすぼらしい格好でも、木村シンデレラは行く気満々。そして父の腕を組んで颯爽と舞踏会に出かけようとしたものの、とがめられ、結局舞踏会には行けないことに。(そりゃそうだよね、この格好じゃね。)と自分の服を見て、舞踏会行きを諦める木村シンデレラ。切り替えが早く、悲嘆にくれたりしません。一人留守番中、(それでもやっぱり行きたい!)と舞踏会を夢見て踊る姿が、かわいい。

仙女はこの日も細田さん。冷たい美しさのミルタ(@ジゼル)の時とうって変わり、優しさを備えた美しさ。

四季の精は、夏の精の渡辺さんの腕の使い方が、夏の精にしては勢いがいいと感じた部分がありました。今回のシンデレラでは観に行った2日とも渡辺さんだったので、他の夏の精と比べたわけではありませんが、自分の記憶では夏の精は登場の初っ端だけでなく、終始気だるげな腕使いをするものだと思っていました。記憶なんてけっこう曖昧なことがあるので、今までの夏の精も渡辺さんと同じような感じだったのかもしれませんが。

2幕になって道化が登場。井澤諒君です。Kバレエ時代の井澤(兄)君は観たことがなく、今回が初見です。道化にキャスティングされるくらいだからしっかりしたテクニックを持つダンサーに違いないと見当をつけていましたが、テクニックがあって明るいキャラの道化でした。この日は王子の友人役で井澤駿君が出演していて、兄弟そろっての舞台。兄弟でも、見た目も違えば個性も違うんですね、当たり前ですが。

王子の中家君が登場。登場の瞬間が颯爽ときまっています。ティボルト役(@ロメオとジュリエット)が似合っていたので、新国立劇場バレエではアンチヒーロー的な役柄でキャスティングされていくのかと思っていました。ですが白い衣装の王子役も似合っていて少し驚き。中家王子は嫌味がなく肩に力の入っていないきれいな踊り。長身のダンサーは動きにシャープさがなく、伸びたゴムのような感じの踊りで観ていて面白くないこともあるのですが、中家王子はそんなことはありませんでした。恐らく運動神経がいいのでしょう。

美しく変身した木村シンデレラが登場。階段をポワントで降りる場面の真顔が、若干怖い。顔立ちのはっきりした美人が真顔になっていると周りから「怒っているの?」と言われることがありますが、それと同じかもしれません。階段を下り終え、夢見るように舞踏会場を眺める姿が美しい。微笑めばパッと花が咲くよう。

シンデレラと王子の踊りが始まり、王子によるシンデレラのリフトが軽くて高い!長身の中家王子と並ぶと、木村シンデレラは小柄なダンサーなのかと錯覚してしまいます。

シンデレラのピケターンによる舞台一周。音に遅れるんじゃないか、息切れせず最後まで回り続けられるか、息を飲みつつ木村シンデレラの踊りを見守ります。そんな中、一観客の余計な心配など吹き飛ばし、難なく踊り終える木村シンデレラ。思うに、木村さんはバレエ教室でレッスンメイトにやっかまれても、その踊りで周囲を納得させてきたタイプのダンサーではないかという気がします。

木村・中家組のパドドゥは、小野・福岡組ほどのスムーズさはありませんでした。ペアを組んでいる年輪が違うのだから当然ですが。木村さんの相手役は今のところ渡邊君がベストだと思いますが、中家君も悪くありません。

2幕が終わって、3幕が始まり。幕の前を横断して舞踏会帰りの客が人間模様を繰り広げます。幸せそうだったり、怒っていたり、振られたり。実はこの人間模様の場面を観るのを楽しみにしているのですが、以前より演技が薄くなったような気がします。幸せなカップルの天にも昇るような浮き浮きした感じや、喧嘩したカップルのプリプリ怒っているけど何かかわいい女性、仲良し女性2人組のかしましさ、振られる男性の置いてけぼり感。昨年のシンデレラは今回と同じような感じで、(あれ、こんなだったけ?)と思ったのは覚えています。前々回(2014年公演)かその前(2012年)あたりと、前回・今回ではダンサーが違うのか、品よく演技は控えめにということにしたのか、謎です。

というわけで、2017年のバレエ鑑賞は木村さんのシンデレラで見納めです。次は来年のニューイヤー・バレエです。関係ないけど、12/26キエフ・バレエの150周年バレエ・ガラを観に行っておけばよかったと少々後悔・・・。

12/22シンデレラ(@新国立劇場)

12月の新国立劇場シンデレラは、12/22小野・福岡組と12/23ソワレ木村・中家組を鑑賞しました。

小野さんのシンデレラはこれまで何回も観ています。シンデレラの演目自体、新国立劇場初演から観続けているので、もう行かなくてもいいかと思うものの、舞台はなまもの、一期一会。いつ観られなくなるか分からないので、観られるうちに観ておかなくては、と観に行くことに。

一幕の小野シンデレラ。お城で開かれる舞踏会に連れて行ってもらえないけれど、しょげません。誰もいない家で一人舞踏会を夢見て踊るさまは、元気で、ちょっとお転婆な感じ。ステップが身体に馴染んでいて、動きが軽いです。ただ元気な女の子というだけでなく、つま先まできれいに神経が行き届いて美しい。

留守番のシンデレラのもとに、昼間受けた施しに報いようと老女が現れ、一瞬のうちに美しい仙女に早変わり。この日の仙女は細田さん。上半身の動きが柔らかくきれいです。腕の動きが優美。新国立劇場シンデレラの仙女というと、川村真樹さんの仙女が気品があり、シンデレラへの慈愛を感じさせ素敵でした。細田仙女はシンデレラより少し年上の、優しく美しいお姉さんのように見えました。

仙女の招きで四季の精が現れます。春の精は五月女さん。春の浮きたつような気分が表された振り付けですが、テクニックのある五月女さんはさすが。細かいステップの連続で実は難しいアシュトンの振り付けをモノにしていて、観ているこちらが楽しい気分になってきます。

四季の精の各々の踊りが終わったら、仙女がセンターに立ち、踊りを先導していきます。コミカルな音に合わせて細かなステップを踏みますが、ここは音に合わせるのが地味に大変だろうな。ステップをはしょって、いかにも踊れてますと見せかける事はできるだろうけど。細田仙女はふわっとした見た目に反して、テクニックは盤石です。

続いて星の精たちが登場。かわいい踊りです。毎回思いますが、新国立劇場バレエのコールドは素敵です。

でも、ああ、また思い出してしまった・・・。何が?星の精が着用している水色のチュチュを見ると、あるものを思い出してしまう。

それはロビンちゃん(@がんばれロボコン)。

ロボコンに出てくるロビンちゃんは水色のチュチュを身に着けています。ちょっと色合いも異なり、デザインも見た目も違いますが、星の精が登場すると「ロビンちゃんの集団だ。」と思ってしまいます。色の記憶というのは強いのですかね。

白を基調としたきれいな衣装で輝くような美しさのシンデレラが、きらきらとした馬車に乗り、舞台を一周して1幕が終了。魔法がかかったようなこの場面は、夢見る小さな女の子(大きな女の子も?)だったらワクワクするところ。2幕への期待を抱かせる演出がにくい。

2幕があいて、一人、宮殿の舞踏会場に道化が座っています。今回の道化は木下君。道化は小柄でテクニシャンのダンサーが演じるものと個人的に思っているのですが、木下君は別に小柄ではありません。他日でキャスティングされているように、王子の友人役が本来のポジションと思うのですが、井澤(兄)君(こちらも小柄ではない)も道化。

道化を任せられるテクニックを持つ小柄のダンサーが不足しているのか、長身ではないテクニックのあるダンサーはこだわりなく配役するということなのか、良くわかりません。小柄なダンサーだと茶目っ気や憎めなさ、愛嬌が、外見が手伝って表現しやすいのに。ダンサーの役の表現の幅を広げようという親心(?)でしょうか?芸術監督が、「王子役は絶対長身」というこだわりがありそうなことは何となく分かりますが。

舞台に舞踏会の客人が加わり、シンデレラの義理の姉達も到着して、王子の友人に続き、ファンファーレが鳴って王子の登場です。王子役の福岡君が王様のような貫禄になっていないか注目しました。ほっ、大丈夫です。

王子の踊り、客人たちの踊りと舞台が進んでいき、不思議な雰囲気が舞踏会に流れてきます。舞踏会のメンバーが注目する中、四季の精たちに引き続き、シンデレラが現れます。すぐさま王子がシンデレラの元に駆け付け、王子の片手のサポートだけで、シンデレラはトウシューズで立ったまま舞踏会場の階段をしずしずと降りてきます。顔は真正面に向けて決して足元を見てはいけない振り付けで、ポワントで降りるのはさぞ怖かろう。この時のシンデレラは真顔。小野シンデレラだけではなく、他のキャストの時もそう。この真顔は、魔法が解けてしまわないだろうか、場違いだと追い出されたりしないだろうかという緊張感を表しているのですかね。一方王子は「なんて素敵な人なんだ」とでもいうようにシンデレラを見続けています。

ポワントで階段を降り終え、無表情だったシンデレラの顔が緩みます。初めて見るきらびやかな世界に感動しているかのようです。お付きが持っていた柔らかなヴェールをフワッと広げ、柔らかな表情になったシンデレラに王子はさらに魅了されたよう。そして羽の生えたかのような軽やかな踊りで、素敵な女性に出会った喜びを表現します。バレエに出てくる王子ってこういうのばかり・・・。小野シンデレラは王子の好意に最初は戸惑うものの、徐々に二人の心が通じ合っていきます。

軽やかなパを繰り出し、愛らしさと魅力を振りまく小野シンデレラ。シンデレラを探す王子のそばを彗星のように現れて、王子の恋心を掻き立てます。

小野さん、福岡君の二人のパドドゥは、何回もペアを組み続けているものの良さを発揮してました。リフトもサポートもとてもスムーズで、構えることがありません。絶対落とされることはないと、小野シンデレラは躊躇なく福岡王子の元に飛び込んでいきます。

舞台を観ていると、実際はどうなのか分かりませんが、小野さんは実は誰とでも合うタイプのダンサーではないという気がします。ムンタギロフが新国立劇場に出演した際、小野さんと米沢さんを交互に相手役にしていました。米沢さんとでは恋人同士に見えたのに、ラ・バヤデールで小野さんと共演した際、二人は恋人同士には見えませんでした。どちらかというと、見た目はまったく違うのに兄妹という設定の方が合っている感じ。そんなわけで、小野さん贔屓のわたしは、小野さんには福岡君(か、前シーズンの「テーマとヴァリエーション」でのペアが良かった奥村君)を相手役として希望しています。

舞踏会が佳境に入ってきたころ、12時の魔法がとけ、シンデレラは元の灰かぶりの格好に戻って慌てて宮殿を後にします。残されたのはきらびやかな片方の靴。王子が靴を拾い上げ、シンデレラを見つけるぞと誓って2幕は終了です。

3幕が開幕して、家に戻ったシンデレラ。楽しかった舞踏会を思い出し、一人踊ります。ここの小野シンデレラは王子が自分を探して追ってくるなんて、想像もしていない感じです。楽しい思い出を胸にそっと収め、舞踏会から戻ってきた義理の姉たちのお土産話に聞き入っています。そんなところへシンデレラを探している王子一行が登場。義理の姉たちの醜くもおかしな靴をめぐるすったもんだがあった末、シンデレラのポケットからもう片方の靴が転がり落ちて、大団円です。大それたことなど望まないタイプのシンデレラですが、王子の思いの強さにはにかみながらも、喜びで顔が輝いています。王子の思い人がシンデレラと判明し、義理の姉とシンデレラがハグ。姉がチョンチョンとシンデレラの頬に触れ、笑顔で「幸せになりなさいよ」とでも言っているかのような場面は、ジーンときてしまいます。

舞台が暗転し、少しづつポッ、ポッと星の精の持つステッキに光がともります。静かな星の瞬きのようできれいです。幸せをつかんだシンデレラと王子の最後の踊りは、満ち足りた幸福感が伝わってきて、観ている方も幸せな気持ちになります。王子の肩にそっと頭をもたせかけるシンデレラ。良かったねシンデレラ、という思いの中、終幕です。行くのを迷ったシンデレラの演目ですが、エンディングの幸福感がたまらない。やはり行っておいて良かった!