5/4白鳥の湖(@新国立劇場)

木村・渡邊組の白鳥の湖を観てきました。

こどものためのバレエ劇場の白鳥の湖では共演している二人。こどものためのバレエ劇場を観劇するのはなんとなく気が引けるので、二人の白鳥の湖は今回が初見です。

今回は上の方の階からの観劇なので、オペラグラスが必須。1幕、ジークフリード王子役の渡邊君が登場すると、さっそくオペラグラスの出番です。周りの席の人も同様、オペラグラスを使いだします。

渡邊君は長身スレンダーでスタイルが良く、大きなジャンプが軽い。1幕最後に一人舞台に残り、物思いにふけりながら踊る姿も様になります。この場面で踊るシェネがどんどん加速していき、それがジークフリードの心の内のモヤモヤしたものが高まっていく様子を表現しているように見えました。

1幕のパ・ド・トロワは池田さん、柴山さん、木下君。熱烈なファンがついているらしい池田さんですが、池田さんの踊りの印象は、「威勢がいい。」そういう個性のダンサーなのか、元気に踊るよう指導されているのか分かりませんが、なんだか威勢がよく見えます。あっけらかんとした明るい性格の人なのかも。柴山さんはしっかりと、木下君は嫌みのないきれいな踊りでした。道化は小野寺君。超絶技巧を見せる感じではありませんでしたが、悪くない道化役でした。

どうでもいいことですが、以前は1幕の舞台の端で小芝居をしているダンサーがいたものでしたが、今回はいたかな?オペラグラスで物語の中心ばかり追っていたので気づかなかっただけかもしれません。が、けっこう小芝居を観るのが好きなので、舞台中央にいなくても自分なりの世界の演技をしているダンサーがいると面白いのです。

そして踊りや演技はさておき、何となく違和感を感じるのが舞台の遠景に見える景色です。山の上から斜面に沿って川が流れている絵なのですが、実際の山の景色だったら上流の急な斜面は侵食して崩壊しているはず。舞台装置の絵のように、山の上からのどかに太い流れが湖面に流れ込んでいく様子が見えることはないのではないか、と気になってしまいます。あの遠景は、何処かを参考にして描いた景色なのですかね?

2幕。ジークフリードの登場に続いて、オデット役の木村さんが登場します。木村さんは手足が長くて(ついでに小顔)、スタイルが美しい。腕の長いダンサーが白鳥役を演じると映えますね。

欧米出身のダンサーは小柄でも手足が長いのですが、一般的な日本人ダンサーだと、同じ位の身長の欧米人ダンサーより腕が短い傾向にあります。白鳥の羽がはばたくような腕の振りをすると、やはり日本人ダンサーにもう少し腕の長さがあるといいのに、と思ってしまうのです。そんなわけで、木村オデットはその長い腕で、白鳥の羽の美しさを雄弁に語ってくれました。(オデットは白鳥から人間に変身するところをジークフリードに見られるわけで、変身後はずっと人間の姿のはず。ですが、白鳥のように羽根をはばたかせる振りが2幕の間中、終始取り入れられているのは謎です。)

一目で心を奪われ、オデットに求愛する渡邊ジークフリード。一方の木村オデットは、優しくみつめるジークフリードの瞳を覗き込みながら、「この人なら信じられるかも。いえ・・・、やはりダメ。」と心が揺れ動いてなかなか打ち解けません。自分の愛を受け入れてくれないのかとジークフリードが諦めかけると、今度はオデットが関心を引こうとします。徐々に二人が打ち解けあい、オデットが「この人を信じよう」という心境に至ります。

バレエにセリフはありませんが、木村オデットの所作や踊りがセリフを語っていました。役柄上、笑顔をみせず、ちょっと怖い顔に見えた木村オデットですが(木村さんは、ニコニコしていないと怒っているのかと周りに思われてしまうタイプの美人顔)、オデットの心情を丁寧に演じていたと思います。また、ピタッと止まってアラベスクをキープするラインが、自然で美しかったです。こういったアラベスクのキープも、オデットが他人に頼らず毅然と生きていく性格を表しているのでしょうか。

3幕、宮殿での花嫁選び。今度は黒鳥、木村オディールがロートバルトに伴われて登場です。オディールの方がオデットを演じたときより生き生きしているように見えます。若いダンサーには踊りの難易度は別にして、オデットよりオディールの方が演じやすいとインタビューか何かで読んだことがあります。そりゃはかなげな美人より、目的のはっきりした登場人物の方が演じやすいでしょう。オディールの役目はジークフリートを自分の虜にして、ジークフリードの誓いを無にすること。オデットよりは輪郭のはっきりした掴みやすい役柄です。踊りも開放的で派手目。

意味のあるような流し目をしてジークフリードを惑わし、オデットのような素振りで渡邊ジークフリードの疑いをはらそうとします。そして、自分に魅了されるよう魅力を振りまく。木村オディールの踊りに破綻はありません。渡邊ジークフリードはジャンプはいいのですが、連続ピルエット(正式名称分かりません)が少し不安定でした。3回転(か、4回転。ちゃんと数えていなかったので、回転数は不明)ぐらいまでは安定しているのですが、それ以上になると軸がぶれてしまう。どこか身体を故障しているのか、身体が柔らかくてピルエットの軸を保ちにくいのか、あごが上がっていて回転するたびに顔がぶれるせいなのか、理由は良く分かりません。他の動きが良かっただけに、もったいなかったです。(訂正:他日キャストと比較して、渡邊君のピルエットは回転数が多かったような気がします。軸や顔のぶれがどうのというより、テクニックの見せ所として回転数を多くし限界に挑戦した結果、限界を突破したところで軸が傾いてしまったという感じです。テクニック不足とかの問題ではありません。)

見事、オディールが騙しおおせて、王子は陥落。木村オディールは王子を嘲笑し、もらった花束を投げ散らかしてロートバルトと退場です。

4幕。オデット以外の白鳥たち静かに過ごしている湖畔。そこへ悲しみにくれた木村オデットが登場です。生気が乏しく、アラベスクをする姿も弱々しい。

白鳥たちがオデットを慰めているところへ、王子が登場して二人は和解へ。

そこへロートバルトが二人の仲を引き裂こうと現れます。オデットは完全にジークフリード王子に身を委ねています。2幕ではあんなによそよそしかったのに、このオデットの変わりよう。最後の戦いに向けて、これで奮い立たなくては男じゃないぞ、ジークフリード

と、勇ましい気持ちになりますが、戦隊もののような派手なバトルはありません。二人の真実の愛攻撃(←勝手にそう呼んでいる)でロートバルトが自滅するという展開です。「やめろー、純粋できれいなものをオレに見せるなー。」とロートバルトがもがき苦しみ、湖に追い込まれて深みにはまり、消滅します。悪魔の終わりはあっけない・・・。

アンハッピーエンドではなく、ハッピーエンドで舞台は終わります。ハッピーエンドはやはり観ていて気持ちいいです。白鳥の湖はもともとアンハッピーエンドだった物語をハッピーエンドに変えた経緯から、曲調もアンハッピーエンド用に出来ているといわれますが、そういうのは解釈次第ではないでしょうか。どんな暗闇の中にいると思っていても、明けない夜はない、という感じでハッピーエンドのエンディングでもフィットしていると思うのですが。

期待の若手、木村さんと渡邊君は立派な主演を務めあげました。木村さんは、小野さん・米沢さんに続いて新国立劇場の看板になる(はずの)ダンサーですが、舞台度胸も充分。本当に将来が楽しみなダンサーです。客席は満席ではありませんでしたが、カーテンコールが何度もあり、観客も盛り上がっていた5/4の白鳥の湖でした。

 

 

奥多摩10座コンプリート②

①のつづき。

鷹ノ巣山の下山は、水根沢林道を通って水根まで下りていきます。

始めは石尾根縦走路。石尾根縦走路は広くて安心、右前方に富士山が見え続けているので楽しいです。縦走路を歩いていると、一本の桜の木が生えていて、たくさんの一重のピンクの花をつけています。まだ蕾もあり、散りかけの桜というわけではありません。稲村岩尾根でも桜をみましたが、風が吹くとハラハラと散るような散りかけの桜でした。桜の種類が違うのか、環境が違うからなのか良く分かりませんが、まだまだきれいな桜をみられて得をした気分です。

石尾根縦走路の分岐で倉戸山・水根方面と表示のある方向へ。この分岐ではそのまま石尾根を進む人ばかりで、水根方面に下りていく人がいませんでした。みんな六ツ石山に行くのか、それとも奥多摩駅まで下りていくのか。

榧ノ木尾根分岐から六ツ石山分岐方面に進むと、針葉樹の林の中の道を下り続けます。道が急ではありますが、道幅があるので危なくはありません。静かな針葉樹の林を下っていると、後方から急ぎ足で下りてくる人がいます。そして前方からは熊鈴を鳴らしながら登ってくる人もいます。あまりにもひと気が無いと不安になってくるので、人の姿をみかけて一安心です。ちなみに後ろから来た人はあっという間に追い抜いていき、姿が見えなくなりました。

一時間以上休みなく歩いていたので一休憩をしようと、なだらかで広い道の途中でストックおろして、ザックもおろしました。何気なくザックを置いた場所は、登山道の山側ではなく谷側。道にザックをおろして手を離した瞬間、ゴロンゴロンゴロンとザックが谷に向かって転げ落ちていきます。ぎゃー!

谷側は崖にはなっておらず、谷の底は登山道から見えます。ただ、落ち葉がたくさん溜まっているので、見た目より深いのかもしれません。最悪、谷の底までザックが落ちたとしても拾いに行くことは出来そうですが、登ってくるのは大変そう。そんな思いが脳内を駆け巡りながら、ザックが転がるのを追って斜面を下っていきます。

ザックは転がっていくにつれ加速度が増していきます。このまま谷底まで落ちて行ってしまうのかと絶望的な気持ちでいると、大きく出っ張った木の根っこにザックが当たり、動きが止まりました。ザックを拾って斜面を登り、胸をなでおろしました。谷側に荷物を置いてはいけないと分かっていたのに、一瞬の気のゆるみで酷い目に。油断禁物です。

この後は、沢沿いの水根沢林道を下っていきます。沢沿いと言っても、登りのときにチラッとあった渓流が見える安全なルートとは違います。道が崩落しかかっている部分があったり、滑落したら命はなさそうな片側崖の道だったりして、通行注意です。

登りの稲村岩尾根の登りが延々と続いたのと同様、水根沢林道も延々と続きます。水根沢林道はなだらかな道で、そのぶんどの程度下ってきているのか感覚があいまいになってきます。

そんな延々と続く水根沢林道を歩いていると、広葉樹そばの道と針葉樹そばの道の違いに気づきます。針葉樹のそばの林道は、しっかりと踏まれて固く、崖側の崩壊、山側の土砂崩れはほぼない。一方、広葉樹のそばの林道は、山側の土砂が崩れてきて林道自体が狭くなっていたり、土砂のせいで谷側に傾斜していたり、谷側が崩壊しかかってていたりするところが結構あります。広葉樹の生えている土壌がゆるいのか、多くの落ち葉のせいで道がもろくなりやすいのか。針葉樹が生える人工林は人の手が行き届いているため、ついでに道も整備されているのか。疑問が頭に浮かびますが、結局よく分かりません。見ても歩いても楽しいのは広葉樹のそばですが、歩くには針葉樹そばの道の方が安心。

そんなことを考えながら、針葉樹そばの道を下っていると、目の前を長いものが谷側に向かって横切っていきました。谷側は傾斜の緩やかな杉林でしたが、パッと見ると先ほど横切っていったものが、林の中からこちらの様子を見ています。こっちも驚きましたが、向こうも驚いたようです。横切ったのはヘビ。側面に赤色のあるヘビでしたが、ヘビの種類は不明です。

さらに下り続け、いつか崩落するのではないかという道や、渡渉、木の橋をいくつも通っていくと、眼下に人家らしきものが見えてきました。人家らしきものが見えてくると、一気に安心感がわいてきます。思ったよりアドベンチャーな下山路でした。今度鷹ノ巣山に行くときは他の道を通ろう。地図にわさび田があると記載されてましたが、どこにあったのかまったく気づかなかったのは残念です。

林道が終わると舗装道路のおくたまむかし道に合流します。これを下れば、水根バス停です。14:06水根バス停発のバスに間に合うか、ぎりぎりの時間帯です。走らず急いで下りましたが、あとバス停まで10mもないところで、2台続いてバスが停留所に入ってくるのが目に入りました。バス停に行くには道を渡らなければならない、でもこの距離では間に合わない。

目と鼻の先でバスは増便、定刻便とも行ってしまいました。次のバスは約1時間後。落胆が半端ありません。頚椎症の痛みがなかったらもっとサクサク歩けたかも、ザックが転がり落ちなかったらバスに間に合ったかも、と。

実はこの前の週、御前山から下山してきた時も、境橋バス停で目と鼻の先で増便のバスが行ってしまいました。2週続けて、同じ目にあうとは・・・。境橋バス停では増便のバスには乗れませんでしたが、その数分後にきた定刻便には乗れたので、結果的に万事OKでした。今回はアンラッキー・・・。

次のバスが来るまで時間つぶしのため、歩いてすぐの水と緑のふれあい館へ。奥多摩湖畔の藤棚の藤の花がきれいでした。ふれあい館内の飲食店で果肉が入った硬めのイチゴソフトクリーム(350円。コーンの代わりに最中の皮が添えてある)を食べ、一休憩です。

増便のバスが奥多摩湖バス停に到着したので乗り込み、定刻便の到着を待って出発です。途中、境橋バス停に止まりましたが、そこで見たことがある人が乗ってきました。下山路の石尾根縦走路を歩いているときに、追い越していった人です。六ツ石山とトオノクボを通って、境橋バス停に下りてきたようです。登山詳細図のコースガイドによると、道標なしの熟達者向けのコースだとか。地図を確認しても変なところに迷い込んでしまうわたしには、ちょっと無理なコースかもしれません。

こんな感じで鷹ノ巣山登山は終了です。眺望の素晴らしさに感動する一方、もっと注意力を持たなきゃと反省しました。帰りの電車で昭島に寄るのは面倒でしたが(ホリデー快速おくたまは昭島に停車しないので、乗り換えが必須)、無事オリジナルピンズをもらえたのは良かったです。

 

奥多摩10座コンプリート①

鷹ノ巣山に登ってきました。

4月の中旬の川苔山から始まって、次の週は御前山、そして4月最後の週の土曜日に鷹ノ巣山。4月は毎週ひとつづつ登って、去年から今年の3月までに登った御岳山、大岳山、雲取山、日の出山、浅間嶺、高水三山、三頭山と合わせて、ヤマスタの奥多摩10座コンプリートです。ちなみに鷹ノ巣山に登った後は、昭島のモリパークアウトドアヴィレッジに寄ってオリジナルピンズをもらってきました。

鷹ノ巣山は日帰りできる奥多摩の山の中では、行動時間が長い。公共交通機関を使っていく場合、行動時間は短いものでも6時間以上かかります。行動時間の長い、初めて行く山は時間に余裕をもって臨みたいので、いつもより早めの時間に出発です。

7:18に奥多摩駅に到着すると、思ったより登山者が多いです。お手洗いを済ませ、東日原方面に行くバス停に向かうと、すでに30人ぐらい並んでいます。しまった、お手洗いは後にしておくんだったと後悔です。

が、出発時間を待っていると西東京バススタッフから、「川乗橋に行く増便を出します。川乗橋に行かれる方はこちらからご乗車ください。」とアナウンスがありました。登山者が多く見込まれる日には予め人員を手配しておいてくれるのか、登山者が多いときにすぐに増便を決定してくれるのが西東京バスの良いところ。ぎゅうぎゅう詰めで登山前から疲れるようなことはなく、快適にバスに乗れます。

川乗橋への増発便が発車した後、7:27に東日原行きの定刻便が出発です。東日原への途中、川乗橋ゲート付近で川苔山への登山準備中の人の姿が何人も見られました。2週間前に川苔山に行ったときは、林道工事のため川乗橋ゲートからの登山道は通行止めということで、鳩ノ巣駅方面から登りました。川乗橋ゲート方面は、GW期間中は一時的に通行止めが解除されているんですね。舟井戸コースはあまり面白くなかったので、川苔山に登るならこっちの方が良さそうです。

バスはほどなくして東日原バス停に到着。バス停には公衆トイレがありました。ここで降りた人がすべて、稲村岩経由で鷹ノ巣山を目指すわけではなさそうです。鷹ノ巣山登山口は中日原バス停近くにありますが、さて中日原バス停は左右どちらの道をいったものか?バス停近くには大きなイラストマップが掲示されていて、このバス停からの徒歩での目的地のルートが描かれています。こういうものより、「鷹ノ巣山登山口はあちら→」のような標識がある方がありがたいのですが、みた範囲では標識はありませんでした。持参した登山詳細図とにらめっこしていたら、次々と他の登山者が出発してしまったらしく、いつのまにかバス停が閑散としていました。

右側に行った人もいるし、左側に行った人もいる。バスが帰っていった方は中日原バス停方面ではないはずなので、あちらの方に鷹ノ巣山登山口があるはずと思い、歩き始めます。交番前を通って、猫がのんきに水を飲んでいる、蛇口がついてる水くみ場(?)を過ぎたら、鷹ノ巣山登山口です。

階段を下りて、下りの登山道もずんずん下りて、渓流沿いへ。この下った分だけ後で登ることになるわけなので、下るのがもったいない気がします。といっても渓流から吹いてくる風が涼しくて気持ちがいいし、新緑に彩られた岩の間から流れてくる急流をみるのも楽しい。

渓流を間近に見るまで下ったら、後はアップダウンはなく、ほぼ登り一辺倒です。斜度は南高尾や奥高尾の一部の急登と変わりがなさそうに感じましたが、とにかく登りが長い。下から見て、その先が見えないところで一旦登りが終わるのかと思いきや、登ってみるとまた次の登りが見えてきます。

そんな中で、登った先に大きな岩が見えました。表示はありませんでしたが、これが稲村岩のようです。掲示板によると死亡事故が起こったことがあるそうで、不用意な立ち入り禁止とありましたが、岩の下部にザックが二つ。登っているところは見えませんでしたが、岩の上に2人いるようです。わたしは登る気がまったくなかったので、見送って次の登りに取り掛かります。

鷹ノ巣山への登山道は、一部杉林もありましたが、広葉樹の明るい林の中が多いです。そこを延々と登り続ける。道は広くて、危ないところはありません。カエデの木がたくさん生えていて、秋は紅葉がきれいだろうと思います。人が少ない登山道は静かで、鳥の鳴き声がのどかさを添えます。広葉樹の倒木が何本かありましたが、根元から掘り返したかのように、土のついた根っこから豪快にバッタリと倒れています。針葉樹ではあまり見ない倒れ方だなと思いながら、倒木した落葉樹のそばを通ります。

相変わらず登りは続く。広葉樹の林は新緑できれいなのですが、いつまでも続くと飽きてきます。おまけにやたらと顔の周りを虫がまとわりついてきます。虫よけスプレーをしたらマシになりましたが。そしてだんだん頚椎症による首の神経痛と、その放散痛の背中・肩甲骨付近・腕の痛みが辛くなってきます。いつもは使わないストックを使うと、ザックの重さが軽減し、登りの補助にもなって楽になってきました。ですが、脚だけで登っているのに比べ、上半身も使っているので一気に身体が暑くなってきます。山頂が待ち遠しくなります。

この登りはこれで終わりと登った先は、平坦な道が続いています。標識があって、ここが「ヒルメシクイのタワ」だと分かります。やっとここまで登ったと安心するものの、標高1562m。標高1736.6mの鷹ノ巣山山頂までまだまだです。

それにしても、ヒルメシクイのタワにタバコの吸い殻が、ぱっと見でも10本以上は捨ててあります。食後の一服?こんなにタバコの吸い殻が密集して捨てられているところって、奥多摩の他の山であったかな?たくさんタバコの吸い殻が捨てられていると、「ここは捨てていい場所なんだ」と考えて、吸い殻をポイ捨てしてしまう人もいるかも。

ヒルメシクイのタワを過ぎ、もういい加減登るのは嫌だとなったところで、前方に画像でみたことのある石の標識が目に入ってきました。あれは、たぶん鷹ノ巣山の山頂標識。やっと、着きました!

山頂から他の山々が良く見えます。春霞もかかっておらず、くっきりと。富士山もきれいです。山頂から見える山についての解説板がなかったので、どれが何の山か分かりませんが、右手に見える雪がたくさん残る山々はどこの山系でしょうか。今まで登った奥多摩10座の中では一番の眺めです。他の山では登頂時間が遅くて雲がかかってしまったり、曇りだったり、晴れていても木が生えていて眺めがよくなかったりで残念な思いをしていました。10座の最後でご褒美のような眺めが待っていたとは!

眺めがいい一方、鷹ノ巣山山頂に日陰はありません。日差しが強い。日に焼けると身体が疲れてしまうので、昼食をサッと取ったら下山開始です。下山は沢沿いを水根方面にいくルートを選択です。

 

 

 

バックステージツアー

ちょっと前にアイーダのバックステージツアー(@新国立劇場)に参加したので、覚えている範囲で。

バックステージツアーは参加前に、ツアー参加前に舞台に外のゴミなどを持ち込まないよう、靴カバーを靴にかぶせます。靴カバーをつけたら、さっそくバックステージツアー開始です。

まずは楽屋から。休演日のバックステージツアーツアーで楽屋内は使用中ということで、中は見られませんでした。が、廊下のところどころに衣装が並んだラックが置いてあり、間近に見られるのが楽しい。出演者が多い分、いろいろな衣装があります。出演者の参考のための、衣装、装飾具、かつらなどすべて身につけた出来上がり後の写真も貼ってあります。

電子レンジやマッサージ器が置いてあるエリアも。このあと進んだ先にあった張り紙によると、マッサージ器利用料は100円。張り紙には値下げしたと書いてあったので、以前はいくらだったのか気になります。

ポットやインスタントのコーヒーなども置いてあり、1日100円とのこと。1杯ではなく、1日100円。100円で飲み放題といっても、インタスタントではないコーヒーを飲みたい人もいるでしょうから、利用者はどれくらいるんでしょうか。

床山さんの部屋はバックステージツアーのために扉が開いていて、中には入れませんでしたが、扉の外から中の様子が見られました。中にはアイーダで使うかつらがいくつも。部屋の外にも、ラックにいくつもの女性出演者のかつらが並んでいます。オペラ鑑賞時に遠目からだとストレートのロングヘアに見えましたが、近くでみると違いました。細かく編んでいたり、ウェービーヘアーだったり。ブルゾンちえみさんのツルサラヘアとは質感がまったく違います。

バックステージツアーはさらに進み、オーケストラピットへ。オーケストラピット入り口の黒い壁には、新国立劇場で振った指揮者のサインが多く書かれています。この中で最も多くサインを書いているのは、バレエ公演でおなじみ、アレクセイ・バクランさんとのこと。バクランコーナーを作っているかのように、日付、演目、サインが振ったすべての演目ごとに並んでいます。他の指揮者もバクランコーナーを侵食するよう野暮なことはせず、避けて自分のサインを書いている感じを受けます。4月下旬からの白鳥の湖を振ることになっているので、バクランコーナーの空いたスペースに新たなサインが加わるはず。たまにダンサーの踊りやすさより、自分の音楽性を追求するタイプのバレエ公演指揮者もいますが、バクランさんは、さにあらず。バクランさんが指揮をしていると、安心して公演を見られます。今度の白鳥も楽しみです。

オーケストラピットでは、内部には入れませんでしたが、プロンプターボックスの見学は出来ました。プロンプターボックス内部って思ったより小さい。入ることはできなかったので実際座ったらどの程度圧迫感があるのか、それとも思ったより快適なのかは不明です。

この後バックステージツアーは待ちかねた舞台へ。大道具や小道具が間近に見られました。アイーダの舞台は上演中ずっと紗幕が張られていますが、休演日も紗幕は張りっぱなしでした。上演時と違うのは、交通整理の赤いコーンと、コーン同士をつなぐ黒・黄色のバーが紗幕の前に設置されていることです。なんでもこの紗幕、とても薄くもろいので、リハーサル中に出演者がぶつかってしまうだけで破れてしまうといいます。実際破れたことがあるそうで、防止のため上演時以外はコーンとバーを置いてぶつからないようにしているとのこと。破れたら部分的に補修することはできないので、全とっかえですから大変なものです。

神殿・宮殿のセットの柱は舞台に設置されたままでした。柱は場面によって、表・裏を変えているといいます。このバックステージツアー時は、ヒエログリフが刻まれた面が客席から見えるように向いていましたが、その後ろ側は縦の模様が入った宮殿の柱。セットの柱のヒエログリフは意味をなしているものなのか、気になります。楕円に囲まれたヒエログリフカルトゥーシュなのか、何となくそれっぽいものを描いているだけなのか。ヒエログリフを解説した本を持っていけば解読できたかも。

オペラ劇場には客席から見えている主舞台の左右と後ろに、主舞台と同じ大きさの舞台が合計3面あります。そこには主舞台で使わない大道具・小道具が置いてあったり、出演者の衣装替えスペースなどがあったります。アイーダはエキストラが多いので、舞台に出た後、裏で次の衣装に着替えて、また何食わぬ顔で新たな役柄になって舞台に出ているとのこと。そのため下手側にはけた出演者の通路として、急ぎ用とそれ以外用があります。急ぎ用の通路にはビニールテープで「イソギ」と大きく表示されていました。

通路の先はズラッとエキストラの人の椅子が何十脚も並べられています。それぞれの椅子に役柄名、次の役柄との間の時間数が書かれた紙が貼ってあります。何気なく見ると、3役掛け持ちで、役と役の間が50秒というのもあります。はけてから次の役で出演するまで50秒しかないのなら、そりゃ急ぎ用の通路が設置されるのも、納得です。モタモタしていたら、次の出演に間に合いません。

アイーダには本物の馬2頭が出演しますが、馬用の臨時のスペースもありました。ベニヤ板のような薄い板と鉄パイプで作った簡素なものですが、藁がしいてあって、一頭づつのスペースが設けられています。知らないところに連れてこられた馬は、当初は落ち着かなかったそうですが、徐々に慣れていったとか。

ツアーの最後は奈落の見学です。奈落は地下3階。地下3階にある通路から奈落の底を見下ろします。奈落の底は、地下3階の通路には金属製の網目の細かく丈の高い柵が設置されていて、人もモノも奈落の底に落ちないようになっているので、安心して奈落の底を覗けました。雑然としているのかと思いきや、奈落の底はスッキリしています。

こんな感じでバックステージツアーは終わりました。もっと色々話しを聞いたし、色々見せてもらったのですが、あんまり覚えていないものですね。そうそう、厚さ5センチのゴムがたくさんついたバレエ床をみました。バレエダンサーはちょっとした床の凹凸に敏感で、段差が無いように設置するのに注意を払うのだとか。GWの白鳥の湖公演、マンネリの感もありますが、観に行く予定です。ですが、GWの公演って、過去の公演時からみると何となく入りが寂しいかんじがします。みんな遠出してしまうのですかね。

 

 

 

 

 

 

 

頚椎症はMRI撮影もつらい

頚椎症による痛みが強い状態が続いています。3年前から頚椎症でお世話になっているクリニックの先生から勧められて、患部のMRI撮影をしてみることにしました。

勧められた理由は、わたしがネットの情報に踊らされないようにするため。

ネットで調べたら、首だけでなく肩甲骨や背中の痛み、腕の痺れと痛みが身体の左右片側だけに出るのは頚椎症性神経根症、身体の左右両側に症状が出るのは頸椎椎間板ヘルニアとありました。

が、クリニックの先生によると、頸椎椎間板ヘルニアも片側だけに症状が出る。両側に症状が出るのは重症になった場合。片側の症状だからヘルニアではないというわけではない、ということです。

ある有名な整形外科クリニックの理学療法士(1年前に頚椎症軽減のため通っていたクリニック。ですが理学療法士から教わる運動にはかばかしい効果がなくて通うのをやめました。)の説明では、頸椎椎間板ヘルニアは両側に症状が出るので、片側だけの症状の場合は頚椎症性神経根症とのこと。理学療法士もネットの情報と同じことを言っていたわけです。医療に携わる者といっても、医師でない人は知識が中途半端な人もいるということですね。

そんな経緯があり、ネット情報に振り回されるより、きちんとMRIで撮影した結果をもとに診断した方がいいということになりました。

通っているクリニックにMRIの設備はないので、近隣のMRIを置いているクリニックに予約を取り、予約時間にクリニックへ。

行ったクリニックは東京駅のそば。ビルのテナントとして数フロアを借りているのか、外見からはこんなところにMRIが何台も置いてあるクリニックがあるようには見えません。外に看板が掲げられているものの、本当にここか?と疑問をもちつつ、エレベーターで2階の受付へ。普通の雑居ビル風の建物なので、エレベーターの速度があまり早くありません。入居しているビルの外観もそうですが、診療にあまり関係ない部分は削ぎ落し、院内の設備を充実させようというクリニックの方針なのかな。

受付に到着すると、他のクリニックからMRI撮影のために来院したらしき人々がたくさん。受付で問診票をもらい、医師の問診を受けて、来院後10分もしないうちにMRI撮影のフロアへ。一緒のエレベーターに乗っている受診者が、それぞれ自分が撮影してもらう階で降りていきます。MRIが数フロアにそれぞれ設置されてるんですね。(帰宅後ホームページをみたら、MRIだけで8台設置されているとありました。)

撮影フロアについたら検査着に着替えて、さっそく撮影です。MRIは今まで脚のケガで2回撮影したことがあります。閉所恐怖症ではないので怖くないし、耳栓して横たわっていればいいだけ。慣れたものです。

「何かあったら押してください。」と撮影スタッフさんにブザーを渡され、耳栓ではなくヘッドホンを装着して、寝台に横たわります。撮影時間は20分ほどとのこと。首の撮影なので、頭や首を動かすのはもちろん、口を開け閉めするのも画像がブレてしまうので禁止です。

寝台がスーッと機器の中に入っていきます。撮影が開始され、最初は何ともありませんでした。が、1分過ぎたくらいでしょうか。患部の首が、背中が、腕が、痛い!

それでも撮影が始まってそんなに時間はたっていないので、我慢しなきゃ。我慢している間にもどんどん首、背中、腕の痛みが強くなってきます。我慢しましたが3分もしないうちに耐えられなくなり、ブザーを押してしまいました。

撮影スタッフさんの「どうしました?」という声がMRI内で聞こえてき、症状を伝えて一旦撮影は中断です。撮影中の痛みに対処するため、頭から肩にかけて薄いクッションのようなものを敷いてもらいました。横たわって寝心地を試してみると、やはり痛みはあります。が、先ほどの何も敷いていない寝台よりはマシです。寝台からあまり身体が離れた状態にしてしまうと、今度は撮影に支障をきたしてしまうというので、薄い敷物を追加した状態で撮影再開になりました。

撮影が再開されると、やはり患部とその放散痛で、痛い。ふだん自宅で寝ているときはそれ程痛みは強くならないし、痛みがある場合は体勢を変えて痛みに対処することができます。MRIの寝台の材質は、普通の寝具より身体へのあたりが強いのか。それとも体勢を変えられないというのは、身体にとってしんどいものなのか。

「あと7分です。」撮影スタッフさんの声が聞こえてきます。薄い敷物を敷いたので、痛みは最初より軽減しています。痛みに関する感覚が麻痺してきたのか、痛みに対処する化学物質が体内で生成され始めたのか、あと7分耐えられそうです。

「撮影終了です。」の声で、やっと身体を動かせました。MRI内で、頭の中でずっと時間をカウントしていましたが、長かった。

撮影終了後、撮影スタッフさんに、頚椎症の人は横たわった状態での撮影は首に負担がかかってきついのでないか、と疑問をぶつけてみました。スタッフさんによると、「頚椎症でも平気な人はいますし、痛みが強く出てしまう人は休み休み時間をかけて撮影します。」痛みが出なくて、平気な人もいるのか・・・。

撮影後は、身支度を整えて、再び受付に向かいます。撮影した画像は10~20分の待ち時間で持ち帰れるようになりますが、このクリニックの医師によるMRI画像の所見が、いま通っているクリニックに郵便で1週間後くらいに届くよう手配されるといいます。一方、画像と所見を一緒に宅配便で送る場合は別途650円料金がかかって、4~5日で通っているクリニックに届くように手配されるとのこと。GW前に結果を知りたいので、宅配便で送ってもらうことに。お会計は8,220円でした。

深く考えずMRI撮影に臨みましたが、機器の寝台に横たわるだけで耐えがたい痛みがおそうとは思いもよりませんでした。はやく頚椎症の症状が軽快するのを待つのみです。(過去の経験からすると、3か月ぐらいで相当程度痛みが軽減しますが、3か月は長いなぁ。)

 

豪華な舞台のオペラを観ました

頚椎症なのですが、毎年春は頚椎症の神経痛と腕の痺れがひどくなります。花粉症のくしゃみのせいで、頸椎に変なダメージが与えられてしまうのか、よく分かりませんが春になると症状が悪化します。ロキソニンを服用したくらいでは全く痛みが軽減しませんが、チケットを無駄にしたくないので観劇に行ってきました。

行ってきたのはアイーダ(@新国立劇場)です。オペラは人生で数えるほどしか観たことがありません。なので、歌が、指揮が、オケが、と細かいところは分からないので、自分のための備忘録です。

アイーダを観るのは10年ぶりです。豪華な舞台と評判なのでちょっと行ってみるかと10年前に観たときは、安い席にしてしまったため舞台が遠くて迫力減でした。というわけで、今回はもう少しいい席にしてみたのです。

前回の教訓1。ゼフィレッリ版のアイーダは舞台に紗幕がかかっていて、オペラグラスで見ると紗幕の小さなアミアミが気になってしょうがない。よって、肉眼で観れる席にした方が良い。

前回の教訓2。第3幕(ついでに第4幕)は第1幕・第2幕のような華やかな舞台ではなく、薄暗い舞台設定。そのため遠くから観ると、暗くて舞台での動きがよく見えず、眠気を誘う。よって、舞台が良く見える席の方が良い。

幕が開いて第1幕。のっけから壮麗な舞台美術に圧倒されます。第2場の神殿の場面では多くの登場人物が舞台上に整然と配置され、その人々を照らす照明が美しい。中央部分は明るく、周辺に行くにつれ徐々に明度が下がっていきます。が、かといって舞台の端にいる人々が影のようにつぶれて見えなくなるというのではない、照明の絶妙さ。巫女たちの不思議な歌声に誘われて、古代の神秘的な神殿を覗き見しているような感覚がしました。

第2幕第1場は王女アムネリスの部屋。花園です。いえ、お花があるわけではなく、笑いさざめく女性たちの集団が、華やぎ芳香を放っているようで、花園のように見えました。しかしここで、ある妄想がいきなり浮かんできました。ここにブルゾンちえみさんが混じっていても、違和感ないよね、と。古代エジプトが舞台のアイーダなので、皆さん、アイメイクは強め。そして髪形はロングのボブスタイルです。服装替えて、髪をロングにしたブルゾンさんが紛れ込んでいたら、この集団にうまく溶け込むのではないか。

第2幕第2場はお待ちかねの凱旋の場です。圧倒的な華やかさ、晴れがましさ、豪華さ。これが観たかった!舞台上にはあふれんばかりの人。

前回観たときは平日18:30開演だったので、周りの席の人には第2幕が終わったら帰ってしまった人が結構いました。アイーダと言えば第2幕が見どころ、2幕も観たし最後まで観ると遅くなるから帰ろう、という考えだったのでしょうね。

高らかなラッパ(正式名称知りません)の音が、高揚感をもたらし舞台に華やかさを添えます。

騎手が本物の馬を乗りこなして走り去っていく演出も、前回観たとき同様、今回もあり。というのは、バレエの方はいつの間にやらドン・キホーテで本物の馬が登場しなくなったので、オペラでもワンポイントの登場の騎手と本物の馬は割愛されているのでは、と疑っていたからです。さすがにオペラではそんなことはしないようですね。それにしても舞台上に多くの人がいるのに、よく事故も起こさずうまく馬を操れるものです。

第2場では東京シティ・バレエ団のダンサーが祝福の舞を踊る場面もあり。ダンスを観るのはやはり楽しい。楽しい思いをしていると、神経痛と腕の痺れが軽減したように感じます。

第3幕は夜半のナイル川の場。1幕・2幕の華やかさ、豪華さから一転、薄暗い夜の場面です。この静かな場面で初めて主人公たちの歌声に聞き入った気がします。アイーダ役のイム・セギョンさんの歌声が美しく、声量があって聞きごたえがあり、ラダメス役のマヴリャーノフさんの歌声はつややかで色男の声でした。1幕・2幕は舞台が華やかで賑わいがあったため、主人公たちの歌や感情に入りこんでいけませんでした。3幕の薄暗くて地味な舞台装置には、歌にフォーカスさせるための効果があったのか・・・。ちなみに、前回観劇した10年前は仕事の後のアイーダ鑑賞だったので、薄暗い3幕で早々に寝落ちしていました。

第4幕。第3幕で思いもよらず、敵に行軍情報を伝えることになってしまったラダメス。弁明をせず、粛々と判決を受けるラダメスを、王女アムネリスが気が狂わんばかりに案じる姿にスポットがあたります。アムネリス役のセメンチュクさんの身も世もない姿と迫真の歌声に鷲掴みにされ、息を飲んで舞台を観続けました。アムネリスは1・2幕ではただの高飛車で嫌な性格のお姫様という感想でしたが、身がひきちぎられんばかりの嘆きぶりが、見る者の心にズドンと響いてきます。

3幕も主人公たちの歌、演技に引き込まれましたが、4幕も同様です。「アイーダ」は1・2幕は豪華な舞台装置、3・4幕はオペラ歌手の歌と演技にスポットが当たって、それぞれの良さが楽しめるバランスのいい作品ですね。

ラダメスが神殿の地下室に生き埋めになり、4幕も地味な舞台装置で終わりそう。と思っていたら、神殿のセットを乗せたまま舞台がせりあがります。ラダメスが入れられた神殿の地下室と、その上の神殿、上下2段の様子が、客席から見えるようになりました。上の神殿も重厚さがあるしっかりした作りで、下の地下室も安っぽくないしっかりした作り。素人目で見ても、アイーダの舞台って本当にお金がかかっていますね。

舞台が終わって、カーテンコール。セメンチュクさんの登場時は、熱狂的な歓声が上がっていました。どのオペラ歌手が人気者なのか分からないのですが、どうやらセメンチュクさんは相当な人気者なようですね。客席に手を振ったり、投げキスをしたりするチャーミングさと、オケの人を何度もねぎらう姿をみると、どうやら舞台の外でも魅力的な人柄らしいのが見て取れました。これにてアイーダ観劇記、終了です。

 

 

 

 

変化に富んでる天上山(@神津島)

神津島の前浜港に着いたら、天上山トレッキングツアー一行を島の観光協会の職員の方が迎えに来てくれていました。まずは近くのまっちゃーれセンターまで、徒歩で移動です。

まっちゃーれセンター内は広く、畳敷きの広いスペースもあります。山バッジや島唐辛子などちょっとした土産や、観光情報が得られます。寄りませんでしたが、お隣のよっちゃーれセンターには食堂と海産物の販売所があるそうです。

まっちゃーれセンターで顔合わせをしたガイドさんと共に、車に乗って黒鳥登山口へ。歩いて登山口まで行くこともできますが、ルートタイムで40分かかります。

登山前の説明によると、天上山にはクマ、イノシシ、スズメバチなど人間にとって危険な生き物がいないとのこと。危険生物を気にすることなく、山を楽しめるのは良いですね。黒鳥登山口には登山に使える杖が何本も置いてあるので、体力が心配な人は借りていけます。

登山口から黒鳥山10合目までは距離は長くはないけれど、ずっと登りの階段が続きます。けっこうな急登の黒鳥登山道を海岸を背にして登っていると、あっという間にかなりの高所にまで到達します。振り返ると、眼下に神津島の町並みと海岸線、海が広がっています。そして高度感がすごい。登山道には、スミレが登り始めにほんの少し、ショウジョウバカマが点々と、ミヤマシキミがそこここに咲いています。

10合目の標識のあと、ほどなくして千代池に到着。少し前は水がなかったそうですが、前日までに降った雨でしっかり水が溜まっています。ここでジャンプした姿を撮影すると、池の上を飛んでるように見えるというガイドさんのおすすめで、みんなジャンプ姿を撮影してもらいます。撮影してもらった結果・・・、池の上を飛んでいるようには見えませんでした。何が悪かったんだろう・・・。

千代池から表砂漠までに行く間は、丈の低い木で出来たジャングルのような中を歩いていきます。この丈が低く、うっそうと茂った感じが、マングローブの林の中を進んでいくような錯覚を覚えます。ここではミヤマシキミだけでなく、シキミの花が見られました。この日、天上山でシキミが見られたのはここだけ。

丈の低い木々のジャングルを抜けると、腰の高さにほどもない植物が生い茂るところにたどり着きました。眼前には岩や石ががれきのように露出し、低木で覆われた山肌が見えます。この景色だけを切り取ってみれば、相当高い山にいるように見えます。稜線とその上を歩く登山者の姿と背景の青空をあわせて見ると、北アルプスの景色のよう。北アルプスとは規模がまったく違いますが、こんな景色が見られるなんて。

高山のような景色を眺めながら歩いていると、すぐに表砂漠に到着しました。案内板によると、ここはその昔の噴火時の火口で、砂地として残っているとのこと。砂漠というだけあって、砂地で荒涼とした景色が広がっています。ですがテーブルやベンチが設置されていて、休憩するのによい場所です。登山口で配られたおにぎり弁当はここでいただきました。ちなみにおにぎり弁当のお味は普通。

 昼食が済んだら次の目的地、天使の立つ場所に向けて出発です。登山道の両側には膝丈ほどの松が生えています。その松は、高山に生えるハイマツのように見えます。ガイドさんに聞いてみると、ハイマツではなくクロマツとのこと。風が強いので木が高くならないのだそうです。ますます景色は高山っぽい。添乗員さんが撮ってくれた写真をあとで見せてもらったら、森林限界を超えた高山をいくツアー一行のように見えました。

天使の立つ場所は、あるとき雲の合間を天からパーッと光が降り注ぎ、神聖なものが降りてきているような神々しい景色が見られたことが、その名の所以。石の上に「天使の立つ場所」と文字が彫られていて、その隣の石には天使と犬の絵も彫られています。この天使の立つ場所の石の上で、ツアー一行は天使ポーズをとって写真撮影。

さらに進んで、裏砂漠。ここも荒涼とした砂地です。表砂漠同様、砂漠に咲くツツジが名物なのだとか。まだツツジの季節には早かったので見られませんでしたが、咲いている写真を見ると綺麗ですね。ザラザラとした砂地を歩いていると、ここにコマクサが咲いていればますます北アルプスっぽい、と思ってしまいます。

次にたどり着いた裏砂漠展望地からは、春霞でうっすらと三宅島と御蔵島が見えます。神津島近くの無人島、ヘビ島もよく見えます。神津島にはヘビがいないそうですが、ヘビ島にはヘビがいて、大学の先生や学生が研究のため訪れるのだとか。

それより気になるのは、表砂漠の前から我々ツアー一行についてくるカラスです。裏砂漠展望地にも、何食わぬ顔でついてきているし。神々が集った島という伝説の神津島ですから、もしかして我々一行を導く八咫烏?というわけではなく、人間からエサがもらえると思って付け回している、ただのハシブトガラスでした。ついてきても、エサはやりません。

新東京百景展望地で平たい式根島と、それより大きく標高の高い新島を見たら、お次は天上山のパワースポット、不動池です。こちらも千代池同様、前日までの雨で池に水が溜まっています。池のそばに石製のとても小さな祠と鳥居。こんもりと植物が生えている池の中州と池の端が、細い石橋で繋がっています。細い石橋を渡って、竜神がまつられているという中州に入ってはいけないんだとか。不動池はハート形の池として観光案内に載っていますが、池のそばではハート形には見えません。

ところで、この不動池そばには公衆トイレあり。おがくずを使ったバイオトイレで、まったく臭くありません。用をたしたら、トイレ内に設置されている自転車を20回漕ぎ、さらに逆回しで10回漕いで、おがくずを攪拌します。

次は、天空の丘で360°の展望を楽します。ここからさらに登ると、不動池がハート形に見えるスポットに到達します。観光パンフレットなどで見られるハート形の不動池は、ここら辺から撮ったもの。見下ろすと、おお、本当にハート形に見えます。このスポットに登らず通り過ぎようとする登山者に、ガイドさんが「池に水があるときじゃないとハート形に見えないよ。いつも見られるわけじゃないから、見た方がいいよ。」と誘います。ハート形の不動池を見られたのは運が良かったようです。

そしてそして、岩がゴロゴロとした一見、高山っぽい道を登り、やっと天上山頂上に到着です。いろいろと寄り道してたので、登山開始から5時間弱かかりました。標高572m。山の最高地点から海の方を見下ろすと、灰色の雲の間からこぼれる陽の光が海面に反射して、きらきらと美しい。

ちなみに山頂に建てられた「天上山々頂」と書かれた柱はガイドさんが設置したといいます。ついでに、柱の上に据え置かれた玉を持つ龍の置物も、ガイドさんが設置したのだとか。

山頂に到達したら、後は下山するだけ。階段になったザレた道を一気に下ります。ここは登りの際に通った登山道とは様相が違い、白くザレた景色が広がっています。ガイドさんは慣れたもので飛ぶように下山していきます。階段にはなっているものの、ザレ場は小石に滑らないように気を使います。遅れないようについていきますが、喉がカラカラ、船であまり寝られなかったツケもたたって、結構大変でした。

トイレのある白鳥登山口まで降りてくると、やっと一休憩。もう下山が済んだ気になりましたが、まだまだ下山は続きます。今度は森の中の湿った階段を下っていきます。滑りやすいためか、ところどころロープが設置されていて、補助あり。そんな中でも、相変わらずガイドさんの脚は早い。結構なお年のように見えるのに、なんでこんなに元気なんだと思いながら、やはり遅れないようについていきます。

登山道が車道に合流して、下山終了。登りより、下りの方がきつかったです。そうはいっても決して大きな山ではないのに、ぎゅっと凝縮して様々な景色を見せてくれる天上山は面白味のある山でした。花の百名山だそうですし、ツツジの咲く5月やサクユリが咲く7月に行ってみるのも良さそうです。